Text or Nothing -106ページ目

先に死ぬか先に馳せるか

今朝起き抜けにこんな夢を見た。

舞台は中世ヨーロッパ。
吹き替え映画のようだった。
シェイクスピア劇に洗脳されていたような気がする。
どうやら戦場のようで、岩場に若い騎士が倒れている。
瀕死の傷を負って息も絶え絶えらしい。
すると老兵だか隊長だか、茶色いマントをつけた太めの中年兵士がやってきてこう言った。

「先に死ぬとは… 先に馳せるんじゃなくて…」

死ぬのと馳せるのと…

とりあえずそのときは、先に馳せた者が先に死ぬとは不条理だという意味でとらえた。
相手より先に馳せなければ先に死ぬことは無いが、騎士道精神としては先に馳せるべしといったところか。

が、あとからあとからいろんな意味がめぐってきた。

「先に」とは、「敵兵より先に」ではなくむしろ「その老兵より先に」だったのかもしれない。
若い騎士が先に馳せ、先に命を落とした…

いずれにせよ、なんらかのアポリアについて啓示的だと思う。

この世は、馳せるか死ぬかだ。
虎穴に入らずんば虎児を得ずといったところか。
今さら感も無くはないが、そうしたポリシーに基づく行為がある種の不条理を感じさせることがあろうとも、馳せること無くしては真実をつかんだり感じたりすることはなさそうだ。

あるいはまた、人類共同体の一員としてのふるまいを思うならば(まさに私の夢は隊長と兵士の絆によっていたのだし)、一粒の麦が地に落ちて死ねば多くの実を結ぶという一節もまた、馳せるべしと駆り立てずにはおかない。

不思議な夢だった。