こんにちは、培養部門です。
今回は年齢の上昇に伴う妊娠率の低下は子宮と卵子どちらの要因が大きいかを説明します。
結論から言うと、卵子の要因が大きいと言えます。
その理由は、年齢の上昇に伴い卵子の質は低下してゆきますが、子宮の質は卵子の質に比べてなだらかに低下することが分かっているからです。
こちらの論文では、ドナー胚(提供卵子を受精させた胚)を移植したグループと自身の胚を移植したグループの成績を比較した結果が記されています。提供卵子は実年齢よりも若い卵子を用いるので、良い卵子の質であると仮定できます。
40歳以上の女性に胚移植をした結果では、ドナー胚を移植したグループで妊娠率、出産率は高く、流産率は低いことが分かりました。
このことから、卵子の質は年齢に強く関係しているが、子宮の質は年齢にそれほど影響しないことが言えると思います。
一方で、この論文ではPGT-A後の正常胚のみを移植した臨床的妊娠率は35歳未満で68.4%、35~37歳で65.1%、38~40歳で62.8%、41~42歳で58.3%、42歳以上の患者で57.6%であったと記されており、正常胚を移植したにも関わらず年齢の上昇に伴い妊娠率が低下したことが分かりました。
40歳以上でも正常胚を移植した場合の妊娠率は約60%と非常に高いことが分かりますが、40歳以下に比べて低下していることが分かります。
このことから、年齢の上昇による妊娠率の低下は卵子の質の低下(ここでは染色体数的異常を指す)によるものだけではないことが分かります。
子宮の質は年齢の影響をそれほど影響しないと説明しましたが、多少なりとも影響することは事実であります。
卵子や子宮の質の観点からも、将来を見据えた治療の選択、進め方が重要です。
お知らせ
当院はPGT-A実施施設として日本産科婦人科学会に承認されています。
PGT-Aを行うことによって、複数回の妊娠不成立や流産を繰り返す方に妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます。
・直近の胚移植で2回以上連続して臨床的妊娠が成立していない方
・直近の妊娠で臨床的流産を2回以上反復している方
・夫婦いずれかにリプロダクション(生殖)に影響する染色体構造異常を有する方
※PGT-A対象者の方で当院に胚盤胞を凍結保存している場合、採卵を行わずに保存してある胚盤胞を用いてPGT-Aをすることができます。
PRP療法とは再生医療の一つです。
様々な医療分野でPRP治療は行われており、不妊治療分野ではPRP療法を行うと子宮内膜が厚くなるという報告が専門の学会から報告されています。
子宮内膜が厚くなると、移植した胚の妊娠率、出産率が向上します。
PGT-A、PRP療法をご希望の方、ご興味がある方は当院理事長または院長の外来診察を受診ください。
文責:培養部門
〔理事長〕古井憲司