ジョンとヨーコには離婚の危機があり、俗に言う、失われた週末と呼ばれている18か月の別居生活です。
ヨーコのそばで泥酔して、過ちを犯してしまったジョンを許せないヨーコが、ジョンを遠ざけていました。
この時期のジョンは荒れていて、ミュージシャン仲間と毎晩のようにアルコール漬け、ドラッグ漬けの自暴自棄の毎日を過ごしており、酒場で暴れまわった事件などが報道されていました。
そんな時期にレコーディングされたのが、1974年に発売されたアルバムWalls and Bridges(心の壁、愛の橋)です。ヨーコ抜きの完全ソロ作品で、落ち込みの絶頂で作られた作品です。
皮肉なことに、このアルバムはヒットし、全米一位を記録、また、シングルカットされた真夜中を突っ走れも、ナンバーワンヒットを記録しています。
意外と思われるかも知れませんが、ジョンの曲はナンバーワンヒットがあまりありませんでした。
理由は、コマーシャルな曲をジョンは書かなかったのですが、このアルバムは、かなり売ることを意識した、コマーシャルな作りになっています。それまでの政治的な内容は皆無です。
そんなアルバムの最後のほうに入っているのが、今回紹介するフルオーケストラアレンジした作品で、Nobody Loves You (When You're Down And Out) です。
「君が落ち込んでいる時は、だれも君の事を見向きもしない・・・」
これは第三者に発せられたメッセージだと、一見思えますが、紛れもなくジョン自らに向けた、自虐的なメッセージです。
かつて、「ビートルズは、夢枕であり、全ては現実ではなく」というような発言がありましたが、・・・この曲の中では、しょせんショービジネスさ・・と言っています。
ソロになったジョンはイマジンを発表した頃に「これからの僕の作品に本当の自分の姿がある」といい、すべてをさらけ出していましたが、「結局僕のやってきた事はショービジネスにすぎない」と、言っているようです。
表の世界(ショービジネス)で、すべてをされけ出したジョンには、この絶望していた時期には光は見えていなかったようですね。
John Lennon Nobody Loves You (when you're down and out) (acoustic version)
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Nobody Love you (When You're Down And Out)
落ちぶれ果てた時、誰もあなたを愛さない
有頂天になっている時、誰もあなたを愛してはくれない
誰もが、金儲けにあくせくしている時に
僕たちは、お互いに助けあっていこう
僕は向こう側に行ってきた
僕は、君に全てを見せた もう隠しごとなどなにもないんだよ
なのに君は 「愛してる?」って尋ねる・・・
何故なんだい?
僕に言える事はただ一つ この世はショウビジネスさ
僕に言える事はただ一つ この世はショウビジネスさ
打ちひしがれて落ち込んでいる時には、誰も君を愛してはくれない
有頂天になっている時には、誰も君を愛してくれない・・・
皆が小銭を稼ごうとあがいている
僕が君の背中をかくと、君はナイフを差し出す
僕は何度も海を渡って行った
片目の魔法使いが 盲人を導いているところを見てきた
なのに、君は「愛してる?」って尋ねる・・・
なぜ、そんなことを言うんだい?
指を触れるたびに それはすり抜けていく
指を触れるたびに それはすり抜けていく
朝まだ暗いうちに起きて、鏡をのぞきこむ
そして、再び暗闇に身をまかせる
もう、とても眠れそうにもない
歳をとって白髪になると、誰も君を愛してくれやしない
動転している時 誰も君を必要とはしない
誰もが、自分の誕生日を気にしている
君が、6フィート地下深くに眠るときに、誰もが君を愛してくるだろう
訳:半兵衛
※六フィート地中深くの意味は 死後の埋葬の意味
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ところで、腐っても鯛という言葉がありますが
ジョンに関しては、腐っていてもジョン・・・と 言いたいですw
それほどまでに、素晴らしい作品になっています。
また、君が死んだら愛してくれる・・・のくだりは
よくジョンは、死んであがめられるのは愚かなことだ
僕は、死より生きることを望む・・・といっていました。
そして、”ブレス・ユー”では、会えないヨーコに、
「君がどこに居ようとも・・・・君に幸あれ・・・」と ヨーコの幸せを願っている、優しいジョンがいます。
切ないですね・・・・・
John Lennon - Bless You
本当にどこまでも、人間臭い男ジョンが大好きです。
