映画    ブラインドネス  2008年公開  | 半兵衛のブログ

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監督 フェルナンド・メイレレス  2008年公開
原作 ジョゼ・サラマーゴ「白の闇」

★★★★☆ 星4つ お勧め!


<ストーリー>
ある日、運転中の日本人男性(伊勢谷友介)の目が突然見えなくな

る。普通は失明すると暗くなるはずが、視界が白い光で溢れたよう

になるという症状で、男性は通りがかりの人(ドン・マッケラー)

に助けられてなんとか帰宅し、翌日眼科に向かう。

診察に訪れた病院の眼科医(マーク・ラファロ)には原因が全く分

からない。しかも、翌日の朝になってみると、眼科医の目も見えな

くなっていた。眼科医だけでなく病院の待合室に同席した人々など

、日本人男性と触れ合った人々が次々に失明していき、同じ症状を

持つものが爆発的に広がっていく。

ただ一人、眼科医の妻(ジュリアン・ムーア)だけは症状を持つ人

々を触れ合っても失明が始まらなかった。 政府は深刻な感染症だ

と判断し、感染したとおぼしき人々を隔離することに決定。眼科医

の妻も失明したように装い、夫と共に収容所に入る。

失明した人々ばかりが集まる収容所では、衛生状態の悪化・収容人

数の増加による食糧の不足・管理側の軍の非協力など様々な問題が

起こる。                          ウィキぺディアより


<キャスティング>

眼科医の妻        ジュリアン・ムーア 
眼科医           マーク・ラファロ 
失明した日本人男性  伊勢谷右介
その妻           木村佳乃
黒い眼帯の老人     ダニー・グローヴァー


何の予備知識もなく、期待しないで見ましたが、見事に期待が裏切られました・・・・・・・とてもよく出来たお勧めの作品です。


何といっても先の見えない極限状態に追い込まれた人々の行動や廃退していく様子が主人公の目を通して克明に描かれています。そして、主人公自身も例外ではありません。
私はこの手の作品が好きで、ゾンビの監督で有名なジョージ・A・ロメロの作品と共通する点が多々あると思います。
このような極限状態では、どんなに、金銭、地位、名誉のある人でも今まで働いていたモラルや理性は失われ、かぶっていた仮面を脱ぎ捨て、エゴ丸出しになってしまうからです。

人間の本性は、善か悪か?極限の状況だからこそ、見えてくるものがあるのだと思います。

この映画のような状況に追い込まれたときに、自分だったらどうするだろう?と、考えながら、登場人物と照らし合わせながら見るのも楽しいかもしれませんね?私もこのような状況に追い込まれたら、自分自身どのような行動に出るか?想像もつかないので、とても興味があります。

ロメロはゾンビを使って人間のエゴを上手に見せますが、フェルナンド・メイレレス監督は全員が盲目になってしまう事で、ゾンビなどの怪物を使う事無く、とても斬新な方法で極限状態を見せてくれます。


何故、突然盲目になり感染するのか?

作品の中では何も追及されませんが、私が思うに、ある意味エイズのように、

「神様が人間に与えた試練であり、自分たちの本当の姿がその鏡に映し出される」ような感じを受けました。


フェルナンド・メイレレス監督:

「この映画はあらゆる危機の中で何を学び、何ができるか、何を変えていけるかを考えてご覧ください。 」


半兵衛のブログ-burainndo
































ここからネタばれ・・・・注意!!!!




特にびっくりしたのは、3日間食料を口にしていない人に、食料をあげるから女を差しだせと命令されて、夫がそこにいるにもかかわらず、妻自らの意思で体を差しだすシーンです.。
背に腹は代えられぬという事でしょうか?とてもショッキングでした。
人間としての尊厳より、食べるものが重要ということでしょう・・そして、ある意味えげつなく女性のしたたかさまでも見せてくれます。

このシーンはとても興味深い疑問を投げかけたと思いました。
これを見た女性の方に、あなたならどうする?と、聞いてみたいです。
逆に私が夫の立場でそれを認めるかというと、飢え死にするより、生きていてもらいたいから、赦してしまうと思います。
この様なシーンは今まで、どんな映画でも見たことがなく、この場面だけでも、見る価値のある映画だと思います。


そして主人公の女性だけが、目が見えているのですが、最初は夫の為に、徐々に周りの人たちのために正義を貫こうと必死になるのですが、周りの状況の変化により、自身もだんだんと精神が蝕まれていく様子が、克明に描かれています。

前述の、背に腹を変えられぬの時は目が見えるのにも関わらず、体を許してしまうことや、
収容施設を脱出後に、町中、盲人であふれかえっている中で、食べ物を探すのですが、自分だけ眼が見える事をいいことに、スーパーの地下に侵入し、食品を袋に詰め、飢える盲人達が匂いを嗅ぎつけ、死に物狂いで、主人公から食料を奪おうとするのを払いのけて、スーパーから脱出するシーンでは、町中の飢えている人等は生きようが死のうが、どうでもよく、自分や仲間さえよければいい、状態になっています。


<演技>
主役のジュリアン・ムーアは今までアカデミー賞に4度ノミネートされている実力派なので安心して見てられました。

シャワーを浴びる女たちの裸のシーンで、ジュリアン・ムーアを始め、出演者が裸体をさらしています。
映画の為なら裸体もさらす、根性はすごいと思います
木村佳乃さんも一緒にシャワー浴びているのに、声と後ろ姿だけの出演ですw
日本人役者頑張らんかい!と、声を大にして言いたいです。
役者根性負けてるじゃないか!
そんな半端な気持ちなら、日本の役者がなめられるので、出ないで欲しいと思いました。
すごく残念です。

「え?お前は裸が見たかっただけだろ?」と突っ込まれそうですが
実はそのとうりです。・・・佳乃さんごめんなさい。


<作者の伝えたかった事>
アブラハムに自分の子供をいけにえにささげよと、神が試練を与えたときと似ている感じがしました。

疑心暗鬼のまま息子の命を奪おうとするその時に、実は信仰を試すための試練だったと神はアブラハムに語り、息子は死ぬ事はありませんでした。

この映画も結局は、一過性の盲目状態だったのですが、最初からそうなる事が分かっていたらきっと、争う事なく、うまくやっていけたのかも知れません。しかし、その事が分らなかったからこそ、エゴが丸出しになってしまったのだとおもいます。

失明した日本人男性が盲目状態から治り一言「俺たちは、一番大切なことが見えていなかったのかもしれない」といいますが、まさに、この映画で作者が伝えたかった事なのではないでしょうか?


しかしよく考えてみたら、現実の世界に盲目の人も沢山存在するわけです、
この映画では盲人パニックを描いていますが、盲人にする事でパニックを描いているわけですから、
ある意味、実際の盲人の人たちにはちょっと失礼な設定かも知れませんね。