映画 明日の記憶
監督 堤幸彦 主演 渡辺謙 樋口可南子ほか
原作 荻原浩
★★★★☆ 星4つ
ストーリー
家庭も省みず仕事に生きる49歳、広告代理店のやり手営業マン、佐伯雅行。仕事においては大きなクライアントとの契約が決まり、プライベートにおいては娘の結婚が決まる、と順風満帆に見えた彼を突如、物忘れが激しくなる、めまい、幻覚といった不可解な体調不良が襲う。
妻・枝実子に促され、しぶしぶ忙しい仕事の合間を縫って病院を訪れ診察を受けた結果、医師から若年性アルツハイマー病という診断を下される。知らないうちに自分の体内で起こっていた受け止めがたい現実に直面した彼は、錯乱し自暴自棄になり、病院の屋上から飛び降りようとするが、医師の必死の説得により何とか思いとどまる。そして屋上から階下へ戻る階段の途中で座り込み、枝実子と話し合い、二人は涙を流しながらも病気と向き合う覚悟を決める。 ウィキペディアより
以下感想 ネタばれ注意・・・・・・
ヘビーなエンターテーメントのかけらもない作品だからこそ、じっくりと考えてしまう良作だと思います。
<いとも簡単に切り捨てる会社>
会社で一番出来る男でも、使えないと分かった瞬間
冷酷にも切り捨てにかかる・・・
きれいごとではない、クールな会社
会社は利益を追求する場所なので仕方ない
これでいいとは思わないが、現代の社会を象徴していると思う。
そしてこのような残酷さがこの物語を盛り上げる要素の一つなのかも知れない。
なにより、潔く辞表を書いたのは、本人の意思に他ならない。
しかしその中にあっても
部下たちが尊敬の念を込めての送り出しのシーンは救いの部分でした。
<救いはあったか?>
いっけんすると、救いようのない作品と思われますが、
一流企業に就職し、部長になり、結婚をしマイホームを持ちそして、娘の結婚、孫の誕生と・・・・
49歳といえば、人生の半ばかも知れませんが、ほぼ、人生で体験できる大半のイベントを経験しています。
この作品と似た作品に「1ℓの涙」があります。
こちらは、人生これからの少女が難病の脳の病気にかかり、生きたくても、生きていけないというものです。
主人公を対比して考えると、「1ℓの涙」のほうがよほど残酷に思えてなりません。
<山中でのシーン>
アルツハイマーの後期と言えるような時期に
1人、電車を乗り継ぎ、山中をたどたどしく歩きだすシーン・・・
一瞬、徘徊かと思わせるシーンですが
炭焼き小屋に到着すると、ハッと思わされました。
そこは、かつて、妻枝実子との出会いの地でありました。
実に明確な意思があったのです。
主人公の最後の旅とも言えるその目的は
「かつての陶芸の先生にコップを焼いてもらうこと」
このシーンは実に大切なシーンでした。
自分が生きてきた証をコップに刻みつける事
野焼きでコップのとっては取れてしまいましたが、そこに刻まれた文字こそが、妻への感謝のしるしであり、生きてきたことの証なのです。
<この映画が伝えたかった事>
アルツハイマー病により、目茶苦茶になってしまった、家庭を克明に描いています。また、病気はこんなに恐ろしいのだと言うアルツハイマー病の事もよくわかりました。
しかし、一番伝えたかった事は、この様な絶望的な状況になった時に見せる夫婦の愛や絆だと思います。
救いようのない病気になってしまった時に、あなたの連れはちゃんと最後まで面倒見てくれますか?
こんな絶望的な状況になった時にこそ、今まで培われた夫婦の絆、愛の深さが、量られ、そして試されるのです。
それが、仮面夫婦であれば、離婚のチャンス到来かもしれませんね
しかし、こんなにも献身的に家事に、仕事に、介護に尽くす奥さんは、十分愛されいたに違いありません。
そして、この映画では、きっちりと夫婦愛が描かれていたと思います。
自分たちの夫婦の事を考える、大きなチャンスかもしれません。