212年 いつもと違う誕生日 | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。

 

 

 

無事に門まで辿りつくと、国民による医療チームが結成されていて、怪我人たちは地面にひかれたシートに座らせ治療を受けていた。


イラリオも医療チームに入っていてせわしなく動き回っていた。

 

 

若い女の子たちがティアゴの前に走ってきて、

「導師大丈夫ですか?!すぐに治療を..」

と、エドモンドからティアゴを離し、あっという間に連れて行ってしまった。

 

リンゴ

(気のせいじゃない..なんだかんだいって、ティアゴ君モテてる..)

 

武術職についているだけでも一目置かれるのに、導師に何度もなれば目立つ。子供に人気だったのだからその子たちが成長し、大人になればすり寄ってきても不思議はない..

リンゴも似たようなもんだし...

アゴ君ってバカにしていただけだけど

 

リンゴはティアゴが女の子たちに連れていかれる様子を面白くない顔で見送った。


バルナバ隊が門に到着し、全員の撤退が完了した。門に入るなり、バーニー、アラルコス、アルシア、ティム、イマノルが走り出し、リンゴの横を猛スピードで走り抜けていった。

 

 

みんな傷だらけなのに、治療など頭にないようだった。

 

リンゴ(..なにをそんなに慌てて..)

 

リンゴはキョロキョロと辺りを見回した。

 

1番最初に運ばれてきたバーニスの姿がなかった。

 

 

ハッとしてリンゴもバーニーたちを追った。あの人たちはバーニスの所に行ったんだ。

 

 

 

 

 

山岳兵団の村についた。

 

 

バーニスを背負った時についたであろうバーニスの血で赤く染まった服を着たバーニーが、ミラー家に慌ただしく入っていく。ティムたちも続いてドタバタと入った。

 

リンゴもミラー家に入り、階段を駆け上り二階に上がった。

 

ティムやアラルコスがいて部屋の中が見えない。みんな突っ立っていて中に入れない。

 

リンゴはアラルコスとティムの腕を掴み、二人の間から部屋の中を覗き見た。

 

 

 

ベットにバーニスがぐったりと横になっていた。目をかたく閉じていた。ゲロルドや旦那さんのジェフが傍らに立っている。

 

その反対側に、神官が立っていた。

 

 

神官の姿を見て、バーニーたちは言葉を失って、動くこともできないでいた。

 

リンゴ「嘘でしょ?」

 

全身に冷水を浴びせられたような、そんな感覚。

 

目の前の光景にただ愕然とした。




 

ジェフ

「皆さんご無事でなりよりです。この通りですからご心配なく」

 

旦那さんのジェフは皆を見回し穏やかに言った。

 

 

バーニー「この通りって..」

 

バーニーの声は明らかに動揺していた。

 

 

ゲロルド

「お母さん、疲れて寝ちゃったんだ。過眠とるって」

 

 

一瞬時が止まったように沈黙した。

 

 

 

アラルコス「仮眠?」

 

 

 

 

神官

「そうです、仮眠です。ミラー隊長も緊張してあまり寝ていなかったようですし今日はお休みになった方がいいでしょう。命に別状はありませんから皆様ご安心下さい。」

 

アルシア

「神官さんがいるから!バーニスさん死んじゃうのかと思いましたよ!」

 

イマノル

「ややこしい..」


イマノルは脱力して壁にもたれかかった。

 

神官「す、すみません..治療にきて今さっき終わったんです..」

 

神官は申し訳なさそうに謝罪した。



ティム「...良かった..」

 

一同は安堵のため息をついた。

 

 

バーニスが寝ているからそれ以上ミラー家にいても邪魔になるので、リンゴは治療が行われている場所へ戻った。


 

 

怪我人は思った以上にいて、ローデリックも治療を受けていた。

 

リンゴ「大丈夫ですか?ローデリックさん」

 

鎧姿のローデリックを初めてみた。なかなか似合っているなと思った。

 

ローデリック

「別にどうってことない。アンタの方はどうなの?導師隊も派手に遠距離攻撃くらって、大変そうだったけど」

 

ボロボロになっているリンゴの格好を見て聞いた。

 

リンゴ

「地面に転がるくらいで、私は大丈夫でした。ティアゴ君が庇ってくれたんで」

 

ローデリック

「ふぅん..あいつちゃんと仕事してるんだな..今は女の子に治療されて嬉しそうだけど」

 

ローデリックの視線の先に、ティアゴがいた。女の子たちにちやほやされているように治療を受けている。

 

リンゴ「・・・」

 

視線がティアゴと合った。二人は無言でお互いを見ていたが、リンゴはにっこりと微笑んで、

 

リンゴ

「導師、あんまり鼻の下伸ばしてるとカトリーンさんに言いつけちゃいますよー♪」

 

 

ティアゴ

「鼻の下伸ばしてなんかっ..!」

 

ティアゴは立ち上がり、リンゴの方に歩いてきた。

 

リンゴ「まだ治療の途中だよ?」

 

ティアゴ

「もういいよ、あいつらベタベタ触ってくるだけで治療も素人だし。さっきリンゴに応急処置してもらったし、あとは家で自分でやるよ」

 

*医療チームといっても、国民の寄せ集め..

 

ティアゴ

「リンゴは?大丈夫なの?」


リンゴを注意深く見ながら聞いた。

 

リンゴ

「うん、平気だよ。ティアゴ君のおかげで」

 

ティアゴ

「そっか」

 

ティアゴは上着を脱ぐと、リンゴにそれをばさりと羽織らせた。突然赤い上着をかけられてリンゴは不思議そうにティアゴを見上げる。

 


 

ティアゴ

「服、ボロボロだから..家つくまでそれ羽織ってればいいよ。その上着も焦げたりしてるから、家についたら捨てといて」

 

リンゴ「えー?もったいないよ..」

 

ティアゴ

「ズボンもボロボロだからこの際上下新しい服にするしどっちにしろ、上着も捨てる」

 

リンゴ「・・そっか、分かった..ありがとう」

(ティアゴ君の匂いがする..)

 

そこにジェレマイアがやってきた。

 

ジェレマイア

「噂には聞いてたけど、リンゴと導師は仲良しなんだね」

 

導師の上着を羽織っているリンゴを見て言った。

 

リンゴ

「えっと……まあね…」


ティアゴの上着を羽織っている状況でそう言われてリンゴは少し照れくさくなった。

 

 

ティアゴ

「リンゴ様の肌を国民に晒すわけにはいきませんので」

 

ジェレマイア

「娘を守ってくれてありがとうございます」


ティアゴ

「礼には及びません。

臣下として役目を果たしたまでです。

 …ところでジェレマイアさん、何か用があったのでは?」


 

ジェレマイア

「被害情報を集めてるんだ。騎士隊は負傷10名、皆軽傷です。山岳兵団は負傷12名そのうち一名重傷。魔銃師会だけまだ把握できてなくて..」

 

リンゴ

「私、見回って確認してくる!導師は怪我してるんだから座って休んでて下さい!」

 

リンゴは身を翻し、パタパタと走り去った。

 

ジェレマイア

「・・敵の数をみると、年末くらいにまた掃討作戦が必要なんじゃないかって、うちの隊長とバルナバさんが言ってました」

 

ティアゴ

「そうですか...自分もそう思います。増えすぎたら掃討作戦すら難しくなりますし..」

 

ティアゴはジェレマイアをジッと見た。

 

ジェレマイア「どうしました?」

 

ティアゴ

「流石、長年騎士隊の騎士をやってるだけあるなと思いまして。傷一つついてない..」

 

ジェレマイア

「俺の周りの人たちが強かったんですよ」


ジェレマイアは謙遜しているとティアゴは思った。彼は間違いなく、かなりの実力者だ。対人と魔獣、彼魔獣に対して力を発揮するタイプの人だと思った。

 

ティアゴ「ローデリックは傷だらけだけど」

 

近くで治療を受けているローデリックをちらりとみた。

 

ローデリック  

「負傷しているお前には言われたくない」

 

 

 ゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


魔銃師会は負傷14名。メンバーのほとんどが遠距離攻撃によってなんらかの負傷をしたが、幸い皆軽傷だった。

 

重傷のミラー隊長も命に別状はなく、掃討作戦は大きな成果をあげて終了した。

 

 

 

4日

 

 

リンゴの誕生日。


 

ヴェルンヘル

「お誕生日おめでとう!」

 

リンゴ

「ありがとう」

 

 


 

この日、ヴェルンヘルは花束を落としていった。


 

お誕生日プレゼントでしょうか。

 

花束は結婚してからも渡せればいいのに。なぜ恋人期間限定なんでしょう。

 

 


 

プルネラさんからおめでとうと言ってもらえた。

 

ありがとうございます!

 

 

 

気まぐれに資料室に入ると、誰かが追いかけてきた。

 

その人は入るなり、


 

ティアゴ

「リンゴ、誕生日おめでとう♪」

 


 

リンゴ(こんな朝早くに..嬉しすぎる..)

 

「ありがとう。これからもよろしくね」

 


 

ティアゴ

「うれしそうだね。

何かいいことあった?」

 

 


 

 

リンゴ

「うん、あったよ。朝からティアゴ君におめでとうって言ってもらえてとっても嬉しい」

 

 

ティアゴ

「・・・・・」

 

ティアゴは目を僅かに見開き、帽子を深く被り直して表情が見えなくなった。

 

 

リンゴ「・・・どうしたの?」

 

 

ティアゴ「・・・ストレートだね、リンゴは..」

 

リンゴ「?うん。もしかして照れてる?」

 

ティアゴ「そんなわけがない」

 

リンゴ「じゃあ、帽子とって」


楽しげに言うと、ティアゴはぷいっと横を向いた。

 

ティアゴ「やだ」

 

リンゴ「導師、素敵なお顔拝見させて下さい♪」

 

小首を傾げて可愛らしく言うとティアゴはリンゴの帽子のツバをぐいっと下に引っ張り、目深に被らされて前が見えなくなった。

 

リンゴ「なにするのー?」

 

 

ティアゴ

「・・森にキノコでも取りにいくけど、一緒にどう?」

 

リンゴ「お供させていただきます..」

 

これ以上からかうと怒られそうなのでおとなしく同行させてもらうことにした。

 


 

 

 

 

 


 

森にいくとバルナバと会った。バルナバはティアゴとリンゴの姿をみるとなんともいえない顔をした。

 



リンゴ「おはようございます。」

 

バルナバ

「おはよう。ティアゴ君は怪我の具合どう?」

 

ティアゴ

「おかげさまで大したことなかったので問題ありません。ミラー隊長の方はどうですか?」

 

バルナバ

「バーニスは元気だったよ。」

 

リンゴ「良かったぁ」

 

 

バルナバ「..このあと二人で探索でもするの?」

 

 

ティアゴ

「なにも考えていませんでしたけど..リンゴ、どうする?」

 

リンゴ

「導師は怪我してるんだから今日くらいは休んでいたほうが..」

 

ティアゴ

「俺は一人でも探索するけど」

 

リンゴ「危ないよ!怪我してるのに」

 

ティアゴ

「そんな事言って、俺の探索ポイント増えないようにしてるんだろう」

 

リンゴ

「そんなんじゃないよー!分かった、探索行くなら私も一緒に行く。流石に今日一人じゃ危ないから」

 

そんなやりとりをしていると、ティアゴとリンゴの肩に、ぽんと手を置いたバルナバが小さな声でこう言った。

 

バルナバ

「俺やXさん以外の前では気をつけてね..」

 

二人が反応するより前に、バルナバは二人から去っていった。

 

リンゴ「なにを気をつけるんだろう..」

 

ティアゴ

「・・・さあ・・」

 

 

 

 

エスターさんから差し入れをいただいた。

 

 

 

バーニーさんからも。

シシンのマリネかな?

 

バーニー

「ティアゴ君は怪我大丈夫?」

 

ティアゴ

「おかげさまで、全く問題なしです。ミラー隊長は元気そうで良かったですね」

 

バーニー

「バーニスは動きすぎなんだと思う。今日くらい休めばいいのに..さっき、リンゴちゃんに会いに行くって言ってたよ」

 

リンゴ

「私に?ちょっと行ってくる!ティアゴ君、一人でダンジョン行かないでね?」

 

ティアゴ

「どうしようかなー」

 

リンゴ

「まっててくれないとくさいスープの刑にします。食べないなら頭からぶっかけます」

 

ティアゴ

「いってらっしゃいませ。ここでお待ちしております」

 

リンゴ「分かればよろしい!」

 

リンゴは颯爽と走り去った。

 

バーニー「二人って面白いね」

 

ティアゴ

「・・そうですか?まあ、リンゴといて退屈はしませんけど。この前なんて解熱剤の作り方を教えたら試験管からなぜか火がでるし」

 

 

 

 

魔銃師会ホールにいたバーニスを捕まえる。

 

バーニス

「リンゴ、お誕生日おめでとう♪」

 

リンゴ

「ありがとう...怪我の方は大丈夫?かなり出血してたみたいだけど」

 

バーニス

「ざっくり斬られたから少し痛いけど、大丈夫だよ。今日は探索しないでこのまま家に帰って休むよ」

 

リンゴ

「それがいいね。ゆっくり休んでね」

 

 

 

アルシアとギオルギーからも祝福してもらえた。

 

 

二人ともありがとうー!

 

 

 

すぐに森に戻り、ティアゴと探索に。

 


 

昨日怪我をしたとは思えない動きだった。

 

次にセシィーさんと探索。

 




ダンジョンから出ると、ティアゴがまた森でキノコを取っていた。

 

リンゴ「ねえ、まだ探索行けそう?傷痛む?」

 

ティアゴ

「痛くないけど、どこに行くの?禁断の遺跡でしょ」

 

リンゴ「そう。あの変な苗がほしい」

 

ティアゴ

「リンゴ様のお誘いを断るわけにはいきませんねー」

 

リンゴ「さっきから、バカにしてるよね?」

 

ティアゴ「・・さて、禁断の遺跡いきますか」

 

問いには答えず、ティアゴはスタスタと遺跡に入っていった。

 

そこにセシィーが先ほど一緒にいったダンジョンから出てきた。

 

リンゴはニヤリと笑い、セシィーも禁断の遺跡に誘う。


 

セシィーと共に禁断の遺跡に入るとティアゴは少し嫌そうな顔をした。

 

 

セシィー

「昨日、珍しくエドモンドが導師のことを褒めてたよー」

 

ティアゴ「それは天変地異の前触れですかね」

 

セシィー

「なにそれ。でもスケベって噂は本当らしいとも言ってた。なんでそんなこと言われてるの?」

 

ティアゴ

「さあ、エドモンドさんはなにか幻でも見たんじゃないんですか?俺、普段は紳士なのに..」

 

リンゴはクスリと笑った。

 

ティアゴ「なーに笑ってるんだよ」

 

ティアゴは本日2回目の、リンゴの帽子を押さえて目深に被らせて視界を奪った。

 

リンゴ「これのどこが紳士なのー?」


 

禁断の遺跡クリア!


 

スキルもドロップしました!

 

二人ともありがとうー!


 

ガラちゃんに妊娠の報告です。

 

ガラ「ほんとに?おめでとう!よかったねー♪」

 

自分のことのように喜んでくれたのでそれがなんだかとても嬉しくて、ガラちゃんにプレゼントを渡しました。


 

ガラ(リンゴからプレゼント貰えた..嬉しい..)



 

もう今日は酒場に行こうかなって夜だから行くなら早く行った方がいいと思います..

 

ティアゴ

「ご飯ご馳走するから酒場行こうよ」

 

リンゴ「え、いいの?」

 

ティアゴ

「誘わないと、リンゴ最近全くこないし。お酒飲めなくても、ご飯食べるだけなら大丈夫でしょ?」

 

リンゴ「うん!」

 

 

酒場に行って、早速注文する。ご飯がくるまでジュースを飲みながらティアゴと雑談をしていると、ちかくのテーブルの話し声が聞こえてきた。

 

『殿下がさ、最近女関係で揉めてるらしいね』

 

『聞いた聞いた。今度は旅人と寝たんだって?昔妊娠させたらしいって本当なのかよく分からない噂があるな..どうやら奥さんにバレたらしいけど』

 

『バレたのに未だに殿下はいつも女の子と一緒にいるよなー取っ替え引っ替え遊んでいるんじゃないか?本当にバレたのか?』

 

リンゴは聞こえないフリを決め込んで無言でジュースを飲んでいた。

 

その人たちは食事が終わったようで話しながら帰っていった。

 

ウィアラさんが二人の食事を持ってきてくれた。

 

ティアゴ「・・・・・」

 

ティアゴは食事を前にしてもしばらく無言だった。

 

リンゴ「美味しそう。いただきます!」

 

少し悪くなった雰囲気を払拭するように明るい声でリンゴは言い、食べ始めた。

 

ティアゴ「いただきます..」

 

一口食べてから、ティアゴは言った。

 

ティアゴ

「・・あのさ....今の、話って」

 

リンゴ

「根も葉もない噂だよ。不思議だね、なんでそんな噂が立つんだろう」

 

リンゴは感情的にならないように気をつけながら、微笑んだ。

 

ティアゴ「..本当に?」

 

この前泣いていたリンゴの姿を思い出し、噂がただの噂でないような気がしてティアゴは明るく振る舞うリンゴをじっと見た。

 

リンゴ

「本当だよ。殿下はのんきな性格だから、色々騙されたり、変な噂を流されてたりするんだよ」

 


ティアゴ「・・そう・・」


無表情で、食事を口に運ぶ。

 

 

リンゴ

「そういえば、昨日はどうしたの?あんな所で抱きついてきたりして」

 

雰囲気をよくしようと再び明るい声で話題を変えてみると効果はテキメンで、ティアゴは食べる手を止めて視線を彷徨わせた。

 

ティアゴ

「ごめん...人に見られるところで...ちょっと、混乱してたのかも...」

 

リンゴ

「モテモテの導師様にあんなこと言われてときめいていたのに、ただ混乱して言ってしまった妄言だったなんてガッカリ」

 

わざとらしく大げさにこうべを垂れて残念そうにした。

 


ティアゴ

「別にモテてないし...混乱したとは言ったけど、混乱してても思ってないことは言わないよ」

 

 

ティアゴはジッとリンゴの瞳を見つめていた。リンゴも食べる手を思わず止めて、見つめ返した。

 

視線が交差して、ドキリと心臓が高鳴る。



リンゴ

「..もう…ティアゴ君は女の子みんなにそんな事言ってるんでしょー」

 

恥ずかしさを隠すように冗談っぽく言いながらコップに入ったジュースを飲む。



ティアゴ

「・・前にも言ったけど、俺が誘ったり誘いにのるのは家族とリリーさんとXさん、あとは無理矢理セシィーさんに連れていかれるけど、あとはローデリックだけ。」


 

リンゴ

「前に、ティアゴ君、酒場でみんなの前で言ってたけど....ウェルカム派だって」



その話の中で使われているウェルカム派というのは、自分や相手はパートナーがいても関係を持ってもいいという意味である。


 

ティアゴ

「・・大事なところが抜けてる。リンゴがいいならウェルカムだけど、って言った。不特定多数にウェルカムじゃなくて、リンゴに、っていう意味だよ。みんながいるから冗談だって言ったけど、冗談じゃなかったよ」

 

 

真っ直ぐに向けられるティアゴの視線にリンゴは身体が熱くなった。

 

あの空き部屋で、見つめられた時を思い出した。

 

スッとティアゴの手が伸びてテーブルの上に無造作に置かれていたリンゴの手に重ねられる。



リンゴ「…!」


顔が赤くなり声にならない声をあげる。



ティアゴ

「ーー…」


言いかけた時に酒場のドアが開き、ティアゴは慌てて手を引っ込めた。



酒場にジェレマイアとバルナバが入ってきた。珍しい組み合わせだった。


リンゴ

(………ティアゴ君、

さっき何を言いかけたのかな?)


 

バルナバたちに会釈をし、挨拶だけすると離れた席に二人は座り話し始めた。

 


リンゴ

「お父さんが酒場にくるなんて珍しい。その相手がバルナバさんとか意外..」

 


ティアゴ

「・・娘を口説く不届き者の存在を察したんじゃない?」

 

椅子に寄りかかりながら、行儀悪くティアゴはお酒を煽った。



話を中断せざるを得ないのが気に入らないような態度のティアゴに、リンゴは思わず吹き出した。

 


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


ティアゴに家の前まで送ってもらい、魔銃師会に引き返すティアゴを見送る。


彼の背中がだんだん小さくなっていく中、さっきの台詞を思い出す。


「・・娘を口説く不届き者の存在を察したんじゃない?」


リンゴ

(酒場では冗談だと思って笑ったけど……冗談だよね……?口説かれてたとか……本当にあったり……

………しないか。そんなわけが……)



重ねられた手の意味は…?


その先彼は何を言おうととした……?



深紅の制服が見えなくなった暗闇を、リンゴはしばらく眺めていた。