エルヴィス・コステロの5曲 | 偽クレモンのブログ

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エルヴィス・コステロは1954年生まれの、アイルランド系英人のシンガー・ソングライター。このブログでほとんど名前を出さないが、私が購入した塩ビのレコード盤で一番枚数が多いのは彼だ(CDは別)。確認したら10枚購入していた。ビートルズ、ツェッペリン、クリムゾン等の中高から聴いているアーティストは仲間とシェアしていたので、個人持ちは少ないのであった。コステロのデビューは1977年なので、歳がバレて都合が悪いが、高1の頃だ。当時はニューウェーブ勢の括りで紹介されていて、存在は知っていたが、周辺にカバーしている奴もいなかった。コステロを発見したのは遅れに遅れて1984年。就職初年度。もちろん、レコードシェアなんてしていない。

 

1984年のある日、下宿だったか実家だったか忘れたが、渋谷陽一氏のラジオでコステロの新譜が紹介された。’グッドバイ・クルエル・ワールド’だ。それまで渋谷氏のラジオでコステロがオンエアーされた記憶はない。氏がなんと評していたかは忘れたが、数曲オンエアーしたので、かなり気に入っていたはずだ。しかしこのアルバムをコステロ本人は酷評しており、’自身のワーストアルバム’とまで言っている。なるほど確かに’80年代の音である。デビューからのコステロの音楽を乱暴に括ると、’パブ・ロック’が適当だ。’パブロック’とは?音楽的な明確な仕様があるわけではなく、英のパブで演奏されるような小規模なR&Rベースのロック、くらいの意。だからこそニューウェーブの括りでも不自然でなかったわけだし。そこへ持ってきて、’80年代の音はいかにも’パブ・ロック’とは対極的。だから本人も、それまでのファンにも、受け入れがたいアルバムだったのだろう。渋谷氏が急に(’急に’というのは私の記憶だが)コステロを取り上げたのも、そして私の琴線に触れたのも、逆に、同じ理由かと思われる。では、その中から1曲。従来のコステロファンが最も嫌う曲と思われる。だからこれがコステロの典型だと思わないようお願いします。超マイナーなR&B曲のカバーのはず。

Elvis Costello & The Attractions - I Wanna Be Loved - YouTube

 

今聴くと、悪くはないが、何故に当時の私がこれを聴いて、このアルバムはもちろん、それまでの全アルバムを買うほどのエモーションを受けたのか?不思議だ。思えば、就職初年度で非常に不安定な心が、コステロが不安定な時期に録音した音に共鳴したのやもしれん。コステロは’80に入り、自身の音楽をどうするか?悩み、また、私生活では離婚調停中だった。そういったアーティストの不安定な時期の作品は、時として得難い乙なモノとなる場合もある。ジョン・レノンのウォールズ&ブシッジズもそうだった。

 

私はその後、先に書いたように、就職による金銭的安定をいいことに一気にコステロのアルバムを集めた。なので物語らしい物語はもうない。時系列で紹介する意味もないが、まずはデビューアルバム’マイ・エイム・イズ・トルー’から。このアルバムには’アリスン’という一般尺度での名曲があるが、私が一番好きなのはこの曲。

Elvis Costello - Less Than Zero (Static Video) - YouTube

’怒れる若者’コステロがこの曲で標的にしたのは、イギリス・ファシスト党を立ち上げたオズワルド・モズレーだった。

 

続きまして、ファンの間でとても評価の高い2ndアルバム’ジス・イヤーズ・モデル’から。 ジャケットカバーも印象的で、いろいろな人がパロっている。

Elvis Costello & The Attractions - Pump It Up - YouTube

映像のバンドは、コステロのバック・バンドとして名高いジ・アトラクションズ。R&Rに’78年当時の新しい感覚を取り入れた、古くて新しい曲。今聴いても非常に乙。いや、一周巡って乙。私の高校時代の体たらくでは琴線に響かなかったことは頷ける、乙なサウンドだ。

 

続きまして、’グッドバイ・クルエル・ワールド’の1枚前で、同じくらい本人と従来のファンから嫌われていたアルバム’パンチ・ザ・クロック’から。

Elvis Costello & The Attractions - Everyday I Write The Book - YouTube

聴いた通り、1st、2ndの曲とは明らかに感触が違う。’80の音で、今聴くと古臭い感じるのは私だけか?キャッチーではあるが奥行きがない、とは当時のコステロの言葉だ。時代は巡る風車。音楽も建築もファッションも。しかし、今聴いて古臭くはあるが、絶妙な臭さと言うか、表面的な音楽にもそれなりの良さがある、と思わせるアルバムだ。そう言えば、渋谷氏がこのアルバムから’シップ・ビルディング’という曲を誉めちぎって、対訳まで紹介していたのを思い出した(前言撤回)。フォークランド紛争を批判した曲だ。他にもサッチャーを痛烈に批判した曲もあった。蛇足でした。

 

最後に、私がコステロに見切りをつけた、最後に購入したアルバム’ブラッド&チョコレート’、のオマケについてたEPから。’ブラック・セイルズ・イン・サンセット’。このアルバムは、’80年代サウンドに見切りをつけ(?)従来のバンドサウンドへ立ち返るべく、小編成によるシンプルなサウンドで構築された原点回避アルバム。なのだが、皮肉にもあの頃へはもう帰れないことを現してしまった、ってところか。

Black Sails In The Sunset - YouTube

 

コステロは現在68才。そろそろ創造活動の限界を迎える(私見の70才限界説)。2022年も意欲的なアルバムをリリースした。まだ老け込んではいない。買わないけど。