とうよう師が選ぶ大衆音楽100選-7 M.M.誌創刊20周年企画’89 | 偽クレモンのブログ

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とうよう100選の内、’90年代への動きを見せる10枚が前回までで終わった。その中の何枚かは、’90どころかそれ以降のダンス音楽の主流となるような方法を示唆していた。逆に何枚かは単にとうよう師が好きな音楽を紹介しただけじゃね?という嫌疑モノだったが、それはとうよう師の希望的観測が叶わなかっただけなのだろう、きっと。

さて、次の50枚は、現時点(1989-4現在)での断面図を見せる50枚とのこと。現時点の音ではあるが、それがこれからを担うかどうかは?、ということだったのだろう。じゃ、いってみよ!

 

〇パレード/プリンス:<現時点(1989年現在)での断面図を見せる50枚、の1>

このアルバムは持っているし、無人島100にも選定している。当時凄いインパクトがあり、でもこの贅肉を削ぎに削いだ音が大衆音楽の主流になるとはとても思えず、プリンスはこのまま孤独の旅で地獄まで行ってしまうのだろうか?とビビったものだ。実際にはそうはならず、数枚同傾向のアルバムを出した後、またコッテコテに盛った音に還っていった。とうよう師が当時、このプリンスを、このアルバムを、高く評価していたのは知っていた。ただし、’80から黒人音楽全体が下り坂であり、プリンスはその中の小さな上向き矢印に過ぎないと、下のような図をわざわざ載せて嘆いていた。

 

プリンス(1958-2016)は、米ミネアポリス出身のシンガー、ソングライター、ギタリスト、プロデューサー等。デビューアルバムは1978リリース。元より米黒人音楽が苦手な私は特に何も引っ掛かりのない音だったが、1985年の’アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ’を渋谷陽一氏がラジオで数曲オンエアしたことで大分引っ掛かった。そして1986年リリースされたこの’パレード’を渋谷氏は大絶賛。こりゃ凄い凄いと4,5曲掛けた。私は直ぐにスライの’暴動’の変なファンクを思い起こし、大いに気に入り購入。随分聴いた。じゃ、2曲目を。1曲目は掴み曲で、2曲目こそがプリンスが今やりたい音の象徴。

New Position (youtube.com)

 

バックはひしゃげた打ち込み?とベースとメタル系パーカッションのみ。’80はスタジオ技術の発展をいいことにコッテコテに盛った音が主流になっている中、贅肉を削ぎ散らしかしたこの音は業界や同業者に相当なインパクトがあったようだ。反面、良識あるユーザは大いに戸惑った模様で、直近のアルバム数枚がチャート1位を飾ってきたのに、パレードは3位止まり。ま、R&B専門漢には到底理解できない音だろうな。じゃ、もう1曲。

Girls & Boys (youtube.com)

 

今聴くと、凄くまとまりのある音と気づく。贅肉を削いでいるだけで、変なことはしていない。当時はスライの’暴動’並みに変なアルバムだと思っていたが、そうでもないな。スライはまさに天才だが、プリンスはプロデューサとしても手腕も兼ね備えている。その違いだな。とうよう師のレビューから’プリンスのストイックな音造りは全く正しいと思うが、それが世の中から全面的な支持を得られないのは宿命だろう’。その後の顛末は皆さんご存じの通り。

 

〇America-Do you remenber the love?/James Blood Ulmer<現時点(1989年現在)での断面図を見せる50枚、の2>

ジェイムス・ブラッド・ウルマーは1940年、サウスカロライナ出身のギタリスト、シンガー、ソングライター。所謂JAZZ畑の人で、オーネット・コールマンに師事していた。JAZZ門外漢である私が所有するJAZZ畑のアルバムは、ウルマーの’80初頭の4枚と、カサンドラ・ウィルソンの2枚と、デガショーの1枚、だけ(だと思う)。私の持っているウルマーのアルバムは、リリース元がラフ・トレードだったり、渋谷陽一氏がラジオで掛けたりと、JAZZから大きくはみ出していることがそんなエピソードからも判る。かといってロックぽいというわけでは全然なく。身も蓋もない言い方をすると、ぶっ飛んでいた。

さて、このアルバムは1987年リリースとのこと。知らないはずで、日本盤は未リリース。私の持っている’80初頭の4枚は全て日本盤だ。前情報はとうよう師のレビューのみ。ビル・ラズウェルがベースを弾いているとのこと。ビル・ラズウェルは白人JAZZベーシストだが、私が知る限りロック寄りの人で、不安が過るな。聴いてみるか。

Lady Blue (youtube.com)

悪くない。ロックっぽいが、ビル・ラズウェルが思った以上にドローン的に弾いていて出しゃばってないので安心した。’80初頭はアミン・アリという超絶チョッパーベースがボトムを担い、’83の’オッデセイ’でベースレスとし自身のギターの低音部をボトムとした。そして次はビル・ラズウェルか。じゃ、よりアンサンブルが判りやすいインスト曲を。しっかし、この人、歌が好きなんだな。アルバムに必ず3曲くらいは歌ものがある。

Wings (youtube.com)

やはり、ラズウェルのベースがドローン的にボトムを担い、ウルマーのギターはギターらしく上物に徹している。でも私はギターの6弦をダラダラにチューニングした彼独特のドローン奏法が好きなので、やや物足りない。

この後のウルマーは、極断片的にしか知らないが、ブルース基調になっていたと記憶する。やはり’80前半のフリー・パンク・ファンクな4枚が最高だな。昨今は特にベースレストリオ(ギター、ドラム、ヴァイオリン!(感触としてはフィドル))の頃が素晴らしいと思う。まさかこの時期のライブが観られるとは↓蛇足ですが、凄くいいのでオマケです。

James Blood Ulmer - Jazz Jamboree Warsaw 1983 (youtube.com)

 

今日は以上。急に暖かくなり、尚且つ朝は冷え気味で体にこたえるわい。寒暖差はこりごりだぁ・・