◆「ソロモンの偽証」は、2015年3月(前篇・事件)4月(後篇・裁判)に公開されました。
監督:成沢出
原作:宮部みゆき(ソロモンの偽証3部作)
脚本:真辺克彦
出演:藤野涼子/板垣瑞生
ジャンル:ミステリー/法廷劇
おすすめ度:★★★★☆75点
お子様:難解かも
<ストーリー>
クリスマスの朝、雪に覆われた中学校の校庭で柏木卓也という14歳の生徒が転落死してしまう。彼の死によって校内にただならぬ緊張感が漂う中、転落死の現場を目にしたという者からの告発状が放たれたことによってマスコミの報道もヒートアップ。さらに、何者かの手による殺人計画の存在がささやかれ、実際に犠牲者が続出してしまう。事件を食い止めようともせず、生徒たちをも守ろうとしない教師たちを見限り、一人の女子生徒が立ち上がる。彼女は学校内裁判を開廷し、真実を暴き出そうとするが……。 シネマトゥデイより
最近見た学園ものといえば、「時をかける少女」では23歳の竹内 涼真や未来から来た21歳の菊池風磨が高校生役をやっていたり、「CROW'S BLOOD」国際ドリー女学園に至っては渡辺麻友(22)柏木由紀(25)横山由依(23)がやっていたり、最悪なことに超厚化粧のキャバクラ学園状態に!
中学校が舞台のこの作品の主要生徒は1998年~2000年生まれでほぼ実年齢に近い役者でオーディションを実施、1万人の応募者の中からしっかり選考います。中には声変わりもしていない男の子も出てきます。監督はあの「孤高のメス」や名作「八日目の蟬」の成島出監督ですので安心して見る事ができます。原作は3部作で合計2190ページの大作で、映画では前篇121分・後篇146分の長編で見応えバッチリです。
ネタバレを含む感想
◆ソロモンの偽証の意味
ソロモンは古代イスラエルの国王で、賢い裁きをする人の象徴で、そんな賢い人の偽証がタイトルとなっています。
◆裁判をすることでいろいろ見えないモノが見えてきた。
・いじめの仕返しとしての偽証(現場を見たという嘘)
・記事ほしさに、事件を煽り立て、無責任に責任追及するマスコミ
・大出俊次のいじめの数々が白昼に晒された
・刑事の慣れ合いの信頼による怠慢調査
・生徒の事を真剣に考えてくれていた津崎正男先生の存在
・覚悟をもって退職をして裁判を支えてくれた北尾先生
・新任教師ゆえに、生徒の顔色を伺い、思うようにならない生徒が死んで安心した森内先生
・暴力や内申書を盾に裁判を阻止しようとした先生
などなど、生徒たちが大人に頼らず、自分たちの力で裁判を起こし、裁判の中で問題点を洗い出し、トラウマを解決し乗り越え成長していくところが、この作品の最大の見どころとなっています。
「心の声に蓋をすれば、自分の見たいものしか見えなくなるし 信じたいことしか信じられなくなる」 防衛大臣・余貴美子・・もとい・・現代の校長先生の言葉
◆真犯人
柏木の死体が見つかってから、いろいろ事件が起きました。先生は3人退職し、三宅樹里と浅井松子も嘘の目撃情報をばらまくことはなかったし、松子においては交通事故で亡くなっています。もし、神原和彦が真相を早い段階で告白していたら、こんな不必要な犠牲を出さずに済みました。そもそも何故裁判まで起こして最後の最後に事件の真相を語ったのか?自分を有罪にして欲しいという願いでしたが、結局は裁かれませんでした。早々と自首すれば良かったのですが、それもしませんでした。
タイトルはソロモンの偽証で、賢い人が偽証するということなのですが、それに当てはまるようなそれらしき賢い人の偽証はありませんでした。そこで考えたのは、もし、柏木卓也を神原和彦が突き落としていたら?当然、死亡翌日にその場で自首すれば有罪になります。もし、このような大それた裁判を計画しうまく逃げ延びたとしたら?もしそうならこれこそが罪を逃れるための賢い人の偽証ではないでしょうか?裁判自体が偽証のために仕組まれたものなら?ミステリー作品としての落とし所としてはなかなか良いところをついていると思いました。
※私はそう思っただけなので違うかもしれません。ちがっていたらごめんなさい。
◆演技
主人公の藤野涼子さんは、エキストラぐらいしかやったことがない俳優さんだったそうですが、最後までブレずにほぼ地でよく演じていたとおもいます。成人した涼子さんを演じたのは尾野真千子さんでしたがどちらかと言うと蒼井優のほうが成長した顔が似ていると思いました。
ニキビの三宅樹里役の石井杏奈さんも上手でしたが、イジメられるシーンでは叩かれたり、顔踏んづけられたりして可哀想でした。同情するほどの演技を披露していました。監督は演技で選んだのですが後からE-girlsのメンバーだと知ったそうです。因みにニキビは特殊メイクです。
子供たちの演技を見ているだけでも満足できましたし、今後が楽しみですね。
大人役の俳優は演技力バッチリのいぶし銀のベテランさんばかりでした。
◆八日目の蟬
興味深いところでは同監督作品の「八日目の蟬」の因縁のふたり、森口瑤子・ 永作 博美さんが、またしても母親役で出演していますね。
◆その他
興行収入は前篇・後篇で合わせて約13億円ですが、全然おもしろくなかった「信長協奏曲」が4週目に32億円以上の収入をあげています。テレビと連動しているのが理由でしょうが、映画の出来はただのファンムービーレベルです。このような力作こそがもっと売上があがって欲しいところです。