ダブそのものは好きじゃない でもダブを取り入れた曲は好きだ 5曲 | 偽クレモンのブログ

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先回、レゲエは好きじゃないが、レゲエを取り入れた好きな楽曲を紹介した。レゲエと言えば、次はダブである。ダブとは?元々はレゲエの楽曲に過剰にエフェクトを掛けてリミッックスする手法であった。つまりはレゲエのリミックスである。A面に元歌、B面に同曲のリミックス、というリリースの走りである。1960年代後半からその試みは始まったとのこと。

しかしリミックスすりゃ全てダブって感じになるわけではなく、まずはベースが分厚くモヤモヤした音調であることが条件。黎明期はどうだったか知らんが、何時の間にかそれが最大の特徴になっている。それと、ループエコーの多用。それまではヴォーカルの小節の歌い終わりに掛けるのが関の山だったループエコーを、兎に角常時掛けまくった。あと、全体的にはドラマチックな展開があってはダメで、一貫して揺蕩うループ感が肝である。ま、これは元がレゲエであることの副産物でしょう。

そんなレゲエのレコーディングの遊びから発生したダブだったが、やがてレゲエから独り歩きして、特にベース、ドラムにダブ的なリズム感、フレーズが確立された、と勝手に思っている。

 

そんなわけで、私はやはり真のダブは好きではない。でも、嫌いというほどでもない。元よりサイケ等で使用された過剰なエフェクトは大好きだった。なので、ダブ的な手法を取り入れたロック・ポップスは好きなものが多い。じゃ、私が最初に触れたダブ的なモノとは何だったのか?紐解いてみると、PILだったような気がする。

 

PILは、セックス・ピストルズのヴォーカル、ジョン・ライドンが結成したポストパンクの重要なバンド。1978年にデビュー、1990年代に一旦解散するも、2000年代に入って再開している模様。時代・メンバーによりスタイルをコロコロ変えるバンドだが、2ndアルバムはダブ的要素を取り入れたサウンドを全面展開した傑作アルバムだった。無人島100に選定しているので、その時に紹介した以外の楽曲をリンクする。では、PILの2ndアルバムから、’キャリアリング’をどうぞ。

Public Image Ltd.- Careering - YouTube

良い。でも所謂ダブとはかけ離れている。ベースがダブを更に強調した音調であることが最大の特徴だ。初回、英でリリースされた時のこのアルバムの体裁は、30cm45rpmの3枚組。普通のアルバムは33rpmだ。レコード・テープなどのアナログ音響素材は、回転が早いほど音質が良い。しかも、塩ビの品質保持のために、ジャケットはアルミ製の丸い缶が採用された。上のビデオの画像がそうだ。これは全てダブベースのためと思われる。ジョン・ライドンのヴォーカルを高品質で聴いてもしかたない。なので、この楽曲をPC&イヤホンで聴くのはアーティストの意図を踏みにじるものである。私はリリースされて直ぐ購入し、実家の無駄に出力のでかいナショナル家具調ステレオで聴いたが、それでも最良とは思えない。ジョン・ライドンがこのアルバム、曲に託した真の意味を、多くの一般人はまだ知らないのかもしれない。

 

続きまして、私の時系列でいくとこれ。ザ・ポップ・グループの1stアルバム’Y’に収録された’ウィ・アー・タイム’。既に無人島100で紹介した楽曲だが、こればっかりは生姜ない。

ザ・ポップ・グループは1977年に英のブリストルで結成された、ポストパンクの最重要バンド。私にとってポストパンクとは彼らのことである。シングルでデビューした当初は、シリアスでカッコいいパンク風バンドだった。しかし1stアルバム’Y’で豹変。全編ダブ的手法でグッチャグチャにチャンプルーされたサウンドは、一般には響かなかったかもしれんが、業界、同業者には当時相当な衝撃だったはず。私もぶっ飛んだ。中でも’ウィ・アー・タイム’は核となる曲だ。

’Y’は、レゲエミュージシャンであり、ダブの先駆者でもあるデニス・ヴォーベルのプロデュースである。なので、この曲は実は本当のダブなのかもしれない。レゲエをアレすればあーなるが、ロックをアレすればこうなる、のかもしれない。では、ザ・ポップ・グループの’ウィ・アー・タイム’をどうぞ。

The Pop Group - (1979) - We Are Time - YouTube

良い。良すぎる。安定したリズムセクションの上でヴォーカルとギターが暴れるというのがザ・ポップ・グループの基本だが、その構成がダブと非常に相性が良い。にしても、ドラムが素晴らしい。へ、どこが?と言う奴は語るに落ちん青二才である。派手で高速でぶっ叩けば素晴らしい、ってものではない。ドラマーはブルース・スミス。その実力故、ポップグループの解散後は各方面から引っ張り凧になった。

 

続きまして、ジャマイカ出身でロンドンで活動するリントン・クウェシ・ジョンソン(以下LKJ)。じゃモノホンじゃねぇか?という声が聞こえてくるが、彼の音楽はレゲエともダブとも思えない。

LKJは1952年生まれの詩人である。11才の時にロンドンに移住。ロンドン大学在学中から朗読と音楽のコラボを試みていたとのこと。そして1978年に上記のデニス・ボーヴェルと組んでデビューアルバムをリリース。’ダブ・ポエット’という独自のスタイルを確立した。

紹介するのは1984年のライブ映像。私はこの時期のライブ盤’メイキング・ヒストリー’でLKJを知った。では、そのライブ盤の表題曲をどうぞ。テイクは違う。

Linton Kwesi Johnson - Making History - Live 1984 - YouTube

ドラマーは後ろ姿しか見えないが、たぶんブルース・スミス。サウンドは、エフェクト多用というわけではないが、レゲエとは明らかに異なるダブ的なリズム感だと思う。それが琴線に触れた理由。LKJがどの程度サウンドに関与していたかは不明。

 

続きまして、ぐーんと時代は飛んで2010年。OKI-DUB-AINU-BAND。アイヌのシンガー、トンコリ奏者、プロデューサーであるOKI(本名;加納沖)のバンドだ。OKIは1990年代から音楽活動をしていたようだが、私は2010年にリリースされたアルバム’サハリン・ロック’で初めてその音に触れた。バンド名にDUBが付くくらいなので、そりゃもうダブである。

’サハリン・ロック’の収録曲のほとんどは、アイヌの民謡をダブ的なアレンジでリニューアルしたもの。これが素晴らしい。アイヌの伝統を損なうことなく、ダブにひれ伏すことなく、見事に結婚させている。中でもダブ的に白眉なこの曲、’Topitani’をどうぞ。無人島100で選んだときには収録曲がweb上にほとんど上がってなかったが、効果不効果、全曲上がっていた。

Topitari - YouTube

元よりダブには起承転結や展開は無用ノ介だが、この曲は展開が素晴らしい。ダブ的ループ感を損なわない展開。エフェクトの掛け具合、導入し処、申し分なし。4分10秒があっという間に過ぎていく。もっと聴きたい。10分聴きたい。

アイヌの文化は不勉強でほぼ知らないので、薄っぺらい情報のための情報だが、この曲は釧路の春採アイヌの曲がベースとのこと。にしても、コーラスラインがダブと相性のいいこと。青森以南の民謡ではこうはいかない。アイヌの音とダブの相性がこのアルバム大成功の最大の要因だと分かる曲だ。

 

じゃ、最後。フィッシュマンズ。1991年に出荷物デビューした日本のバンド。彼らのサウンドは、レゲエ・ダブというよりロック・ステディそのものだが、活躍した時代が時代だけに、ダブを通り抜けた関係者も多いと思われ、そこはかとなくダブが醸されている気がする。では、1996年リリースのアルバム’空中キャンプ’から’BABY BLUE’。来週末はいよいよ寒さが本格化するようです。体だけは、気をつけて、ご機嫌よう。

fishmans baby blue - YouTube