Text or Nothing -119ページ目

ガラス面を挟んでいる

レイモン・ラディゲの『肉体の悪魔』のはじめにたしかおもしろい比喩があったように思う。
「魚の入った水槽に直面しているネコのよう」という比喩だったはず。(うろ覚え)
で、なにがおもしろいかと言うと、「ガラス面を挟んでいる」という指摘。

我々は日頃さまざま思案と欲求と嫌悪のベールを通じて外の社会と係わり合っている。
だが、外界との間にはガラスのような透明の隔たりがある。
その隔たりを超え一線を越えてコミュニティとコミュニケートすることはなかなかまれ。

しかしまた、ガラス板を通じて眺められた外界は、やはり色眼鏡で見られているも同然。
我々のアイデンティティはそうしたガラス板の性質によるのかもしれない。
それはあるときは色であり、あるときはカーブやひずみ、あるときは強度であったり。