番外編 これは波乱の幕開けか。 | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。 
 




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 リンゴ・フォード
騎士隊長リリーの娘。ティアゴと接しているうちに意識してしまうようになっていた…ティアゴは既婚者のためリンゴは自分の気持ちに苦しんでいる。

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 ティアゴ・バーナード
 ガルフィン魔銃師会 魔銃導師
若くして魔銃導師に選ばる。リンゴの護衛についている。
 


 ゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
 
 
らしくない。
 
 
俺らしくない。
 
 
記憶を失うほど飲んだのは、初めてだった。
 
人生を振り返ってもこれほど飲んだことはこの日じゃないかと思うほど。
 
 
俺はそれだけこの日昼間から飲んだ。
 
俺は自覚してしまった気持ちを誤魔化すように酒を飲んだ。
 
 
明日になったら、綺麗さっぱり消えているかもしれない。
 
そう願って俺は飲んで、気がつくと朝になっていた。
 
 
 
目に飛び込んできたのは白い天井。
 
 
俺はいつ家に帰ってきたんだ??
 
 
思い出されるのはバルナバさんに担がれて、リリーさんやローデリックに何か言われた光景……
 
 
ーーー最悪だ。
 
 
魔銃師会の導師だというのに……失態だ。
 
 
 
ティアゴ
「……気持ち悪…」
 
二日酔い…
俺は何をしているんだ……
 
 
しかも俺は夜の警備をすっぽかしてしまった。
 
窓から朝日がさんさんと降り注ぎ、小鳥のさえずりが朝の訪れを知らせてくれている。
 
 
「おはよう。随分飲んだのね」
 
カトリーンが苦笑しながら水と錠剤を寄越してきた。俺は受け取りながら「これは?」と聞くと
 
 
カトリーン
「Xさんが、きっとティアゴは二日酔いになるから朝起きたらこれを飲ませてやってくれっておっしゃってくださったのよ」
 
 
ティアゴ「……そう」
 
俺は錠剤を口に放り込み、水で一気に流し込んだ。
 
 
カトリーン
「昼間から飲んでいたんですって?あなたらしくないわね。何かあったの?」
 
 
カトリーンが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
 
 
ティアゴ「いや……何もないよ」
 
チクリと胸が痛んだ。
 
カトリーンを裏切ったような気持ちになる。
 
酒を飲んでも、気持ちは消えていなかった。
 
早くこの騒動が終わってくれたらいい。リンゴとの接点がなくなれば、きっとこの気持ちは泡のように消えるはずだ。
 
リンゴはリンゴで、殿下という素晴らしい恋人がいる。今は気まぐれで俺に気持ちが向いているような気もするが、若い子は気が多い。気持ちはどこか別の所へ向かうだろう。
 
……そもそも俺の勘違いかもしれない。
 
 
 
カトリーン
「昨夜の警備は、バルナバさんマルチネス家が代わりにしてくれたから心配しないでね、ってXさんから伝言よ」
 
 
ティアゴ「……そっか」
 
情けない……
 
 
バルナバさんに借りを作ってしまった。
 
 
こうして話をしている間に、気持ち悪さが紛れていく。
 
あの人の作る薬は凄い。
 
 
俺が感嘆としていると、遠くからパァンと何か音が鳴り響いた。
 
それは何発も続いてカトリーンは怯えてしゃがんだ。
 
 
ティアゴ
「エルネア城に行ってくる!」
 
 
俺は転移魔法を使って、すぐにエルネア城に向かった。
 
敵の狙いが殿下でもリンゴでも朝はエルネア城にいる。
 
 
玉座の間に転移すると、Xさんがすでに到着していた。
 
 
ツインテールを揺らしたリンゴがなんともいえない表情で到着した俺を見ている。
 
俺の登場を好ましく思っていないような、そんな顔だ。
 
 
 
ティアゴ

「・・今、一瞬嫌そうな顔したでしょ?」

 

少し傷ついた自分に内心驚く。

 

酒で気持ちが何故誤魔化せないんだ。

 

 

 

リンゴ

「そ、そんな訳ないよ.....っていうかティアゴ君、大丈夫?泥酔してバルナバさんにお持ち帰りされたんでしょ?」

 
リンゴはニヤリと笑った。
 

ティアゴ

「...えっ?!お、お持ち帰りって..家まで送ってもらっただけで..へんな言い方しないで」

 

誤解されそうな物言いだ。勘弁してほしい。

俺は野郎に興味はないし、それは向こうも同じだ。

 

 

 

それから事態は急展開した。

 

ドルム山の洞窟、北の森、遺跡から魔物が大量にダンジョンの外へ出てきたと知らせが入る。

 

俺はその対処に向かわねばならなくなった。

 

エルネア城に警備の人間は配置してはいるが、俺はリンゴが気になった。

 

さっきの表情が気になって仕方ない。

 

後ろ髪を引かれる思いをしながら、俺は遺跡に向かった。

 

 

溢れ出す魔物の数はどんどん増えていった。

 

 

その場に居合わせた国民や見かねた国民が応援に駆けつけてくれる。

 

事態の収集には多くの時間がかかった。

 

 

魔物が消えた時、Xさんは安堵するどころか顔をしかめていた。

 

それを見た俺の中にどろりと嫌な気持ちが流れる。

 

 

 

被害の大きかった北の森へ向かうと多くの負傷者がいた。地面には魔物や人間の血が広がっている。

 

 

犠牲者はいなかったものの、多くの被害を出しながら事態は収束した……そう思った。

 

 

Xさんのこの言葉を聞くまでは。

 

 

X
「それが、妙なのよ。セイ君も、モモちゃんも見たっていうし、ウィアラも見た、お昼過ぎにご飯食べにきたっていうし。ミアラさんもさっき見かけたーって。カルロスも見かけたっていうの。でも反応がないのよ...」
 
いつも不敵な笑みを浮かべているイメージのある彼女にしては、珍しく焦燥に駆られているように見えた。
 
 
 
ティアゴ「....なんの話をしてるんです?」

 

話が見えない。

 

 

X「リンゴちゃんよ!あの子だけ、導きの蝶の反応がないの」
 
 
ティアゴ「え...」
 
俺は慌てて導きの蝶でリンゴの元に向かおうとしたが反応がなかった。
 
ティアゴ「どういうことだ...?」
 
他の人間のところへは行くかどうか選択肢がでるのにリンゴには何の反応もない。
 
 
ーーおかしい
 
 
俺は酒場にいってウィアラさんに話を聞いた。
 
 
リンゴはこの非常事態に、酒場で飯を食って、図書室で本を読んでいたというのだ。
 
まったくもっておかしい。
 
殿下に危険が及ぶかもしれない時に騎士隊長の娘であり殿下の恋人が、殿下を守りもしないでのんきに飯を食べに出かけるなんてありえない。
 
 
リンゴはリリーさんが具合が悪くなったとき、酒場の一室を簡単に借りて用意したことがある。
 
 
俺の中に一つの仮説が成り立つ。
 
 
まだリンゴが小さい頃、一度ジェレマイアさんが導きの蝶を使ってリンゴに会いに酒場にきたがなぜかリンゴの姿はなかった。

 

 

 

ウィアラさんは、リンゴの味方になっている。
 
 
リンゴの持ち物には金になるのに換金していないものが多数ある。いざというたきはそれを使って、持ち金から出したことがバレないよう細工くらいはできるはずだ。
 
ウィアラさんもミアラさんも金で口裏を合わせているんじゃないか..?
 
 
 
なんのために?
 
 
レッドの目的は最初から、リンゴだったとしたら。
 
リンゴを俺たちから引き離すことが目的だったとしたら。
 
目的は達成されたのではないかと、恐ろしい可能性に気づいて俺はゾッとした。
 
 
 
 
 
 
 
 
生きた心地がしなかった。
 
心当たりは全て探したが、何の手掛かりもない。
 
やはり国外に出ているのだろうか。
 
 
X「……明日、朝日が昇る頃私は国の外を探す」
 
 
ティアゴ「俺も行きます」
 
 
X「…分かった。私はリリーたちにリンゴちゃんがいないことを伝えてくるから。ティアゴは明日もあるし無理しないでね」
 
 
ティアゴ「はい…」
 
 
 
 
Xさんは、リリーさんの元に向かっていった。
 
 
 
 
リンゴは見つかるのだろうか。
このまま、見つからないんじゃないか……
 
 
最近、リンゴの様子が少しおかしかった。
 
もっとちゃんと話をしておけばこんな事にはならなかったのかもしれない…
 
 
もっと付きっきりで俺が警備していれば、守れたかもしれないのに。
 
 
後悔の気持ちが次々と湧き上がり、ため息ばかりでる。
 
 
 
俺は重い足取りであてもなく歩いていると、噴水通りで見慣れない旅人を見かける。
 
小柄な女性だった。いつもならそこまで気にしないのだが、着ている旅人服がやけにボロボロで、目を引いた。
 
 
その人のフードから一瞬見えた顔に俺は驚いた。
 
 
探していたリンゴだったのだから。
 
 
リンゴは噴水通りの一室に急いだ様子で入っていく。
 
 
何故そんな所に向かうのか分からないが、俺は慌てて後を追った。もしかして追われているのかもしれない。
 
リンゴが消えた建物には一室だけ空き部屋がある。俺はその部屋に入った。
 
 
部屋には電気がつけられていなかった。手探りで電気のスイッチを探しす。
 
「リンゴ?」
 
声をかけた瞬間、電気のスイッチを見つけて灯りがつくと、そこに現れたのは、白い肌を晒したリンゴがこちらを見て驚きの表情を浮かべていた。
 
 
 
ティアゴ「ーーーー?!」
 
 
 
俺はリンゴの裸に動揺した。リンゴはすぐに前を服で隠したが……見えた…。
 
 
 
 
想像以上に綺麗な身体だった…
 
これは一般論だ。俺がスケベだからそんなことを考えてしまうわけではない。

 

 

 

リンゴ

「あ、あ、アゴ君、今、着替えてるの!!」

 

リンゴは顔を赤くして狼狽していた。そりゃそうだ、若い女の子が男に見られたらこうなるよな。

 

 

ティアゴ

「ご、ごめん、まさかこんな所で着替えてるなんて..ん?ちょっと、まって」

 

そう言いながら視線を逸らそうと思ったが、それは出来なかった。

 

 

「その怪我どうしたの?」

 

 

俺はリンゴの側まで歩み寄り身体を、マジマジとみた。

 

よく見てみると綺麗な肌に、痛々しい痕があちこちにある。血も滲んでいる。

 

 

リンゴ

「変態!出ていって!」

 

リンゴは俺が近づいて身体を見ることに困惑して顔がみるみる赤くなっていく。こんなウブな反応が可愛いと思ったが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 

 

ティアゴ

「この怪我、普通じゃないよ!背中だけでも痣だらけだよ」

 
俺はリンゴの腕を掴んだ。
 
腕は特にかわいそうなくらい痣だらけだった。
 
 

ティアゴ

「いったい、なにがあったの?」

 

誰にやられたんだと怒りが沸いてくる。それを必死に抑えながら聞いた。

 

 

リンゴ

「ダンジョン1人でいったらボコボコにされたの!

そんな恥ずかしいことバレたくないからここで着替えてたのに」

 

リンゴが口をとがらせた。

 

 

ティアゴ

「、、どこのダンジョン?」

 

 

 

リンゴ「水没」

 

 

ティアゴ

「あー、水没かぁ

あそこは1人でいくところじゃ……」

 

 

ーー嘘をつくな。

 

 

「さっきリンゴに導きの蝶使おうとしたら居場所の反応がなかったんだけど

本当に水没にいた?」

 

俺は疑いの眼差しをリンゴに向ける。

 

 

 

リンゴ

「いたよ!導きの蝶だって、調子悪いことあるんじゃないの..」

 
最後の方は声が萎むように小さくなる。リンゴは俺から視線を逸らせた。
 
 

ティアゴ

「..もしかして、誰かに乱暴された?相手をかばってるの?」

 

もし、強姦でもされたなら、殿下の恋人としてそれを言えないのか…?

 

俺はリンゴの華奢な身体を見つめる。この綺麗な身体がもし訳の分からない奴らが蹂躙したとしたら…

 

一瞬怒りで目眩がした。

 

 

リンゴ

「何もされてない..」

 

リンゴはふるふると首を、横に振った。

 

 

 

冷静になれ………

 

本当に俺らしくない。

 

腕の怪我を見てみると、それは知っている怪我であることに俺は気づいた。

 

乱暴されていなくても、人間にやられたものじゃないか。

 

 

ティアゴ

「・・この腕の怪我・・魔物の類いじゃない。魔銃で撃たれてものだね?・・レッドに会ったんだね?」

 

俺はリンゴの顔をのぞきこんでじっ見つめた。

 

 

俺は味方だ。本当のことを話してほしい。

 

訴えかけるように、リンゴの黒真珠のような丸い瞳を真っ直ぐに見つめる。見つめ返してくるリンゴの目がユラリと揺れる。

 

 

リンゴ

「あーもう無理、、」

 

リンゴは諦めたようにため息をついた。

 

俺がしつこいのが分かって隠すことは無駄だと判断したのだろう。

 

 

リンゴはこれまでの経緯を話した。

 

 

レッドに呼び出されたこと、それを俺たちに伝えたら報復するといわれたこと。

 

 

ティアゴ

「またあの男・・!」

 

俺は歯ぎしりした。怒りで身体が熱くなった。

 

何故武術職でもない子に、そのようなことをさせるのか。

 

 

リンゴ

「あの人はもうこんなことしてこないよ。もう大丈夫だよ」

 

 

ティアゴ

「そーゆー問題じゃない!」

 

俺が怒鳴ったので、リンゴはびくりと身体が震えた。

 

 

ティアゴ

「怒鳴ってごめん..

 

リンゴに怪我させられて、腹がたったんだ。当たり前だろ。仲間が痛めつけられれば誰だって腹が立つ...」

 

俺はため息をついた。

 

 

ティアゴ

「リンゴだけ居場所が不明で、俺たちがどんなに心配したかわかる?」

 

感情的になっている俺の声は弱々しいもので、リンゴはそんな俺の様子に戸惑い、しゅんとした。

 

 

リンゴ「ご、ごめんなさい・・」

 

 

ティアゴ

「・・このまま、見つからないんじゃないかと思った・・」

 

本当に……

 

……見つかって良かった

 

 

今度は安堵のため息をついた。

 

 

 

心なしかリンゴの、目が潤んでいるような気がする。

 

俺はポケットから普段から持ち歩いている薬取り出した。

 

 

ティアゴ

「ちょっとしみるけど我慢してね」

 

怪我にきく塗り薬を傷口に塗っていく。リンゴは恥ずかしそうにしていたが大人しく従っている。

 

薬を塗りおえて、俺は後ろを向いた。

 

「むこう向いてるから服着て」

 

 

リンゴ

「..うん、、ありがとう」

 

ほどなくして布が擦れる音がする。

 

 

 

ティアゴ

「まったく..怪我してなかったら俺でも絶対押し倒してるよ。夜遅くに空き部屋に一人で入るなんて..これからこんな所で着替えたりしたらダメだよ..」

 

これがユアンだったら、危なかった。あいつなら、リンゴのことを躊躇なく押し倒していそうだ。……怪我人にそんなことはしないか。

 

 

 

ーーユアンならリンゴの返り討ちに合うか。

 

………ご愁傷様………

 
 
 

 

俺はくだらないことを言った。適当なことを言って今の台詞を流そう、そう思った時。

 

 

リンゴ

「押し倒してもいいよって言ったら..?」

 

 

……なんだって?

 

 

とんでもない返しをリンゴはしてきた。

 

 

 

 

 

 ティアゴ

「…………そんなこと、こんな状況で冗談でいったらだめだよ」

 

あれか、またこの前みたいに俺をからかってるのか。

 

そう分かっていても、俺の心臓が少しうるさい。

 

 

リンゴ

「冗談じゃないって言ったら?」

 

 

切なげな声が俺の背中に投げかけられる。

 

 

 

 

 

ーー今おまえは俺をからかって笑っているのか?

 

 

本当は俺を男だと意識していないのか?

 

 

 

 

 

それとも……。

 

 

 

 

 

俺はそっと横を向く。視界の端に入ってきたのは思いつめた顔で俯くリンゴの姿だった。

 

 

 

 

 

考えるより先に身体が動いた。

 

 

俺の手が電気のスイッチを消すと、華奢なリンゴの身体をベットに押し倒していた。