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『身毒丸』- 「生くる卒塔婆の手」

寺山修司『身毒丸』冒頭

こんな歌が書かれている。
ト書きの中に含まれているが、どのように歌われるのかはわからない。

まなざしの
おちゆく彼方ひらひらと
蝶になりゆく
母のまぼろし
てのひらに
百遍母の名を書かば
生くる卒塔婆の
手とならむかな

「母のまぼろし」という語に、死すべき人間の脆さを思う。
そして最後の2行がそのはかなさい感を強めるような。

だが、母親の「名」を書くとは何を意味するのだろう。
大抵の人は母親を名で呼ぶことはないだろう。
名で呼ぶというのは、やはりこの世の人で亡くなったというしるしなのだろうか。
墓碑銘を刻む行為とは、おそらく人を書記行為に本能的に駆り立てる動機なのかもしれない。