この日のメニューは白インゲン入りのショートパスタとウォルドルフ風サラダでした。ワインは先日開けたプイィ・フュメです。

サラダはキャベツとりんごとくるみ入りで白ワインヴィネガーベースのドレッシング。最近出回り始めたざくろを散らしました。

ざくろはちょっと未熟だったかな。色が薄くてすっぱめでした。
パスタはキオッチオーレ。カタツムリのことだそうです。太めでカーブしているところが、なるほど、ちょっとそれっぽい?

この白インゲンのパスタは、もう何回かブログで紹介した気がします。イタリアン・ソーセージを炒めてトマトソースと缶詰の白インゲンを加えてちょっと煮て、パスタと合わせたものです。
このお料理を作るきっかけになった本を、ずっと紹介したいと思っていたんですけど、あまりに好きな作品だと、気後れしてしまって書けないものですね。
今日は意を決して、半分やぶれかぶれで(笑)。
「冷静と情熱のあいだ」 江國香織 辻 仁成 角川書店
ミリオンセラーになった本なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。江國氏が女性主人公あおいの視点から、辻氏が男性主人公順正(じゅんせい)の視点から、一章ずつ交互に語る形で書かれた恋愛小説です。
文庫版は江國氏のパートが赤い表紙の「Rosso(ロッソ)」、辻氏のパートは青い表紙の「Blu(ブリュ)」として、別々に発売されました。この装丁がとてもきれいだったので欲しいな、とも思ったのですが、物語として読むにはやはり1冊にまとまっていてほしかったので、私が持っているのは愛蔵版の方です。
竹野内豊、ケリー・チャン主演で映画化もされましたね。ブログタイトルはこの映画の中の、順正の恋人芽実(めみ、篠原涼子)のセリフです(原作にはこのセリフはありません)。フィレンツェのレストランで二人が食事をするシーンです。
芽実は、まずキャベツと豆と香味野菜を古くなったパンと一緒に長時間煮込んだリボッリータと呼ばれる料理を食べ、次に白インゲンのパスタを胃に流し込み、最後に、代表的なトスカーナ料理の、子牛の胃袋のトマト煮込み、トリッパ・アラ・フィオレンティーナを平らげてしまったのだった。とても女の子が普段食べる量ではないので、店員も目を丸くして芽実を見つめていた。
―「冷静と情熱のあいだ」 愛蔵版 第6章 静かな呼吸―
順正と芽実はけんか中。順正を困らせるために、ワインを水のように飲み、食べ物を次々と口に押し込む芽実。
以前は「ばかなコだなあ」と思ったけれど、今はこんな風に感情のまま、思ったままに行動出来る人がいっそ羨ましいような…。
それにしてもこの上のお料理のおいしそうなこと。私が「Blu」の方で読むのは実はこの部分だけだったりします。「Rosso」の部分は殆ど暗記してそうなくらい、何度も読み返しているのですが。
あおいが作るイタリア料理や日本食や、マーケットでの買い物の様子、沢山出てくるお風呂のシーン。
あおいの友達のダニエラが好きだというチョコレートケーキや巨大クレープなど、私の食欲を刺激する箇所もあちこちにあって。
あるいは、あの描写、あの一行がもう一度読みたいから…と、手に取ることが一番多い江國作品です。
原作ではあおいも順正も帰国子女です。日本人でありながら母国で異邦人になってしまった二人が出逢い落ちたのは「無謀なまで」の、「凶暴なまで」の恋。
映画では設定が変わっていて、あおいは中国人。ケリーのクールな容貌や雰囲気はあおいそのものという感じがしましたが、この設定のせいであおいの孤独感だけが際立ってしまっていたのが残念でした。
でもこの映画のおかげで、行ったことのない土地が舞台のこの物語を、モノクロでなく、色つきで味わえたような気がします。
そうそう、この作品を読む時に飲むお酒があります。原作の中であおいがよく飲んでいたアマレットです。

アーモンドの香りがするイタリアのリキュール。私は強くないので、銀之丞がいつも薄めのソーダ割りにしてくれます。きゅっとひねったレモンの皮を添えて。
「アマレット(Amaretto)」はイタリア語で「少し苦いもの」という意味だそうですが、苦いと思ったことはないですね。日本語の字面のとおり(笑)、甘いお酒です。
江國氏はこれが大好きで、アイスクリームにかけて食べるのだとか。
アイスクリームにかけると、アマレットもアイスクリームも量を食べちゃいそうでコワイので、私はまだ試したことがないんです。
原作の方は、特にRossoだけを読むと「え、これでおしまい?」という終わり方でしたが、映画はそれを一段飛び越えたクライマックスになっていて、これが良かった。竹野内クンの笑顔がとっても良かった。
この本を携えて行くミラノ、フィレンツェの旅。近いうちに実現できるといいな、と思っています。
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