マザーテレサいはく、
We shall never know all the good that a simple smile can do.
(単に笑うということが一体どれだけの可能性を秘めているか想像しきれません)
笑う角には福来るとはよく言ったものです。
医学的にも統計的にも笑うことの効用はよく説かれてきました。
笑いと「全死亡」を結びつけるような決定的なエビデンスがあるかどうかはわかりませんが、
部分的には相当な確からしさで語ってよいと感じます。
例えば、笑顔を作ると、ドーパミン系の神経回路に好ましい影響があることがわかっています。
"Embodied Emotion Modulates Neural Signature of Performance Monitoring"
http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0005754
ここで注目すべきは、神経回路に影響を及ぼすのに感情は(あってもよいけど)関係なく、
顔の表情筋の運動として笑顔(のような形)を作るのみでよいということです。
ただし、笑顔を作るというのは非常に高度な運動で(動物の中でも進化したヒトのみが笑う)、
神経回路に好ましい影響を与えるような笑顔の作り方は単純ではありません。
よく美容誌に載っているような
「口角を上げて笑顔を作って幸せになろう」
というのをそのまま信じてはいけません。
ドーパミンの分泌という脳活動の一部分だけを見ても、
分泌に関わる筋肉は特定のものだけということがわかっています。
笑う、あるいは笑顔を作るということは、
自分の体や心のことだけではなく、他人や社会や環境への影響も計りしれません。
脳科学者の池谷裕二先生によれば、他人を笑わせる最も確実な方法は、
自分がケラケラ笑い続けることだったという実験結果があるそうです。
身体的な干渉でも、言語的な働きかけでもなく、笑いこそが笑いを呼ぶのです。
ここで笑いが伝染する仕掛けは、
意識的(ダニエルカーネマンの言うような推論/Reasoning/system2:注)なものではありません。
無意識的/直感/Intuition/system1による、強力でヒトに根源的な仕掛けでもって、
非常に速いスピードで伝染します。
注:「デュアルプロセス理論」 http://en.wikipedia.org/wiki/Dual_process_theory
意識的な「こいつの笑いにはつられないぞ」という抵抗はなかなかしがたいでしょう。
(ただし事前に、こいつは気に入らない奴だな、とか、こいつの笑いには同調したくないね、
といった考えや習慣が埋め込まれていれば別でしょう。)
ただし注意として再びながら、笑顔を作るというのは非常に高度な運動で、
他人に容易に伝染するような笑顔の作り方は単純ではありません。
形としては笑っているような顔の中でも、
作り笑いに気がついて不快感を抱くという経験は誰にでもあることと思います。
ここでも、「作り笑い」と判断しているのは無意識/直感/Intuition/system1です。
笑いが周囲や社会や環境へ影響するということは、
これは自分へと還ってくることも陰に意味します。
まさにマザーテレサの言うWe shall never know all the goodであります。