218年 穏やかな春の日に | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
 

コロナの影響で大変なことに……
早く収束してくれることを願っています🙏
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「ーーー暇……」
 
 
白い天井に向かって恨めしそうに呟く。
 
 
 
 
人生の中で、最も退屈な日々をリンゴは送っていた。
 
 
 
せっかくの休日だというのにリンゴは大怪我のせいでベットから動くことができず、傷口の痛みに耐えながらただ寝ていることを強いられていた。
 
 
 
ガラ

「具合どう?」


 
 
青い髪の毛女性が少しむすっとした表情で部屋に入ってきた。
 
むすっとしているのは生まれつきで本当は優しい性格をしている。
 
 
リンゴ
「ガラちゃん…!」
 
暇で暇で仕方ないリンゴは、ガラの姿に目を輝かせた。
 
 
ガラ
「元気そうだね」
 
この日は休日といっても、農場管理官のガラには関係ない。忙しい合間を縫って会いにきてくれた。
 
 
リンゴ
「おかげさまで。」
 
 
 
ガラ
「リンゴが暇してると思ったから図書室から本を借りてきたよ」
 
 
リンゴ
「ありがとうー!暇で暇で仕方なかったんだー」
 
ガラから本を受け取ると、背表紙をじっと見つめる。
 
 
 
ガラ
「セシリア様って、あのティアゴさんの息子さんと付き合ってるんだって?」
 
 
リンゴ
「うん……… そうみたい。今日は初デートだとかいってセシリアは喜んでいたよ」
 
父親であるヴェルンヘルは苦虫でも噛み潰したような顔をしていたが。
 
 
ガラ
「ティアゴさんはそのとばっちりを受けてるって噂になってる」
 
 
 
リンゴ
「とばっちり?」
 
 
 
ガラ
「魔銃師会のガブリエルが弱い、って評議会で陛下がいきなり言い出して、導師にガブリエルを鍛えるように言ったんだって」
 
 
 
リンゴ
「は?なんでガブリエル?」
 
 
確かにガブリエルは強くはない。
 
 
だが弱い人は他にもいるようなとリンゴは首を傾げた。
 
 
 
ーーーーなんでガブリエル。
 
 
リンゴは昔のことを思い出していた。
 
 
 
それはまだリンゴが結婚する前にの話。
 
 
転びそうになったリンゴをティアゴが抱きとめてくれた時……
 
 
時間が止まったかのように2人は動かなかった。
 
 
リンゴを腕に閉じ込めたまま、ティアゴはなぜかガブリエルの名前を出したので
 
 
 
なんでこんなときにガブリエル?
 
 
 
とリンゴは思った。
 
 
 
 
 
 
ガラ
「どうかしたの?」
 
 
思い出し笑いをしているリンゴを見てガラが言う。
 
 
 
リンゴ
「ううん、こっちの話」
 
 
改めてガラが持ってきてくれた本を見ると
 
 
『どんなアホでも分かる!エルネア王国の歴史』
 
 
と書かれていた。
 
 
 
リンゴ
「これ……」
 
 
 
ガラ
「私仕事があるから。お大事に」
 
 
リンゴ
「ちょっと待ってガラちゃん!これどーゆーこと?!」
 
 
ガラは振り返ることなく、部屋から去っていった。
 
 
 
 
 
間も無く次の来訪者がやってきた。
 
 
リンゴの手元にある『どんなアホでも分かる!エルネア王国の歴史』の本を見てなんともいえない表情を浮かべている。
 
 
 
リンゴ
「違うの!!勝手に持ってきてくれただけで、私が読みたいなんて言ってないから」
 
 
 
ローデリック
「……別にどうでもいいけど」
 
 
仏頂面でローデリックは興味なさそに言う。

 
 
リンゴ
「せっかくの休日、奥さんと出かけたりしました??」
 
 
ローデリック
「んなことアンタに関係ないだろう…」
 
 
リンゴ
「星の日もデートにも誘わずにフラフラしてたじゃないですか!そんなことをしているとサブリーナさんに見捨てられちゃいますよ」
 
 
 
ローデリック
「アンタの言葉は説得力がある…」
 
わざとらしく何度もうなずくローデリック。
 
 
 
リンゴ
「………」
 
 
無言でローデリックを睨むと、ローデリックはマズいと感じたのか、
 
 
ローデリック
「誕生日おめでとう」
 
とリンゴの誕生日を祝ってくれた。これにはリンゴは大いに驚いた。
 
 
リンゴ
「ええ?!ローデリックさんから祝いの言葉が?!」
 
 
 
ローデリック
「アンタは俺をなんだと思ってる…」
 
 
リンゴ
「ロボット」
 
 
ローデリック
「………誕生日迎えられたのはあの旅人のおかげでもあるけど……治療を渋った陛下にたてついたティアゴのおかげでもあるからちゃんと礼を言っておいたら…」
 
 
 
リンゴ
「……どういうこと?」
 
 
 
この時、リンゴはティアゴとヴェルンヘルの間に起きたことを知った。
 
 
 
 
ローデリックがなぜ知っていたかの経緯は⬆️
 
 
 
ローデリック
「あいつは今陛下にチクチク嫌がらせっぽいの受けてるから、動けるようになったら差し入れでもしてやれば…」
 
 
 
リンゴ
「…ヴェルンヘルったらそんなことをしてるの?」
 
 
ローデリック
「陛下からしたら気に入らない……奥さんをとられて娘までとられて」
 
 
リンゴ
「と、とられてって……私とられてません!」
 
 
 
ローデリック
「まあ、どうでもいいけど。さっきキャラバンでアンタにぴったりなやつを見つけたからこれやるよ」
 
 
珍しくローデリックがリンゴに何か渡してきた。
 
 
リンゴ
「ローデリックさんが私に?」
 
 
シャーン!!と部屋に鳴り響くシンバルの音。
 
 
 
猿の人形が両手に持ったシンバルをシャーン!シャーン!と鳴らしている。
 
 
リンゴ
「な、なんでこれが私に
ぴったりなんですかー!」
 
 
逃げるようにローデリックは部屋からいなくなった。
 
 
 
猿の人形はジルバルを鳴らし続けていた。
 
 
 
リンゴ
「どうやって止めるのこれ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ーーー何してんの?」
 
両手に紙袋を抱えたティアゴがやってきた。
 

 
 
リンゴ
「ティアゴ君!ローデリックさんが変な猿を置いていって……」
 
こんなもので遊んでいるなんて思われたくないリンゴは慌てて説明をする。
 
 
 
ティアゴ
「アイツが変な物買うなーと思っていたらリンゴへのプレゼントだったのか……」
 
 
リンゴ
「ティアゴ君もキャラバンに行ってたの?」
(こんな猿の人形をどうしろというの…)
 
 
ティアゴ
「そう」
 
 
 
シャーン!シャーン!
 
 
猿はシンバルを鳴らし続ける。
 
 
 
ティアゴ
「うるさいな、これ…」
 
紙袋を床に置いて、ティアゴは猿の人形を持ち上げるとスイッチを見つけ、猿は静かになった。
 
 
 
リンゴ
「ティアゴ君は何を買ったの?
……まさかエロ本?」
 
 
 
 
ティアゴ
「若い男じゃあるまいし」
 
袋から出てきたのは、数冊の本だった。
 
 
 
「暇してそうだから本を買ってみたんだけど、好きそうなのある?」
 
 
 
 
タイトルからして小説らしきものや漫画などリンゴが興味を持ちそうなものばかりだった。
 
 
リンゴ
「面白そうー!……意外だね。ティアゴ君がこんなのを選んでくるなんて」
 
 
 
一冊は恋愛小説だった。
 
その澄ました顔でこれを選んだのかと思いリンゴはニヤっと笑う。
 
 
ティアゴ
「キャラバンの人に女性が好みそうな本を選んでもらったんだよ。選んだのは俺じゃない」
 
 
 
リンゴ
「あとは何を買ったの?」
 
 
 
ティアゴ
「ワイン」
 
 
紙袋ごとリンゴに渡してきた。
 
中には見たことのないラベルのワインが入っていた。
 
 
「怪我が治ったら飲もう。ナルルワインっていうらしい」
 
 
 
リンゴ
「飲みたい!」
 
 
リンゴはハッとした。
 
 
「そ、それであとはなんか変なものがあるんでしょ?みんなそうだった、変なものを置いて帰っていく……」
 
 
 
ティアゴ
「あるに決まってるだろう」
 
 
何を分かりきったことを、という風にティアゴは袋から何か取り出し、リンゴに渡した。
 
プレゼント用らしき可愛らしい包装がされている。
 
 
ティアゴ
「お誕生日おめでとう」
 
 
リンゴ
「あ、ありがとう……」
(あの流れだから変なものだと思ったのに。
 
いや、中身は変なものに違いない……)
 
 
 
ティアゴ
「別にたいしたものじゃないけど」
 
 
 
包装を開けると、銀色のものが出てきた。ブレスレットのようだった。
 
 
まともなプレゼントにリンゴは内心驚いた。
 
 
リンゴ
「綺麗……ありがとう。大切にするね」
 
 
早速ブレスレットを手につけると、リンゴは嬉しそうに笑った。
 
 
 
ティアゴ
「……喜んでもらえて良かった」
 
 
紙袋から一冊の本を出してそれを持つと
 
「本でも読んで大人しくしてろよ」
と、踵を返して立ち去ろとする。
 
 
リンゴ
「もう帰っちゃうの?」
 
寂しそうにリンゴは上目遣いでティアゴを見ると、ティアゴは視線を彷徨わせた。リンゴの上目遣いにティアゴは弱い。
 
 
ティアゴ
「俺がずっといるわけにも……」
 
 
 
リンゴ
「一人でそのエロ本読むの?」
 
 
 
ティアゴ
「エロ本じゃないって…ただの歴史書」
 
 
ため息をつきながら、ティアゴはリンゴのいるベットの横に椅子を置くと腰を下ろした。
 
 
リンゴ
「居てくれるの?」
 
 
 
ティアゴ
「邪魔なら帰る」
 
 
本のページをめくりながらティアゴが言った。
 
 
 
リンゴ
「邪魔なわけがない…」
 
お見舞いの人がくる時以外は基本的にこの部屋で1人ぼっちで人恋しいリンゴは嬉しそうに笑う。
 
 
ティアゴ
「………話変わるけど。リンゴは前から気づいていたんだよな?セシリア様が好きな人」
 
 
 
リンゴ
「う、うん……まあ、途中から」
 
 
 
ティアゴ
「酒場の席でもプライバシーがなんたらとか言って俺に言わなかっただろう?あれはなんで?」
 
 
 
リンゴ
「……だって………うまくいく可能性があるか分からなかったし……私は情念の炎を使うことにはあまり賛成していなかった」
 
 
 
ティアゴ
「ーーふーん」
 
相変わらず視線は本に向けられいるが文字を目で追っている様子はない。
 
 
「………聞くだけ野暮か。お互いの娘と息子だからだよな」
 
 
 
 
 
リンゴはぎこちなく笑った。
 
 
リンゴ
「そういえば……ティアゴ君…ヴェルンヘルから嫌がらせみたいなのを受けてるって聞いたけど……」
 
 
 
ティアゴ
「ーー嫌がらせ?………ああ、別にどうってことない」
 
 
 
リンゴ
「ーー本当?」
 
 
不安そうに言うと、ティアゴはリンゴを見て柔らかく微笑んだ。
 
 
ティアゴ
「ガブリエルを鍛えるいい機会だ。レドリーも鍛えて陛下に認めてもらえるようにするから、心配しなくていいよ」
 
 
 
リンゴ
「……迷惑かけちゃってごめんね」
 
 
 
ティアゴ
「ーー俺は自業自得。王妃に手をだしてこれくらいですんでるなんてまだマシなほう……」
 
言葉を切って、ティアゴが部屋の出入り口のほうを振り返る。
 
 
誰かが勢いよく入ってきて、二人がいる部屋に飛び込んできた。
 
 
 
リンゴ
「お母さん…?」
 
 
血相をかえてやってきたリリーにリンゴは首を傾げた。部屋の出入り口には、心配そうなバルナバがひょっこり顔を出した。
 

 
 
 
ティアゴ
「ーーどうしたんですか?二人とも……お見舞いですか?」
 
 
 
リリー
「ティアゴ!あなたまたリンゴに変なことしてないでしょうね?!」
 
 
ティアゴ
「……またって俺は一度だって変なことはしていませんよ」
 
ティアゴは苦笑した。
 
 
 
リリー
「………誤魔化してるけど、前に酒場で飲んでいた時、リンゴの太ももかどこか触ってたでしょう!」
 
の最後の方。
 
 
ティアゴ
「それはリリーさんの勘違いですよ。現にあのとき、リリーさんは確かめて俺は触っていないってなったじゃないですか」
 
 
 
リリー
「あれは触ってた……目を見れば分かる」
 
 
 
ティアゴ
「……それは誤解です」
(俺はどんな目をしてたんだよ…)
 
 
 
リンゴ
「ティアゴ君はお見舞いにきて本を差し入れしてくれたんだよ」
 
リリーは疑わしげな目でリンゴを見る。
 
 
 
ティアゴ
「二人ともキャラバンはもう見ましたか?今回はかなり規模が大きくて珍しい商品が沢山ありましたよ」
 
面倒なので話題を変えてみる。
 
 
バルナバ
「まだ行ってないなぁ。今から行ってこようかな」
 
 
リリー
「そうやって逃げようとしてるんでしょ!騙されないんだから」
 
 
 
バルナバ
「リリーちゃん、一緒にキャラバン行こうか!リンゴちゃんお大事にねー」
 
 
まだ追求しようとしているリリーの腕をバルナバは引っ張った。
 
「まだ話が終わってない…!」
 
 
去っていくバルナバにリンゴは手を振る。バルナバは渋るリリーを連れて去って行った。
 
 
 
 
ティアゴ
「……リリーさんは怖い」
 
 
リンゴ
「変なことをティアゴ君がするからだよ…」
 
 
それこそ自業自得だと言うとティアゴは「分かってるよ」と笑いながら本に視線を落とす。
 
 
 
 
開いている窓から春の暖かい風が流れ込こんだ。
 
 
 
今頃セシリアはレドリーとデートをしているんだろうかと思いながら、リンゴも適当に本を選びページをめくった。
 
 
 





*後日、傷が治ったリンゴがティアゴとワインを酒場で飲むために酒場に訪れた際のイメージシーン。


ーー当たり前の幸せは当たり前ではない。