Breaking Badは2008年1月~2013年9月までAMCにより放送されたアメリカのドラマ
製作総指揮:ヴィンス・ギリガン
出演者:ブライアン・クラストン
ジャンル:サスペンス/ブラックコメディ
全5シーズン62エピソード完結
おすすめ度★★★★★ 星5つ95点! 麻薬製造にとりつかれる男を描いたドラマ。
海外版イヤミス
※2016年6月現在 Netflixにて全話見れます。
このドラマからのスピンオフ作品「ベターコール・ソウル」はNetflixのオリジナル作品です。
<ストーリー>
舞台はアメリカ南部のニューメキシコ
温厚で真面目な性格の高校の化学教師ウォルター・ホワイト(ブライアン・クラストン)は妻スカイラーと息子のフリンと平穏な生活をしていた。プール付きの邸宅に暮らしているが余裕など無く洗車のアルバイトを掛け持ちしていた。
ある日義弟であり麻薬取締局(DEA)のハンク・シュレイダーと共に麻薬取締でメス製造の現場を見学するが、その最中取締の現場から逃げようとする犯人をみつけ遭遇していまう。その犯人は偶然にもかつての教え子ジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)であったが逃がしてしまう。ジェシーは「キャプテン・クック」と名乗りメスの製造を行っていた。
やがてウォルターに癌が見つかり末期だと診断される、多額の治療費が必要になる。その一方で奥さんスカイラーのお腹には新しい生命が宿っている。息子は脳性麻痺のため、軽度の言語症と松葉杖を必要とする運動機能の障害を抱えている。切迫する家計を案じるウォルターは何を考えたのか、ジェシー・ピンクマンと一緒にメスの製造に踏み切る。 (半)
◆埋もれた名作ドラマ
あまり日本では話題になっていない作品でも本国では大人気の作品は多くありますが、この作品もそのうちの1つで、私もヤフー知恵袋などでお勧めTVドラマで話題になっていましたのでいつか視聴したいと思っていましたがHuluではすでに配信が終了しており、仕方ないのでNetflixの契約をしました。
・ブライアン・クラストン エミー賞主演 4度連続獲得
・アーロン・ポール エミー賞助演男優賞 3度獲得
・作品賞5度ノミネート2度受賞
◆回を重ねるごとに評価があがる
シーズン1が7話なので、シーズン5で完結なので全35話かと思いながら鑑賞していましたが、甘かった・・・・途中で人気になったのかシーズン2から4までは13話、シーズン5は16話でした。
これだけ話が長くなっているにもかかわらず中だるみも少なく、批評サイトでの点数はシーズン1から順に74点85点89点96点99点とどんどん評価を上げており最後まで面白いことが分かります。
◆見どころ
死期が迫っており、家族の危機を救う目的のため危ない橋を渡ろうとするウォルターですが、彼は化学者で今は高校教師ですので裏の世界のことなどは全く無知です。頼りはジェシーだけですが、彼はすでにジャンキーであり、短気で物事を短絡的に考え目先のことばかり気にしますので、冷静で抜目のないウォルターとは正反対ですから、うまくいくはずがなく様々な対立が起きます。やがて嫌でも裏社会のどす黒い世界に巻き込まれていきます。そんな中で家族や友人には当然メスを作っていること等言えるはずがないので嘘に嘘を重ねながらも周囲を徐々に巻き込んでいきます。
主人公が学校ではうだつのあがらない普通の高校教師という設定がなかなかおもしろいと感じました。また化学者としての知識をフル活用して戦います。
◆メスとは
メタンフェタミンの事で米国ではメスと呼ばれ「最も危険なドラッグ」とされています。
日本ではシャブやスピードと呼ばれており覚せい剤に指定されています。
1893年(明治26年)日本の薬学者・長井長義によりエフェドリンから合成されて生まれ、1919年(大正8年)緒方章がその結晶化に成功しました。
中枢神経を刺激して覚醒させる作用があるため、うつ病・精神病などの虚脱状態や各種の昏睡・嗜眠状態などの改善・回復に用いられます。医薬品の商品名としてはヒロポン。
風邪薬にその成分が含まれているためある程度の知識があれば簡単にその成分を取り出すことができるそうです。
◆Breaking Badの意味
このタイトルを考案したヴィンス・ギリガンは「to break bad」は「to raise hell(大騒ぎする、わめき散らす)」という意味で南部のスラングを使いました。
※ドラマ中ではジェシーのセリフで「道を外す」と訳されていました。
◆保険制度のない国アメリカ
日本のように国による健康保険制度がありませんので、いざ病気になると莫大な治療費が必要になります。お金がある人は民間の保険に入ることができます。そのことが貧富の格差の原因や犯罪につながっています。又、メスは長時間労働をする人たちの間でかなり広がっています。
貧乏→掛け持ちによる長時間労働→メス依存→体を壊す→医療費が高くて払えない→犯罪にはしる。
ですから、このドラマはアメリカ人にとってはかなり身近なことのように感じられるドラマみたいです。
オバマ大統領がオバマケアという政策を打ち進めていますが、トランプはこのような貧乏人を救うような政策を潰そうとしています。
◆ネタバレを含む感想 鑑賞後見てね!
最初は生活苦と死期が間近という事で、ウォルターに感情移入をしながら見ていたのですが、グスタボ・”ガス”・フリングを殺すところで一件落着かとおもいきや、ウォルターはすでに味をしめていて、もう簡単にはやめられなくなっていました。
ここからは新しい章となり、マフィアのボス的な存在に登りつめていく様子が描かれて行きます。
しかしウォルターを応援する気持ちがすでになくなってきますので、呆れながらウォルターを見ることになります。悪人が主人公のドラマになるのですから。
ウォルターは不幸菌を次々と周囲に撒き散らし続けます。ウォルターと接した人は殆どが不幸のどん底に落ちていくか、死亡します。
huluのドラマ「フジコ」と似た感想をもちました。最初は幸せになりたい一心で犯行を重ねて行きますが、その境遇などから視聴者にはフジコに対する同情心が残っているのですが、途中から平然と殺人を重ねていくフジコと付き合うこととなり、同情心がまったくなくなっていき嫌悪感に変わっていきます。そして最後までフジコの無様になるであろう終わりを見届けなくてはならないという気持ちになります。
ブレイキング・バッドもこのパターンなのですが、ウォルターをどの立ち位置で鑑賞したらよいのかわけがわからなくなってきます。何度も「やめてくれ」と思いながらウォルターを見ることになります。ピンクマンは最初嫌いだったのですが、ウォルターの方がよほど最低人間になり、最後にはピンクマンにさえ同情するようになりました。
なんで、見てしまうのか本当に訳の分からない不思議な魅力がある作品です。
面白いことに批評サイトでは後半になるにつれ評価が上がっていきます。つまり悪いウォルターの方が世間は魅力的なのだと思いました。
恐らく悪に染まったウォルターの着地地点(死に様)に興味が向き、最後まで見届けようという思いになったのだと思います。
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◆好きなキャラクター
やはり、ハンク・シュレイダーですかね?唯一のこの作品の正義の象徴でした。自分を大きく見せようとするきらいはありましたけど。
まさかの死亡はちょっとショックでした。ただ、この場面でのウォルターが全財産を投げ打ってでもハンクを殺さないでくれと叫ぶところはやはりウォルターにとってハンクは大切な人だったのでしょう。堕ちていくウォルターが見せてくれた救いの部分でもありました。
◆好きなシーン
S1の1話、ベットでラップトップ片手にネットオークションしながら旦那をしごく場面w
思わず笑ってしまいました。なんか、ありがちな夫婦生活の日常で微笑ましくなりました。