美濃行 | 偽クレモンのブログ

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平日休みに岐阜県美濃市周辺を巡ってきた。目玉はTV’道との遭遇’で知った湯の洞水路橋だ。後で詳しくホザく。

 

我が家から美濃へ行くには、東名・東海北陸道と乗り継いで、美濃I.C.で降りる。降りてほどなく市街地に至る。片道工程1時間程度で、意外に接しやすい。まずは市街地の北に位置する長良川発電所に向かう。事前に発電所周辺の駐車場をネットで探してみたが、明確に駐車できそうな場所が見当たらず。長良川鉄道の公式サイトで、最寄の湯の洞口駅に無料駐車場が5台分あると謳ってあったが、GOOGLEアースで確認してもどうにも駐車場があるようには見えず。不安ながらとにかく行ってみた。湯の洞口駅はとても可愛らしい無人駅だった。

 

駅前を一通り散策したがやはりそれらしい表示はなく。止む無く一番邪魔にならないであろう広場に駐車した。係りの人に怒られたときは’ごめんちゃ~い’だな。いやしかし、結界の曖昧な鉄道横に駐車できるのは乙である。

 

しかもちょうどディーゼル車がやってきた。そう本数もないだろうからラッキーだった。平日の昼間だが結構な人が乗っていた。この駅で乗降する人はいなかった。

 

駅から歩いて数分で、長良川の向こうに発電所が見えてくる。緑の中に赤煉瓦が映える、美しい発電所だ。

 

長良川発電所は1910から稼働している現役長老。最大出力は4800KW。当時としては最大級で、名古屋市内に送電されていたとのこと。現在は美濃市内に送電されている。建屋・敷地は木曽水系の発電所に比べると小ぶりな印象。駐車中のバスは、可児高校電気課ご一行としてあった。個人でも見学の予約ができるのならしとけばよかったな。

 

内径3000の水圧鉄管1本。今となっては小規模なんだろうが、迫力ある。

 

建屋は二棟並んでおり、手前は1981年に建て替えられた発電機棟。内部の発電機関係の老朽化による更新の際に同時に新設されたとのことだが、設備が巨大なので建屋を壊さないと出し入れできなかったとか?ま、判らんが、意匠はおそらく旧棟を見た目だけ踏襲しての赤煉瓦タイル張り。ちゃんとイギリス積仕様にしてある。でも、タイル化はさて置いても、旧棟はもっとモダンな意匠が施してあったんじゃないかな?知らんけど。そこまでコストは掛けられずノッペリしたのやも。発電棟なので窓が少ないのは必然ではある。検討外れだったらごめんちゃい。

 

発電機棟の奥には創建時そのままの建屋。たぶん事務棟かな?こちらはモノホンのイギリス積煉瓦造。内部に鉄骨を挿入した耐震補強工事が施されているとのこと。

 

何故に当時の産業施設はかようにモダンでおしゃれなのか?コストに対する考えかたが根本的に今と違うんだな、きっと。

 

発電所を通り越して更に長良川沿いを歩き、本日の目玉、湯の洞水路橋へまいる。

 

長良川を左に折れ、渓流沿いをしばらく行くとその威容が目に入る。湯の洞水路橋である。当然のことながら、発電所と歩調を合わせて1910に建造された。そう、長良川発電所は水路式発電なのであった。水路式とは?ダムではなく、川の数キロ上流から取水して、どんどん下ってゆく川と袂を分かち、なるべく高低差を付けずに発電所まで運び、できた高低差で一気に水を落として発電機を回し、水を川に戻すという方式。水路の途中、長良川に流れ込む谷を突っ切るのに設置されたのが水路橋だ。今なら太い鉄管を渡すのかな?

 

煉瓦造及びコンクリート造5連アーチ橋。両端は鬱蒼として木々に覆われて見えない。コアな建造物ファンには不満かもしれんが、景色としては森と相まって素晴らしい。

 

煉瓦のアーチ部は最強(?)の6巻き仕様!TVで見た時は注意喚起のペイントが5巻き分までしか施してないので5巻きだと思っていた。5巻きでもレアな部類だが、目の当たりにして6巻きと判ってビッツラした。私の乏しい情報の範囲では、他に知っている6巻き煉瓦アーチは福岡県の欅坂橋梁だけである(欅坂は’ねじりまんぽ’のバリューアップ付きだ)。’道との遭遇’で鹿取さんが中央本線の旧隧道を紹介したときに、そのアーチ部分が5巻きで、絶対に崩さないという意思を感じる(大意)みたいなことを仰っていた。中央線のトンネルが単独で崩れることで、たぶん人は死にはしないが、ここが崩れたら名古屋の電気が止まったのだ。死ぬかもしれない。だからこその6巻きだと思っておこう。実際の力学的な意味は門外漢なので判らない。

 

アーチの上は発電所と同じイギリス積煉瓦造だ。イギリス積は強固で且つ比較的経済的なので、土木建造物に多用されたとのこと。

 

文化財なのに、この先にある温泉郷のチープな広告が手描きしてあるのも乙なもの。この部分が長手積なのは、アーチ構造を考えたら当然だな。

 

橋脚部分にもなぜかアーチがある。絶対に崩せない強固な意志はどうした!?ここを空けることで逆に強いとか?メンテナンス用かな?ただの意匠だったら怒るぞ。

 

水路橋脇から山腹を上って水路を上から見ることもできる。

 

お尻の穴がキュ~っとなるくらい恐ろしいほどの水流だ。発電中なんだろうな。常時発電しているのか?落ちたら、どこかのフィルターに引っ掛かるのかな?水車まで行くことなないだろう。この水路出口も創建時そのまま。ここ1つとっても立派な生きている産業遺産だ。

 

ところで、帰りしなにまた発電所の前を通ったとき、相方が展示してある巨大な水車に気が付いた。上と同じ写真だが、水管の向こうにある、おそらく創建時のものだろう。あれは何?と問われたので、あれを水で廻して発電するんだよ、と応えたが、腑に落ちない顔をしている。さっき水路橋のところで、何故に水路橋が必要なのか説明していたので、直ぐにピンとくると思っていたのだが。。。よくよく考えたら、普通、’発電’自体の仕組みなんて知らないよな。自分は製造業に身を置いている故、周りも自然に知っている人ばかりで無自覚だった。それで、水力に限らず、’発電機’の仕組みを説明したら、あぁ、そうか、となった。これで水力発電の仕組みを知っている非製造業人が一人増えた。めでたし。

 

帰りに長良川を渡る時に気が付いたが、発電に使った水を川に戻している場所が見当たらない。変だなと思い、ぐぐーっと下流に目をやるとそれらしい激しい流れを見つけた。だいぶ離れているが、もしそうだったら、何故にこんなに距離を置いたのだろう?ネットでは判らなかった。

 

長良川発電所に関わる文化財は本館と湯の洞水路橋だけでなく、取水口から発電所までの間に結構な件数の創建時そのまま物件があるらしい。今日は相方がいたのでそこまでしないが、いずれコンプリートしたいものだ。

 

ランチは美濃の’うだつが上がった町並み’にある蕎麦屋で。二八の最高の部類だ。かき揚げも大由。

 

さて、うだつが上がった町並みだが、人っ子一人いない。いや、かなり広範囲に古い町並みが整備されているのだが、平日とはいえこんなことある?広報の問題か?場所は高山や馬籠・妻籠よりもよっぽど行きやすいけどな。めったなことは言えないが、ストイック過ぎるかもね。どぎつい観光仕様ではない。そこが良いところともいえる。

 

美濃和紙の店で見つけた名産の’水うちわ’。素敵で欲しいけど高くて手が出ない。

 

以上。美濃は行きやすいし見どころは多いし人は少ないし、お勧めだ。