ギヴァー 記憶を注ぐ者 2014年公開
監督 フィリップ・ノイス
制作 ジェフ・ブリッジス
出演者 ブレントン・スウェイツ メリル・ストリープ ジェフ・ブリッジス
原作 ロイス・ローリーの児童文学『ザ・ギバー 記憶を伝える者』
おすすめ度 ★★★★☆ 70点 理想社会はまやかしか?
<ストーリー>
近未来。人々は争いのない平和な理想郷「コミュニティー」で生活を送っていた。そこは徹底した管理社会であり、職業等は全て長老委員会が決定し、人々は投薬によって感情や感覚を抑制されて生きていた。wikiより
最近はすっかりhuluなどのインターネットでの映画鑑賞が多いのですが、久々にツタヤに行って大量にレンタルしてきました。
私はテーマがはっきりした作品が好きです。
何をいいたいのか分からない作品や、鑑賞後に何も残らない作品が多いです。
過去に鑑賞した作品のタイトルをみて、そのストーリーが思い出せない作品が多い中、この作品は、完成度は高くないですがきっと一度見たら忘れられない力があるような気がします。
映画ではまず、差別のない平等な理想的な住人達のコミュニティーを描いています。
どんな状態なのかワクワクしますね。
究極の社会主義なのでしょうか?
こんな、理想的な社会なら悪いことは何も無いように感じます。
人々は同じ時間に起きて寝て同じ食事、レクレーションの時間や乗り物(自転車)まで同じ。
仕事もその人の適正で選ばれます。就職活動無しの世の中。
ほとんど悩み事や争いごとのない理想的な社会のようで、一見していい事だらけのような気がします。
この作品は白黒で始まるのですが、多くの映画は過去の記憶の回想シーンなどに現在との対比として白黒が使われることが多いのですが、ここではなんと住人から見る世界は色彩のない世界なのです。いわゆる色盲状態で、リンゴは赤ではなく灰色の食べ物なのです。
その目的は、肌の色で人種差別をしないように管理されているからです。
この社会ではいわゆる歴史という教科書がなく、人類の歴史を一般住民が知ることはなく、知るよしもありません。住民たちは今だけを生きているのです。音楽など意識を高揚させものも住民には教えていないので知りません。
しかし、こんな社会でも一人だけは、歴史を知る者としてレシーヴァーをおいています。
これは過去の歴史を学び誤った歴史が繰り返されないように監視人のような立場で一人だけコミュニティーから例外としている存在です。
主人公の青年はそのレシーヴァーから記憶を受け継ぐ人として選ばれます。
理想的な社会に住む一人の青年が、人類の過去の歴史を知ってしまったらどうなるのか?
この映画の見どころです。
◆配役
俳優陣は超名優のメリル・ストリーブやジェフ・ブリッジス(製作者でもある)等が出演していますが、俳優による登場人物の差別化が計れたかは疑問ですが安心の演技で主人公の脇を固めています。
実はメリルが出演していることもこの作品をレンタルする決定打でした。
テイラー・スウィフトもチョイ役出演しています。
主人公もヒロインも、なんというか、こんな社会に生きている人らしい純真無垢な人柄の役者を起用していてとても良かったです。
インタビューの後に作品紹介がありますが、ほとんどネタバレなので見ないほうが良いかと思います。
◆感想(ネタバレを含む)
人間の本来もっている、残酷性や差別意識などを極力排除して、ここでの理想的な世界が作られるわけですが、結果的に出来上がった世界は、色のない、感情の起伏がない、愛の無き世界となってしまいました。
今の世の中は、貧富の差が激しく、戦争があり、人種差別あり、宗教差別があり、多くの自殺者で溢れかえっています。生きるのは決して楽なことではなくかなり厳しい世の中です。
しかしながら、そんな世の中でも人々は自由に愛し合うことができ、血縁関係の家族をもて、世の中は芸術で溢れています。
どちらの世界が良いのか考えさせられますね。
人を殺すことを開放と呼び善悪の感情を持たぬままそれを成し遂げる様はどこぞの宗教団体のようで背筋がゾッとしました。
両方の世界を比べると今の世の中のいいところや悪いところが見えてくるかもしれませんね。
その理想世界では、ただ生きているだけで、面白みや味気ない世界で、そんな人生に何の意味があるのかよくわかりませんし、音楽のない世界はありえませんw
作品中でも「感情を持てないなら、生きてる意味はないよ。」というジョナスの発言や
「痛みのない人生に、本当の価値はない。」というギヴァーの発言からもこの作者の訴えかけたい最大のポイントだったのではないでしょうか。
題材は良いのですが、なんか強く訴える何かガツンと来るものがなかったような気がします。
恐らく、原作が児童文学であり、悪者がいない善意の世界だからなのかも知れませんね。
もう少し児童文学から脱却して脚本を練り上げればすばらし作品になったと思うので少し残念ですが、ジェフ・ブリッジスのインタビューでも「原作を大切にしたかった」という発言からもわかるように原作にこだわってしまったので中途半端な印象になったのかもしれません。
◆疑問点
●コミュニティーの崖の高さは目算で50m位の高さがありそうだけど何故飛び降りて助かったのか?ファンタジー?
●境界線を越えたところに何故民家があるのか?
●境界線を越えると何故、コミュニティーに変化が訪れたのか?
△理想郷を囲む高い塔を越え、塔から発信されている「思考を妨げる電波」を遮断することだった。