魔獣討伐戦④ 絶望を進め | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。




リリー&バルナバ
背景の花は山茶花。

花言葉は「勝利」

勝利を重ねて長年組織長に君臨した2人にはぴったりな花言葉。

この2人に今必要なのは「勝利」この二文字のみ。


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――



セシリア
「あとを頼むって……」


禁断の森へ続く入り口で、元山岳兵に告げられた父からの伝言にセシリアは愕然とした。


セシリア
「……お父さんは……国王はどこに?!」



元山岳兵
「ーーティムと共に禁断の遺跡の戦いが行われている方へ」


セシリア
「お父さんを連れ戻す!!」

セシリアが進もうとすると元山岳兵が立ちはだかる。

「ダ、ダメです!セシリア様だけは絶対に通すなとヴェルンヘル陛下に言われております!」


セシリア「お願い、通して!」


元山岳兵「それは出来ません💦」


セシリア「くさいスープかけちゃいますよ!」


元山岳兵「それは勘弁して下さい💦💦」


セシリア「香水を三回かけちゃいますよ!」
*香水を三回かけると超くさい状態になる

元山岳兵「いやですー!」

セシリア「じゃあ、通して下さい」

元山岳兵
「ダメなんですー!セシリア様を危険な場所へ行かせるわけには行きません!」


追いついたレドリーがセシリアの腕を掴み、首を横に振った。


レドリー
「ダメだよ、この先は危険すぎる」


セシリア
「お父さんが、国王まで戦いに……止めないと!」


レドリー
「ヴェルンヘル陛下は万が一のときは戦闘に出る事を決めていた。ーーその時はセシリア、君を護るように陛下に言われている」


ヴェルンヘルに追い回されていた日、ダンジョンに逃げ込んだレドリーにヴェルンヘルは追いついていた。





その時



ヴェルンヘル
「君はセシリアのことが本当に好きかい?」


レドリー
「勿論です。」

ヴェルンヘルが無表情でレドリーを睨んでいた。レドリーはヴェルンヘルから向けられる視線を受け止めて真っ直ぐにヴェルンヘルを見た。


レドリー
「無邪気で、優しいあの笑顔が好きです。ずっと、隣でセシリアの笑顔を見ていたい……あの笑顔を守りたいとそう思っております」


ヴェルンヘル「ーーそうか」


それからしばらくヴェルンヘルは何も言わなかった。


ダンジョンを攻略し、ダンジョンから出ようとすると


ヴェルンヘル
「魔獣討伐戦……危なくなったら俺も出る。その時は、セシリアを護ってほしい。」


レドリーは驚いた表情を浮かべた。ヴェルンヘルは言葉を続ける。


ヴェルンヘル
「俺の代わりはセシリアがいるが、俺とセシリアが同時に倒れることがあれば幼いチェロが王位を継ぐことになる。幼い王は国の乱れの原因となろう……セシリアを失うことは平和を失うことと同じだ。ーー頼むよ」



魔獣を討伐できても、2人倒れその先に平和がなければ意味がない……



レドリー
「命にかえてでもセシリア様を御守りします」

レドリーはヴェルンヘルにそう約束したのだった。


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.

レドリーはしゃがむとセシリアを横向きに抱き上げた。


セシリア「レドリー君?!」


レドリー
「危ないから暴れないで。魔銃師会で待機だよ」

軽々とセシリアを抱きながらレドリーは歩きだした。

話している間にも轟音が鳴り響き、身体がすくむほどセシリアは恐ろしくなった。

レドリーに連れられ、セシリアは禁断の遺跡の森から離れていった。




゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


ルークやギオルギーが代わる代わる中和剤を散布しているが間に合わない。

瘴気の濃度はどんどん濃くなり、皆の動きが鈍くなっていった。


魔人の角が光り、魔法弾が現れどんどん大きくなっていく。


リンゴ
「くるよー!!みんな集中して!
絶対避けて!!」


言い終わると同時に無慈悲に発射される魔法弾。

地上スレスレを地面を抉り焦がしながら飛んでくる。

間一髪でギオルギーが避け、真後ろに着弾すると爆発音と共に暴風が吹き荒れる。ギオルギーがその衝撃と風に巻き込まれて倒れた。


魔人の更なる攻撃がギオルギーに向けて放たれる。


「危ないっ…!」


アスセナがギオルギーを庇って大ダメージを受けた。


ギオルギー「なんで……」


アスセナ
「う……るさい!さっさと立ってよ、バカ!」


ギオルギー
「バカ?こんな時にバカとかいうの?」


アスセナ
「いいから立ってよ!ノロノロしてんじゃないよ」


セシィー
「なんであなたはそんな言い方なの!」

場違いな喧嘩が始まりそうになりセシィーが娘のアスセナをたしなめながらヒールを使う。


リンゴ「放て!」

大砲と魔銃が轟音を伴いながら魔人の身体にダメージを与えていく。


魔人が割れんばかりの咆哮を上げた。びくりとして皆の動きが止まる。


本当は対峙しているだけで恐ろしいのだ。



その威容を前にして、恐怖を抑えながら、大して怖くないフリをして武器を手にしている。



その隙を見逃さないかのように、魔人が魔法陣を展開する。

誰も声をあげる暇もないほどの素早さで展開された魔法陣からどす黒い霧のようなものが発生して辺りを包み込む。瘴気や毒の濃いものが出されたようだった。


リンゴ「中和剤!放て!」

苦しげに叫びながら、リンゴが指示を飛ばす。

一斉に放たれる中和剤で多少濃度が下がるが、皆が苦しそうに咳き込みだした。


リンゴ
「このままじゃ……」

ジリジリと体力を失っていっているのを感じながら脳裏に負けという二文字がちらつくのを必死に否定する。


リンゴ
(だめ……心まで負けちゃダメ!)


頼りにしていた人たちがいない、
頼りにしていた大好きな人たちの安否が分からない。

ーーよくもみんなを傷つけたね…

黒い感情が心に広がっていく。


ーー絶対に負けない

ーーお前なんかに。





『ローゼルの加護』

みんなの周りを優しい光が、ふわりと舞う。周囲を漂っていた黒い霧が消えていった。

ローゼルの加護

エルネア王国の国王が使うことのできるスキル。
味方の体力を回復することができる。


ギオルギー「兄……陛下!」

魔人を睨みつける兄のヴェルンヘルの姿にギオルギーは驚きの声をあげた。


アルシア
「陛下!お下がり下さい!」



ヴェルンヘル
「我が命運は、そなたたちと共にある」

リンゴや他の者たちをぐるりと見回す。皆不安な表情だったり苦しそうにしたり士気が落ちていた。


「突入隊は必ず戻ってくる。それまで耐え凌げ!」


ヴェルンヘル陛下の鼓舞に皆の目に光が戻ったような気がした。


危険を顧みず現れたヴェルンヘルの姿にリンゴは不覚にも安堵した。同時にここが踏ん張り時だと魔獣を睨む。

ーーどの敵にも、必ず急所がある。恐らく…



リンゴ
「………厄介な攻撃をする角を狙って!」

リンゴが声を張り上げる。

「どんなに強い敵にも必ず弱点がある!倒せない敵なんていない!」


格上の相手だと分かっていても、負けるかもしれなくても、戦わないといけない時がある。

魔銃から、双剣に装備を変える。


前方に佇む金色の眸の強靭な魔人を見据え、双剣を構えた。

リンゴの鼓舞に応えるように山岳隊長のアルシア、ルーダが駆け出すと、接近戦部隊が一気に駆け出す。

振り上げた斧が魔人の腕を斬った瞬間、アルシアも反撃を受け、鮮血が幾つもの水滴となって地面に落ちる。



ヴェルンヘル
「アルシア隊長!下がれ!」

アルシア「まだいけます!」

腕から血が滲んでいたが、攻撃の手を全く緩めることなく、ティムやラナも猛攻を続ける。魔人のラナへ攻撃は、ティムが完全に防いでいた。

アスセナがヒールを連続で使い、皆の体力を回復し、他の者は攻撃に専念する。


アルシアとルーダが目配せして、同時に必殺技を発動し、斧を魔人に叩き込む。

魔人は咆吼をあげながら激しく腕を振るい、鋭い爪で反撃してきた。






しばらく激しい戦闘が続いた。



拮抗した戦闘に動きが出たのは互角に魔人と渡り合い、勝機があるかもと希望を抱いた頃だった。




リンゴ「両部隊!放てー!」


魔人の放つ魔法弾と同時に魔銃と大砲が放たれる。

大気を揺るがすほどの轟音だった。


辺りをは砂煙に包まれ、視界はほとんど濁った世界しか見えない。

だんだんと視界がはっきりと見えてきた時、リンゴは倒れている女性を見て

リンゴ「アルシア!!」

叫びながらぐったりとして動かないアルシアに駆け寄る。

意識はない。外傷はさっきの腕の傷のみのように見えた。


ギオルギー
「次の攻撃がくる!」


リンゴ「放てー!」

状況が把握できぬまま、声を張り上げる。その声に応えたのは大砲部隊1名のみ。


リンゴ「?!」


振り返ると、大砲部隊の人たちが倒れていた。


ヴェルンヘル
「俺が運ぶ!リンゴたち動ける者はこのまま戦闘続行してくれ!」


ヴェルンヘルがアルシアを担いで走り出した。



ギオルギー
「このままじゃ壊滅だ…」

ギオルギーはさっき自分を守ってくれたアスセナが倒れているので庇うように前に立っていた。


リンゴ
「………」


魔人がゆっくりリンゴたちに近づいてくる。


リンゴ「ラナ」

ドクンドクンと心臓が痛いくらいに高鳴っていた。


ラナ「はい」


リンゴ
「………森の入り口にいる守備の人に、急ぎ伝えて。国民をエルネア城に避難させる」


ラナ「ーー分かりました」

すぐにラナは戦闘から離脱し、森の入り口に駆け出した。



『万が一、事態が最悪の方向に向かい全滅の可能性が出た場合……速やかに国民をエルネア城に避難させること。国外へ逃れることも視野にいれて。避難先の国の候補はいくつか出してあるから。ヴェルンヘル陛下が交流を重ねている国で安全な国なのは確認出来てるけど……国を捨てるなんて判断は、易々とできるものじゃないから……その時はよく考えてね」


龍騎士だけで話し合った日、リンゴの母リリーが言ったことだった。


母が魔獣や魔人にやられるはずがないからとあまり真剣に聞いていなかった。


ルークが角を狙って魔銃を撃つ。スキルて高い攻撃効果のもつものを絶え間なく撃ち、ルークの攻撃が終わるとギオルギーが続く。

セシィーは剣を武器としているので、魔人の進行を止めるように剣撃を繰り出した。



『国民の皆様は至急エルネア城に避難して下さい。繰り返します。国民の皆様は至急エルネア城に避難して下さい。禁断の森、魔銃師会周辺は激戦区のため、近づかないようお願いします』


国中にアナウンスが流れる。人々は不安な顔をいていた。ここまで事態が悪化するとはほとんどの人が想像してなかった。




ラナが戦闘に戻る時、セシリアとレドリー、数名の元山岳兵が戦闘の行われている禁断の森に到着した。


倒れている人たちをそれぞれ担ぎ、セシリアはアスセナに駆け寄った。

アスセナはぴくりと動き、ユラユラと立ち上がる。自らヒールを使い、体力を回復しながら未だに暴れる魔人をみて笑う。


セシリア
「大丈夫……ですか?」


アスセナ
「ほんっと面白い……大砲ぶち込まれてもこんなにタフな魔人がこの国で生まれるなんて」


ギオルギー
「この状況で笑ってる君の思考が面白いよ」

背後にいるアスセナの様子に、ギオルギーは引いていた。アルシアを治療部隊に託したヴェルンヘルが戻ってきて笑っているアスセナを訝しげに見る。


ヴェルンヘル
「アスセナちゃんはどうしたんだ……?セシリアは下がってて」

セシリア「はい」


連れていこうと思っていたアスセナが戦闘に復帰したことでセシリアは戦闘から離れた場所へ移動した。

けが人がでたらすぐに連れていけるように森の中で待機する。






激しい戦闘がまたしばらく続いた。


魔人が咆吼を上げる。


空気がビリビリするほど身を竦ませるような咆吼だった。


破壊できていない角が光り、魔法弾が発射される。


魔法弾は一直線に飛び、射程圏内にいた人たちが避ける。

魔法弾はどこかへ飛んでいった、そう思った矢先、方向を変えて戻ってきた。 


背後から魔法弾、前方から魔人が迫ってきた。




リンゴ「ーーー!」

前方の魔人の鋭い爪の攻撃をリンゴが歯を食いしばりながら受け流す。

大きなダメージがリンゴの身体に蓄積させる。


ヴェルンヘル「ギオルギー!!」

魔法弾の攻撃は、ヴェルンヘルの弟のギオルギーが受け止めた。


しかし、大きなダメージを受けフラフラと膝をつき、ヴェルンヘルが慌ててギオルギーを支えた。


ルークやアスセナがヒールを施すが、ギオルギーはぐったりとして動かなかった。



ヴェルンヘル
「ーー撤退しよう」


ギオルギーを抱きしめいるヴェルンヘルが静かにいった。


ヴェルンヘル
「エルネア城で、国民と共に防御を固めて戦える者たち共に迎え撃とう……」


リンゴ
「………分かりました。その時間を私が作ります。陛下はギオルギー君を連れて城へ。他の者も陛下と共に」


セシィー「私は残るよ。」

ルーク「俺も」

ラナ「私もお供します」

ティム「ラナが残るなら俺も」

ルーダ
「ここで退いたら山岳は腰抜けだと後世まで言われます」

隊長で残るのはルーダ隊長ただ一人。若いがまだ闘志は消えていない。


リンゴ
「アスセナやガブリエルは陛下と共に城へ。早くギオルギー君を連れていって!」

魔人の攻撃がくるのを察して叫ぶとリンゴは駆け出した。攻撃をかいくぐりながら、跳躍し、魔獣の顔を斬りつける。


ヴェルンヘルがギオルギーを担いで去っていく。



リンゴ
(ヴェルンヘルは昔からギオルギー君のこと、大好きだったもんね……絶対、死なせないでよ)



ルーク「くるぞ!!」


また角から魔法弾が現れる。リンゴは慌てて魔人から距離をとり、間一髪避ける。近くに着弾し、軽いリンゴの身体は暴風で煽られ、木に身体を打ちつけた。

一瞬息が出来なくなるほどの衝撃。

ほとんど勘で身体を横にズラすと、リンゴの顔があった辺りの木にブスリと何かが突き刺さっていた。

魔法で作られた鋭い氷柱のようなものだった。
 
ティム
「危なっ……」 

避けなければ即死に近い攻撃にティムは顔を引きつらせる。


ルークたちが魔銃を連射し応戦する。

セシィーがザッとリンゴの前に立ち剣を構えた瞬間、魔人が魔法弾を再び放とうとする。


セシィー
「リンゴちゃん!立って!」

なんとかリンゴが立ち上がり、しつこいほどくる魔法弾を避ける。

避けても爆風で身体が地面に叩きつけられる。

ルーダが斧で魔人を斬りつけ、ルークはヒールを使い仲間を回復し援護する。


奮戦していたルーダの青い髪の毛を魔人の太い手がむんずと掴んだ。


ルーダ「!!」

そのまま腕をあげ、ルーダの身体は易々と浮き上がった。


片手で斧を持つルーダの腕を掴み動きを封じると、魔人は口をグワッと開いた。


ルーダや見ていた人たちも驚愕の表情を浮かべる。


セシィー
「まさか食べる気なんじゃー?!」

叫びながらセシィーが魔人に斬りつける。ティムとラナも魔人に斬りかかる。


突如、爆音が鳴り響いた。

凄まじい火力の攻撃が魔人の角に命中し、魔人がルーダの髪の毛を持つ力を緩める。その隙にルーダは脱出した。



ルーク
「遅すぎですよ……」

攻撃を放った主に向かってルークが言う。



???
「申し訳ありません。こいつに仕掛けられた罠を解除するのに手こずりまして」

遺跡から大勢の人たちが出てきた。


三人の龍騎士と武術職の面々が、ズラリと横並びになった。


リンゴ「ーーー!」

突入隊の無事な姿にリンゴは泣きそうになるのを堪えた。


攻撃を放った主は龍騎士の銃の銃口を再び魔人に向けた。


ティアゴ
「随分好き勝手に暴れたようですね」



バルナバ
「守備隊の人たちは……?」


ここにいるのは、リンゴ、ルーク、ルーダ、セシィー、ラナ、ティムだけだった。あまりの人数の少なさにバルナバたちが異変に気づく。


リンゴ
「ーー守備隊はほぼ壊滅状態です。力及ばず……申し訳ありません……」

苦しげな表情を浮かべたリンゴの言葉に突入隊が絶句する。



イマノル
「…マジかよ、あんなにいた守備隊が……」

ゲロルドの流した血に、アルシアの血、抉れた地面に焦げた地面、倒れた大砲、破壊された大砲、残った者たちの憔悴した様子にボロボロになった姿……



バルナバ
「よく耐えてくれたね、ありがとう」

守備隊の面々はバルナバの言葉に目頭が熱くなる。



ティアゴ
「魔銃師会!奴を取り囲め!」


ティアゴの号令で魔人の周りに魔銃師たちが銃を構えて待機する。


リリー
「仲間をこんなに傷つけて……絶対に許さない」


リリーは剣を魔人に向けて突き出した。







あとがき

魔獣討伐戦は、次で最終回となります。
乱文にお付き合いくださりありがとうございます。