M.M.選定アルバムランキング’69~’79を聴いてみる 9位 | 偽クレモンのブログ

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〇9位 スタンド!/スライ&ザ・ファミリー・ストン

 

10位’暴動’、9位’スタンド!’でファミリーストンはフィニッシュ。M.M.誌のライター陣が寄ってたかっての結果としては妥当かな。同誌のR&B担当だけだったら多分、スライ関連は100位にも入らないのでは?と察する。そのわけは、ファミリーストンの音楽性はバンド構成そのままに、黒も白も女も男も無関係な大衆音楽、と言える。だからR&B担当の手には余る。雑多なライターが居るからこそのランキングだろう。そして、’暴動’よりも分かり易い’スタンド!’が上位にいることは、一般的には納得できる。が、個人的には、M.M.だったら’暴動’が上位という結果を期待するなぁ。ま、そりゃいいや。’スタンド!’も大好きだ。

先回書いたように、スライの音は’80に入って、ダチからレコードをまとめ借りすることで初めてまともに聴いた。その時は’暴動’の変態性に引っ掛かりすぎて、’スタンド!’の印象が薄くなっていた感がある。CD全盛になって買い直したのは’暴動’だけだった。しかし9位に’スタンド!’が居ることに気づいて、前年末に晴れてCDで買い直した。めでたし。

 

’スタンド!’は1969年にリリースされたファミリーストン4作目のアルバム。売り上げは、ビルボードで最高13位、R&Bチャートでは3位を記録している。判りにくい’暴動’がビルボードで1位奪取したのは、このアルバムのステップがあったからに相違ない。

この頃のスライは、(たぶん)薬はやってただろうが、まだ人として成り立っていた(?)ので、ファミリーストンはバンドとしてシッカリ機能していたと思われる。それ故、素晴らしいバンドサウンドが心棒として立っているのが’暴動’との大きな違い。その違いに優劣はなく、好き嫌いの範疇だ。じゃ、冒頭のタイトル曲を聴いてみる。

Sly & The Family Stone - Stand! (Official Audio) (youtube.com)

A面1曲目に相応しいパワーみなぎるキャッチーな曲。基本リズムは後打ち2拍子。2拍子はアフロの名残だ!と前回散々とホザいたが、この曲にアフロ臭は希薄だ。その代わり、老若男女黒白マニア素人、全てに響く懐の広さがある。そんな中でも、冒頭の’スタンド!’が半拍食っていたり、Aメロに変拍子が入ったりで、クセ者っぷりは隠せない。後半の変調も乙。できればそのまま4,5分続けてモントゥーノと化してほしかった。

 

続きまして、強烈なタイトルの曲をば。

Don't Call Me Nigger, Whitey (youtube.com)

このタイトルからして歌詞が気になって仕方無いとは思うが、私はサウンド至上の人じゃないですかぁ?(知らんがな!)だからサウンドを先にホザく。Aメロはクセの強いブルージィなフレーズの繰り返しだが、ホーンの入れ方が黒っぽくないのが乙。ヨーロッパ映画っぽいと言うのか、このホーンとスライのワウを通したヴォイスが、只のブラックミュージックから大きくはみ出す要因になっている。そして1;38あたりからの間奏がこの曲で最もツボなポイントだ。スライのワウヴォイスは歌部分から継続して、そこにカウンターでエフェクト無しのヴォイスが被る。そのフレーズが2:15あたりから突然、遠くコンゴはイトゥール森に住むピグミーのコーラスを彷彿とさせるものに変貌するのだ(個人の感覚です)。この時代にピグミーの超絶コーラスが発見されていたかどうか知らないが、なにしろ通常のR&B、ブルースとはかけ離れたフレーズを意識したのは間違いなかろう。そういうところがツボを刺激しまくるのだ。

じゃ、歌詞について。’Don't Call Me Nigger, Whitey、Don't Call Me Whitey、Nigger’の延々の繰り返し。途中一か所だけ、’ある時、他所の街を訪れた。そこで耳にしたのは、互いに罵り合う二人の声、どうにも変わりようのない現実がそこにあった’と歌う。ニガーと呼ぶな!ホワイテイと呼ぶな!の繰り返しは罵り合いを現している。スライは2ndアルバムで、’黒人を憎むな、白人を憎むな’と歌っている。その裏返しで同様のメッセージを伝えたかったのか、あるいは、いくら自分が叫んでも変わらない現実に絶望したか?判らない。 いずれにせよ、この時代、曲に’NIgger’を使った草分けではないかと思う。

 

続きまして、スライの本領であるポップさが炸裂する曲。

Somebody's Watching You (Original) (youtube.com)

良い良い。ポップチューンなのだが、ホーンのループ感のあるフレーズとベーストラックとの位置関係が何か変で、それが’暴動’の変態サウンドに繋がるし、10年後のポストパンクのポップ系のバンドにさえ繋がる。それこそが個人的な最深のツボポイント。スライは時代を超えた異能サウンドクリエイターだ。

 

続きまして、スライ流ファンクとポップス融合トラック。スライ=ファンクというイメージを持つ人も多いようだが、この4thまではそれほどファンクっぽい曲が多いわけではなかった。また、この曲は私世代にはお馴染みのテレビCMに関係深い曲でもある。

Sly & The Family Stone - Everyday People (Official Video) (youtube.com)

ベース、ギター、エレピ(?)によるこれ以上にないシンプルなリフに、いかにもスライらしいポップなホーンアレンジ。ヴォーカルラインもシンプルだか印象深く、ホーンとの絡み具合も実に乙。正に分かり易い変態。そのおかげ、スライ発のシングル全米No.1を獲得した。

歌詞について。Everyday Peopleは、’普通の人々’を意味している。’僕は君より上じゃないし、君は僕より上じゃない。僕らが何をしようと、それは一緒さ’と歌っている。時は、ベトナム戦争は泥沼化、人種闘争も行き詰まり、米は普通じゃない状況の出口が見えない時代。スライのメッセージは一貫していたが、周辺は何も変わらないし、レイシストからバッシングは浴びるしで、結果、心を病んでしまったのだろう。

 

あ、さて、上で日本のテレビCMに関係深いと書いた。日本のマイ・ガールズというユニットの’モーレツのブルース’という曲がある。リンクしようと思ったら現在web上に音がなかったので残念だが、この’モーレツのブルース’が’Everyday People'の見事なパクりなのである。部分部分で日本人が判らないように(?)変えてあるのがまた悪い。で、全然ブルースでもないし。全てに突っ込みどころ満載のアホ曲で、私は大好きだ。あからさまなパクりなのに、堂々と作曲;森岡健一郎、チャーリー石黒、編曲;森岡健一郎、と謳っているのにも感心する。二人とも著名な音楽家である。当時の音楽家はこんなもんだったんだな。

それはさて置き、モーレツのブルースがあの小川ローザさん主演の日石のCMと関係あるのか?不明だ。歌詞に’OH!モーレツ’と出てくるが、歌詞までパクっているのか?あぁ、曲を紹介したい。自分のCDをアップしようかな。でも違法はしたくないな。あ、違法音源をリンクするのも違法か・・・

 

じゃ、今年もよろしく。世界は悲しいことばかりだが、食うためにやることをやらにゃならんし、創作活動は自粛しなくてもいいでしょう。