前島さん、あるクリーニング店から出てきた。うかぬ顔。ブラウスの黄ばみが落ちていない。もったいないと感じている。

街の人にもインタビューするとクリーニングに不満を持つ人が多い。

生田さん、宅配でクリーニングを依頼した。黄ばんだジャケットが真っ白になって帰ってきた。大満足の生田さんだった。

happy,これがその会社。ワイシャツ1枚6000円という値段。

業界の常識に挑み、ドライクリーニングを捨てて、水洗いに徹した。

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龍さん「どの業界も低価格競争で疲弊しているのが、今後は独自の技術で生き抜く時代」

ハッピーは古都京都のはずれにあった。2002年創業、社員25人、洗濯のプロ集団だ。社長が社員を個別に指導している。

宅配荷物は1日平均40個。全国各地から送られてくる。

店舗を構えていないので宅配でやり取りする。

汗で黄ばんだものや、色が移ったもの、ワインやインクをこぼしたものなどなど、他のクリーニング店では断られるようなものばかり。

ワインなどは天然の色素なので普通は諦める。ではハッピーではどうやって落とすのか?

それが独自開発した革命的マシン。ニットのワイン汚れを水で洗う。

ドライという指定の生地でも水で洗う。

通常は石油系溶剤を使用したドライクリーニングで型崩れも少ない。

ドライの弱点は水溶性の汚れだ。水では落ちてもドライでは落ちない。

その弱点を解消したのがハッピー独自開発の洗濯機。

①無重力風・・・一般的な洗濯機は叩きつけて洗うが、無重力では繊維の中まで入る。

②独自開発の洗剤

③データベース化

先ほどのニットが真っ白になって出てきた。アイロンをかけて出来上がり!

ギトギトのワイシャツも新品のようになって出てきた。

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驚くのは価格だ。ジャケット7200円、ワイシャツ6000円。平均20000円だという。

高くて遅いのに、客は切れない。社長は「ケアメンテ」という言葉で表現。

早い安いというのと逆の戦略で、独自のクリーニングを築いた。

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小池「年間100万円を使うかたもおられるとか。」

社長「10人くらいはいらっしゃいます。富裕層ばかりじゃなくユニクロからブランドまで幅広く利用して欲しい。」

社長「機械は1台1千万くらいかかる。」

龍さん「無重力、水洗いの発想は?」

社長「友禅流しからヒントを得た。」

龍さん「成功の裏にはトレーニングがあるのでは、社長は機械の会社におられたので」

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この日、社長が怒っていた。客から来た箱を開けるときの動作が気になったらしい。

クリーニングの市場はバブル崩壊後ジリ貧状態。消費者の不満も高い。

スタッフが箱をハサミで開ける映像を見せて、「傷つけたらどうするんですか!」と叱る。それは彼の経験にあった。

京都の宇治で50店舗を展開するまでになったが、毛皮のコートを縮めてしまった経験がある。客の前で謝るしかなかった。

橋本は’客の大切ね衣類と向き合おう’と店舗を全て閉鎖し、無店舗宅配のクリーニングを2002年に創った。

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ハッピーではボタンを全てはずしてから洗う。ボタンの縫い方は写真に記録し、糸も同じものを使用して元通りにする。

ハッピーでは送られてきた衣類をミリ単位まで計測し、カルテに記録。もちろん汚れの箇所も全て記録する。

ハッピーではカウンセリングも洗う前に実施する。洗うことによって起こりうる現象も包み隠さずに連絡する。

客が全て納得してからクリーニングをする。

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小池「店舗閉鎖のときの気持ちは?」

社長「パイも小さくなり、このままやっていたら経営なりたたないだろう。ということと技術を持って全国区になったら何とかなるだろう。破壊と創造というパナソニックの中村社長の言葉のように、この業界もそういうことをしないとダメなんじゃないかと思った。」

龍さん「激安なクリーニングは妥協を生むのでは?」

社長「キレイにしたい!が原点。」

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土曜市民講座に特別講座を持ち講義しているのが橋本社長

台所用洗剤とオキシフルを混ぜて、汚れに付けて、あとは洗濯機に入れるときれいになるという。

口紅にはクレンジングオイル。惜しげもなくノウハウを教える。

それは「京の着倒れ文化」が原点。昔から伝わるものを、長く着て、最後は座布団になるまで着倒す、そういった考えを伝えたいからだ。

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池袋西武百貨店で、ハッピーの取次ぎを始めた。値段がはるものも長く着られることを客にアピールする狙いだ。他にもアパレルメーカーなど5社がハッピーと提携している。

龍さん「とことん着倒すことなんですね。」

社長「ものを大切にするのが親から言われていましたからそれが原点で今も続いている。」

龍さん「電子カルテが必要なハッピーと他の違いは、モノ以上のものがそこにあるからカルテが必要なんですね。」

社長「ダメになったものを復元するのは必要なこと。」

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編集後記・・・衣服のケアメンテは医療に似ている。サービス業は変革を求められている。戦略の無い中途半端なものはいずれ淘汰される。魂の宿る服!