〇The Lion of Soweto/Mahlathini<現時点(1989年現在)での断面図を見せる50枚、の14>
南アの広沢虎造ことマハラティーニ(1937~1999)は、南アのダンス音楽であるンバカンガの代表的シンガー。コーラスの3人組マホテラクイーンズ共々、1990年前後にパルコのイメージキャラクターとして日本のTVにも登場し、来日公演も果たしたので、当時人一倍大人だった世代には見覚えがあるだろう。見覚えどころか、P.V.や公演では所謂トムとジェリーに出てくるアフリカ人の井出達で鮮烈な歌を披露したので、強い印象を持った人も多いのでは?私は来日時にたまたま関東出張だったので、渋谷かどこかのクラブ・クアトロでそのライブを体験できた。マハラティーニは寄る年波と体調不良で精細がなかったが、マホテラ・クイーンズがそれを補って余りある素晴らしさで、良いライブだった。
来日時は精細なかったが、この盤は全盛時の’70年代前半の音源をまとめたもの。私も持っている。名義は単独だが、当然のようにクイーンズも大いに参加している。では、まずは1曲どうぞ。
良い。御大の揺らぎまくるダミ声と、機械のように正確で南アの大地のように(知らんけど)豊穣なコーラスの対比が素晴らしい。サウンドはハネる2ビートでファンクしまくるベースが肝。
個人名義のアルバムだけに、クイーンズの参加していない曲もあるのだが、御大には悪いがそれはやはり寂しい。じゃ、珍しくちょっとメロウな感じの曲をば。
この曲なんかはクイーンズなしでは単調で成り立たないのでは?と思える、悪いけど。ところが、マハラティーニ亡き後のクイーンズのアルバムも持っているが、やはり何かが足りない。緊張と緩和、陰と陽、戦争と平和、月と鼈(これは違うか・・)相対するものが溶け合ってこそ生まれるものがあるのだ。
〇Si Vous Passea Par La/3 Mustaphas 3<現時点(1989年現在)での断面図を見せる50枚、の15>
3・ムスタファス・3は、バルカン半島の奥地にある’シュゲレリ村’出身という触れ込みのバンド。シュゲレリ村は架空じゃなかったかな?コリン星みたいな、三日月村みたいな。。。その音楽性は、バルカン半島から中東、北アフリカ、そしてつまみ食い的に全世界の大衆音楽を小出しに融合した多彩なもので、’90前後には限定的に話題になっていた。私は近所のレンタル屋で借りてカセットテープで聴いていたが、このアルバムだったかどうか判らん。で、あまり良い印象がない。ワールドミュージックのお勉強的で、肉感をあまり感じなかったから、という記憶だ。じゃ、聴いてみる。
Si Vous Passez Par La (youtube.com)
中南米歌謡のボレーロのパロディだろうか?やっぱりあまり面白くない。本気度もインチキ臭さも中途半端に感じた当時の印象が蘇ってきた。このショボいヴォーカルでのボレーロがニューウェーブっぽいと言えば言えるが。私はけしてウマヘタ/ヘタヘタが嫌いではない。ポストパンクのその手のバンドは大好きだ。でも考えたら中南米音楽のウマヘタって聞いたことないな。とうよう師がこのバンドのこの曲を評価しているのはそういう点かな?だとしたら、とうよう師の懐は曙並みに深いな。
1曲で判断しちゃダメなのでもう1曲、というか、45回転EPのB面全曲だ。
Starehe Mustapha I II & III!! (youtube.com)
これはなかなか良い。良いので長いけど最後まで聴いてほしい。ウードを中心としたアラブロックで始まるが、3:00から突然キング・サニー・アデ風のジュジュに変化する。最初はかなり忠実にアデ風だが、それが5:30あたりでアデから外れていくところが乙だ。そして、その後のアラブ風オルタネイティブ・ミュージックが個人的には最大の聴きもの。最後の2分半は実に面白い。アラブロックならラシッド・タハを聴くし、ジュジュならサニー・アデを聴くが、私はパロディならば箍が外れたパロディを聴きたい。それがこのバンドでは初めて聴けた。見直した!私が好きな後半部分をとうよう師がどう評価しているかはレビューでは読み取れなかった。
じゃ、今日はこれくらいで。