とうよう師が選ぶ大衆音楽100選-8 M.M.誌創刊20周年企画’89 | 偽クレモンのブログ

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〇グリード/アンビシャス・ラバーズ:<現時点(1989年現在)での断面図を見せる50枚、の3>

アンビシャス・ラバーズは1984から1991まで活動した、アート・リンゼイとピーター・シェラーによるプロジェクト。アート・リンゼイの血たるブラジル音楽とファンクを融合した新しいビート感だ!と、当時、業界からは持て囃された。が、セールスには結びつかず。’7つの大罪’を冠したアルバムを3枚リリースしたところで解散。グリード(貪欲)は1988年リリースの2nd。持ってる。

アート・リンゼイは1953年、米出身のシンガー・ソングライター、ギタリスト。3歳から17歳までブラジルで過ごしている。帰郷後、ニューヨークで音楽活動を開始。1977年に、ここでも度々紹介する真のパンクバンド、DNAを結成。その後、ラウンジ・リザーず、ゴールデン・パロミノス等、当時の先鋭的なニューヨーク音楽に関わり、満を持して(?)自身のプロジェクトであるアンビシャス・ラバースを結成。ピーター・シェラーはこのプロジェクト以外では知らない。本プロジェクトには当時の先鋭的ミュージシャン達が挙って参加している。じゃ、まずは1曲。

Copy Me (youtube.com)

 

良い。リリース当時は凄く新しい感覚で、がしかし2000年頃に聴いた時は陳腐化した?と感じたのだが、今はそうでもない。人の感覚なんていい加減なもんだ。ベース(サビ以外)とドラムは多分、打ち込みで、とてもシンプルなのだが、ヴァーノン・リードのギターとナナ・バスコンセルスのパーカッションと込みで、重層的な魅力を湛えている。必要以上に打ち込まないセンスは素敵だなと思う。宅録で目指したいができない部分だ。この音の入れどころ抜き所のセンス・バランス感覚が優れている故、よくよく考えたら私の嫌いなドラム(スネア)の音響なのだがそれが全く気にならない。’90前後のこの手のドラムを使った音で唯一、愛聴し続けている盤だ。

曲の出来もすごぶる良い。クールに突き放したAメロから一転、メローなサビ。D.K.ダイスンのコーラスが素敵過ぎる。そしてアート・リンゼイのノイズギターから間奏へ。間奏で初めてドラムがシンコペートする。このバランス感覚。サビのベースはメルヴィン・ギブスが弾いているのかな?じゃ、もう1曲。収録曲のスタジオライブ。

Ambitious Lovers - Admit It (youtube.com)

 

良い。やっぱり生演奏はいいなぁ。この曲はアルバムVer.では特に好きじゃなかったが、この演奏は良い。音は悪いのに良い。コーダはライブ仕様で追加アレンジされていて、これまた良い。叫ぶD.K.ダイスンは初めて聴いた。CDだと地味にフェイドアウトだ。

さて、とうよう師はこのアルバムを’89現在の断面で選定しているが、’90への動きを示す10枚の方で良かったのでは?シンプルなロック的ボトムに、パーカッションやギターカッティングを合わせて重層的なリズムを構築する草分け的な音と思うのだが?トーキング・ヘッズのリメイン・イン・ライトは整理が行く届いてなくて重層的に聴こえないんだよな。

 

〇黄昏のローマ~ライブ/ペンギン・カフェ・オーケストラ<現時点(1989年現在)での断面図を見せる50枚、の4>

とうよう師がペンギン・カフェねぇ・・・ペンギン・カフェ・オーケストラは1972年にサイモン・ジェフスにより結成された楽団。クラッシック、民族音楽、現代音楽等を取り入れたアンサンブル。’80年代に日本の一般マスコミで取り上げられ、一時、TVや待ち中でしばしば、そのサウンドを耳にしたものだ。プチ・ブームがあったと言っていい。ペンギン・カフェという名前をパクった店もいくつかできた。このアルバムは、そんなブームも下火になった(?)1988年にリリースされたライブ。

私はこれまで彼らの音にまともに向き合ったことがない。先に書いたように、’80にはしばしば耳にはしていたが、ヘタウマ楽団くらいにしか印象がない。とうよう師のレビューを読む。’アマチュア同好会的だった初期と比べると演奏力も向上し、よく寝られたサウンドを聴かせる。ぼくの関心事である19世紀のストリング・バンド・サウンドを思い起こす・・・’。へ~、期待して聴いてみよう。

Numbers 1-4 (Live From The Royal Festival Hall,United Kingdom/1987 / 2008 Digital Remaster) (youtube.com)

 

なるほど・・話の相槌で’なるほど’と言う奴はその話に関心がない説があるが、この場合はその限りでない。忖度なく良い。リズムは19世紀のダンスバンドの証、ハチロク。昨日今日ハチロクをやってみました感はなく、よくこなれていると思う。19世紀ダンスバンドのような華やかさはないが、そこはそこ、現代音楽に軸足のあるペンギン・カフェたる由縁だろう。俺たちがはダンスバンドじゃないという意思表示だ。ミニマルなんだがボトムがちゃんとハチロク・グルーブを捕えているので7分の長尺もシットリと聴ける。じゃ、もう1曲。

Prelude And Yodel (Live From The Royal Festival Hall,United Kingdom/1987 / 2008 Digital Remaster) (youtube.com)

 

良い。アフロ系ダンスバンドの証、後打ち2ビート。カリブ海一帯を侵略したヨーロッパ人が持ち込んだ疫病・・じゃなくて3拍子とハチロクは奴隷として連行されたアフリカ人の2ビートと融合し、より豊穣なビートのダンス音楽が生まれた・・・そんなことを連想させるサウンドだ。サイモン・ジェフスがどう考えていたのかは知らんけど。

 

いや、知らないうちにペンギン・カフェはこなれたバンドになっていたんだね。サイモン・ジェフスは1997年に脳腫瘍で鬼籍に入り、ペンギン・カフェは解散した。

 

今日は以上。近所の川に花見に行くか