M.M.選定アルバムランキング’69~’79を聴いてみる 8位 | 偽クレモンのブログ

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〇8位 ジョンの魂/ジョン・レノン

 

私は小五あたりでビートルズに気が付き、中一の七夕で初めてビートルズのレコードを買い、とっくに解散していたのでソロ活動もそろそろ気になりだした中二の頃。適当に流していたAMラジオから、なんかフニャフニャしたボーカルの曲が耳に入ってきた。やたらと軽いメリスマというかスラーというか多用した頼りない歌唱と、浮遊感のあるメロディに引き込まれた。AMラジオ特有の音質のマジックにもかかっていたと思う。演奏後、ジョン・レノンの’ゴッド’という曲だと知った。

 

我が中学は洋楽先進校(在学中はそうは思ってなかったが、後に他校の奴らと付き合う中でそれと知った)で、私の属するコミュニティもほとんどビートリストだった。なので、1枚2500円という中坊にとって殺人的な価格のレコードは、仲間内で分担して購入することになる。ビートルズ名義の分担はひとまず決まり進捗中。さて、メンバーのソロ作をどうするか?のミーティングで、私は真っ先に’ジョンの魂’に手を挙げた。まだ’心の壁、愛の橋’がリリースされたばかりの頃だった。

 

AMラジオで真っ先に’マザー’を聴いた人の衝撃は話で聞いたことはある。私はラジオ初が’GOD’で本当によかったと思う。自宅の家具調ステレオで、ヴォリューム8で、A面に針を落とし、突如意表を突く’ゴィ~ン~~’という鐘の音に首が前に出て停止したのも束の間、♪マザ~♪と始まった時の衝撃たるや。全身に鳥肌が立った。中坊時代に全身鳥肌は何度もあったが、今思えばこれが初鳥だったかな?今は何聴いたって何も立たない。あ~ぁ、脳みそだけでもあの頃に戻りてぇや。

 

ジョンの魂は、1970年にリリースされたジョン・レノンのソロ作。それまでもジョン&ヨーコ名義で迷走したアルバムをリリースしており、これは1stソロ作にあたる。レコーディングはロンドンのEMIスタジオ。ウォール・オブ・サウンドで(個人的に)悪名高きフィル・スペクターを共同プロデュースに招いている。これは意外というか、要らなかったのでは?というか、結果、スペクターは何もしていないのでは?と思えるほど、アルバムはシンプルな渋いサウンドで統一されている。ドラムはリンゴ、ベースはクラウス・ブアマン。スペクター、ビリー・プレストンが一部でピアノを弾いている。じゃ、まずA面1曲目、’マザー’をリンクするか。

Mother (Remastered 2010) (youtube.com)

私は多分、まともにこの曲をレビューできない。中坊の初体験が脳にこびりついているから。若い人が初めてPCとイヤホンでこの曲を聴いてどう感じるのだろうか?3コードで、ドラム・ベース・ピアノの3ピースで、ピアノは1コードにつき1回ジャーンと弾いてるだけで、ベースも同上で。ジョンの歪みに歪んだ心の叫びが今の時代、世代を超えて通じるだろうか?

歌詞は、’お母さん、僕はあなたのものだった、でもあなたは僕のものにはならなかった’で始まる、強烈に哀しいもの。便宜上、簡単に説明すると、ジョンの子供時代、母親は別の男と同棲して育児放棄、父親は遠洋漁業で不在がち→蒸発。ジョンは親戚のミミ叔母さんに育てられた。そしてジョン18歳の時に母親は交通事故死。父親はビートルズが有名になった折に、のこのこ現れたようだが・・・私はビートル本でジョンの生い立ちは知っていたので、一応、ジョンの歌いたいことは判ったつもりだった。私は母子家庭だったのでジョンの1/5くらいは判りたかった・・・いや、判ってなかっただろうな。それでも心に引っ掛かりまくる歌詞ではあった。

随分後に、ジョンが「原初療法」という、精神的なダメージの根源を過去へと探っていき、叫ぶことによってその傷を癒すという治療法を受け、そこで’お母さ~ん!’と泣き叫んだ経験が、この曲の根底にあるとしった。レコーディング前のセッションではまだ治療の名残があり、ジョンが突然叫びだしたり泣き出したりしていたと、参加したリンゴが後に語っている。それらの情報は中坊の頃に知りたかったな。

 

続きまして、私がAMラジオで聴いたジョンのソロのハジ歌。’ゴッド’

God (Remastered 2010) (youtube.com)

ラジオで聴いてフニャフニャした曲だと感じたのは後半2:50あたりからであった。曲は3部構成になっており、中盤の’僕は***を信じない!’の繰り返しで、最後の***が’ビートルズ’であることが当時、随分と話題になっていて、いろんな人がいろんな事を言ったり書いたりしていた。それが衝撃的だったそうな。が、私はそこはどうでもよかった。’ビートルズを信じない’と言われても、あぁそうですか、と思うだけだった。その辺りはリアルにビートルズを体験していない負い目でもあるが、都合よく解釈すれば、’GOD’を純粋に音として楽しめた、ということにする。私は純粋に、当時も今も後半のフニャフニャ部が好きだ。ジョンにしては上手だなと思ったピアノはビリー・プレストンが弾いていたと後にしった。

 

続きまして、マザーショックが一段落した後、一番好きになった曲。’リメンバー’

Remember (Remastered 2010) (youtube.com)

凄くよい。このアルバムで一番、ジョンという人間抜きで楽曲として優れた曲と思う。楽器は3ピースでシンプルだが、いきなりイントロが3拍子という変則。こんな凝ったことはアルバム中唯一だ。構成もAメロとサビとコーダが明確な唯一の曲。それもそのはず、ビートルズ時代には存在していて、確か映画’レット・イット・ビー’でデモを歌うシーンがなかったかな?記憶違いだったらスマソ。今wikiで知ったことだが、この曲のレコーディングの日にジョンは父親と再会していて、原初療法の後遺症(?)でジョンは父親に暴言を吐き、会談は大失敗だったとのこと。ま、原初療法がなくても、ジョンが素直に再開を喜んだとは思えんが。

蛇足中の蛇足:この曲のエンディングは爆発音で終わる。’80年代も半ば頃、この曲を一緒に聴いていた鈴木君がエンディングの爆発音を聴いて、’あぁ感電死した!’と叫んで、二人でガハハと笑いあった。絶対に解説が必要だな。ビートたけし名義の’俺は絶対テクニシャン’という曲がある。殿の初シングルじゃないかな?その中で♪女は痺れ、感電死♪(爆発音)、という部分があったのだ。以上!・・と思ったが、今webで判ったのは、俺は絶対テクニシャンは、作詞:来生えつ子、作曲;遠藤賢二だった(!)。作曲はさて置き、来生えつ子さん大丈夫か?黒歴史か?

【OBK】ビートたけし - 俺は絶対テクニシャン (youtube.com)

 

最後に、M.M.誌の本ランキングのレビューを読むと、’今(2009年)もこのアルバムが全く色あせないのは、ここまで裸になって内面の痛みや葛藤を、ポピュラー音楽の表現という形で、誠実に正直に、かつパワフルに落とし込んだ作品が、現在のところ存在しないからだろう(大意)’と言っている。湯川れい子さんだ。それは湯川さんがビートルズもジョンの魂もリアルに体験しているから言えることではないだろうか?先にも書いたが、今の若い人が純粋に楽曲として聴いた時にどう思うか?どう思おうと関係ないっちゃ関係ないが、自分が全身鳥肌となったアルバムが歴史の狭間に生まれてしまったら、寂しいな。ただ寂しいってだけのことだが。

 

さ、明日から仕事じゃ。食うために働くど!