フランスの公的サービスに満足する利用者(ル・モンドの記事) | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

日本の公務員の数は少ないのか多いのか、各国によって公務員の定義が異なるし、日本には独特の特殊法人というものが存在していることから、公務員と「見なされる」人数は実はかなり多いという議論もあります。

人数という問題もさることながら、公務員にかかる人件費の総額の多寡にも問題がありますが、ここでは深入りしません。さらに別の問題は、実際に公務員の仕事によって何らかの恩恵を受ける立場の人、つまり「公的サービス」の利用者(日本ではなぜか、「受益者」呼ばわりされている)が満足しているか否かにもあるように思います。日本にこの種の統計があるかどうかは知りませんが、フランスの調査結果はどうでしょうか。

タイトルから既に結論が出ていますが、以下は6月21日の『ル・モンド』に掲載された記事です。


『公的サービス:満足している利用者』


Services publics : des usagers satisfaits

LE MONDE | 20.06.08 | 15h24 • Mis à jour le 20.06.08 | 16h50



公的サービスのフランス型モデルは、今も確かな価値であり続けている。政府が、国家がその基本的な使命に割く手段の大幅な見直しに取り組んでいるとき、BVAとPaul-Delouvrier研究所がFrance Interと『ル・モンド』と共同で実施した世論調査は、驚くべき指標を提供している。2004年にこの世論のバロメーターが作られてから初めて、雇用と失業対策は、フランス人の過半数にとって、国家の最も優先的な介入部門ではなくなっている。

改善の徴候として、2007年10月の調査対象の55%、2006年4月でも62%が重視したこの懸案は、もはや調査対象の34%が重視するに過ぎない。公共政策の努力は基本的に、国民教育(43%)と公的医療(35%)、次いで雇用と住宅(24%)、社会保障(22%)、環境(20%)、司法(17%)、警察と憲兵隊(15%)を対象とすべきであるとフランス国民は判断している。治安もまた、国民の期待の二次的なものに後退したという明白な徴候である。

優先事項の分類は、国家の行動に対するフランス人の認識に対応している。この認識は、3年間で10ポイントという持続的な低下にも関わらず、警察と憲兵隊(57%)に関しては依然として良好である。医療と社会保障に関しても同様である。これらはなお50%を超える肯定的な評価を受けている。反対に、国民教育に関しては判定はより批判的であり、好意的な意見が47%に過ぎないのに対して、否定的な意見は48%である。また司法も好意的な評価は46%だった。

にもかかわらず、過半数のフランス人(51%)は、補助を改善するための公共サービスにおける新しい投資よりも、課税と徴税の減額を好んでいるようだ。BVAのGaël Slimanによると、「この選択は、多額の税を払う特権的階級だけに由来するわけではない。購買力という問題により敏感な庶民的階級においても表明されている」。


LOGEMENT ET SANTÉ EN TÊTE

(住宅と医療がトップ)


ニュースにより敏感で、評価においてより意見の分かれる世論とは反対に、公共サービスの利用者は全体として満足したままである。状況は対称的なままであるとしても、評価された9部門全てで、好意的な評価を50%以上受けなかったものはない。住宅と医療、税制と課税のサービスは80%を超える肯定的な意見を得ている一方、司法(53%)と特に雇用(51%)では、態度は依然として控えめである。その機能と「パフォーマンス」に対する批判が増大しているにも関わらず、国民教育は、21%の不満に対して、78%という全体的な満足感を得ている。

BVAによると、しかしながら、「フランス人の平均的満足感は、2007年6月の75%から2008年の72%へと、3ポイントの明らかな低下を記録している」。世論調査機関はそこに、「1年前から政府によって示されている費用削減政策が、未だに存在する無駄遣いに関して安心させることと、フランス人と利用者が最も依存しているサービスの質の低下に関して憂慮させることの、二重の効果を生み出している」という徴候を見出している。

彼らが明白な削減を追及する予算担当の閣僚だったとしたら、利用者は税(61%)、社会保障(60%)、雇用(56%)、環境(55%)と住宅(55%)のサービスに取り掛かっていただろう。反対に、司法において実現可能な節約を判断するのは48%に過ぎず、警察においては40%だった。

2006年12月には、調査対象者の47%が、予算の削減は公務員の基本的な育成の場である医療と教育でなされるべきだと考えていた。それから18ヵ月後、この数字は医療に関しては36%、教育に関しては32%に低下した。「最も費用のかかるサービス、一方では最も評価され、フランス国民と利用者の期待を最も生んでいるサービスが、節約できる可能性が最も少ないものとして認識されている」と、BVAは明確に述べる。

政府が、定年退職する公務員の2人に1人を補充しないことで人員を減らそうとしている一方で、今から2012年までに公的負債を削減しようという政策は今なお全面的には理解されてもいないし共有されていもいないようである。この意味で、今回の調査は、一つの警告として認識され得る。

Michel Delberghe

Article paru dans l'édition du 21.06.08





この記事は偶然見つけたものですが、今回のエントリーは、村野瀬玲奈の秘書課広報室 の

日本の議員数、公務員数は少ない (1)
日本の議員数、公務員数は少ない (2)

に触発されて、というか、違った角度から支援させていただこうという意図で書きました。しかし、支援にも補足にもなれなかったような気がします。

日本の公務員は少ないと同時に、多い。(こういう言い方でどうかな?) (1)

こちらも併せて読むと、問題がよく分かるように思います。続きも期待しています。

フランス型の社会が決して理想ではないことは確かですが、フランス国民が概ね満足感を持っており、支出を削減できない分野が存在することを意識していることは重要です。少なくとも、何でもかんでも「民営化」しろという意見は持っていません。

日本では、国の側が公と「民間」の対立を煽って、マスコミを利用して大規模な洗脳作戦を展開しているように見えます。「公的サービス」の質が悪いから「民間」に委ねれば何でも良くなる、という幻想を振りまくとして、「サービス」の質を悪化させた側であるはずの国が、その点に関して反省も謝罪も示すことなく、敵対心を煽り立てるだけなのはなぜなのか。そこから先に踏み込むとまたしても「陰謀論」呼ばわりされかねないのでやめておきます。