2015年11月 1日(日)
開場14:15 開演15:00
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
Daniel Harding 指揮

Debussy - 組曲『ペレアスとメリザンド』
Berlioz - 幻想交響曲 作品14

ダニエル・ハーディングを迎えてのPACオーケストラ定期公演はフランス物でのプログラムでした。
ハーディングにフランス物というイメージは私にはなかったのですが、滅多に聴く事のないドビュッシー唯一のオペラ『ペレアスとメリザンド』をオーストリア出身の指揮者、エーリヒ・ラインスドルフ(Erich Leinsdorf 1912-199)が編曲したものを取り入れるなど、意欲的とも言えます。

とはいえ、その『ペレアスとメリザンド』はドビュッシー独特の冗長な雰囲気が終始支配的で、楽曲としては面白みに欠けるように私には思えました。
たゆたう雰囲気の中に、何かを見つけられれば良いものの、元々フランス物が好みではない私にとっては、繊細な音の出だしが完璧には合わないオーケストラの綻びばかりが気になってしまいました。

メインの幻想交響曲は、私も聴きなれた楽曲です。
アゴーギク’(テンポやリズムを意図的に変化させることで行う、音楽上の表現)やデュナーミク(音の強弱の変化ないし対比による音楽表現)を比較的積極的に用いるハーディングの解釈を、オーケストラのメンバーは忠実に現実の『音』としているように感じられる演奏でした。
繊細さが美しさに結びつく弦楽陣、今年もPACオケの弦楽陣には不足を感じない感触がありました。
木管群が活躍もする楽曲でもありますが、その音色はCDで聴く海外一流オケのものと比べると遜色こそあるものの、丁寧さや情感の高さは引けを取らない演奏だったと感じます。
そして今季は金管群も立派な響きで破たんを見せない完成度でした。

個人的には幻想交響曲はミンシュ&ボストン響の有名な1962年の演奏が強く印象に残っているため、ハーディングの繊細で少しミニチュアっぽい表現は、好みとは言えません。
それでも今後のPACオケの定期演奏会が楽しみになる演奏を聴かせてくれたと思います。

決して長いプログラムではなかったのですが、アンコールはありませんでした。
 

2015年 9月13日(日)
開場14:15 開演15:00
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
佐渡 裕 指揮

Haydn - 交響曲 第 7番 ハ長調 Hob.I:7 『昼』
Beethoven - ピアノ協奏曲 第 4番 ト長調 作品58
小林 愛実 (p)
Stravinsky - バレエ音楽『春の祭典』

2015-16シーズンの開幕定期演奏会は、『春の祭典』をメインに据えた意欲的なプログラムでした。

まずは古典派保守本流、ハイドンの『昼』でしたが、私は初めて聴く楽曲、事前の佐渡さんのお話にもありましたが、交響曲でありながら、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、フルートがソロとして、或いはデュエットとして活躍する楽しい楽曲でした。
特に第2楽章のヴァイオリンとチェロとの二重奏はとても素晴らしく、チェロはケルン放送交響楽団のソロ主席との事でしたが、流石の演奏でした。
第3楽章のコントラバスのソロもイェーテボリ交響楽団からのゲスト・プレイヤーでしたが、こちらは今一歩だったかも知れません。
第4楽章のフルートソロは、PACオケのメンバーのようでしたが、とても高い技術を感じました。

19歳の新進気鋭の女性ピアニスト、小林 愛美さんをソリストに迎えてのベートーヴェンの第4協奏曲、少し小粒な印象のあるピアノながら、その技術に淀みはなく、若さが至らなさに結びつかない立派な演奏だったと思います。
ただ、ベートーヴェンの楽曲としては、やはり力感に物足らなさを感じました。
アンコールにはショパンのマズルカ第13番 イ短調 作品17-4を演奏してくれました。
繊細で可憐な響きでしたが、ショパンでも少し深みや情感に物足りなさは否めませんでしたが、まだまだ若い演奏家です、今後の成長に期待と言ったところだと思います。

そしてメインの春の祭典。
妙に間の長い冒頭のファゴットの調べに、少し不安を感じましたが、それはすぐに払拭されました。
大編成のオーケストラによる春の祭典は流石に迫力もあり、大幅に補強された演奏陣のアンサンブルも、複雑な難曲であるにも拘わらず、破たんを感じさせる場面は全くありませんでいた。
一致乱れぬアンサンブルとまでは言えなかったにせよ、とても高いレベルでの演奏だったと思います。 
補強のメンバーが素晴らしかったのかも知れませんが、今期のPACには管楽陣に心強さが感じられ、前のシーズンで常に不安と不満を感じていたホルンにも、大きな疵を聴きとる事はありませんでした。
トランペットに至っては、一流オケと遜色のない輝かしい響きで、ゲストプレイヤーは元北ドイツ放送交響楽団の首席との事でしたが、納得の演奏、PACのメンバーもそんな彼に負けない音色を響かせていたと思います。
圧巻はこれまたゲストプレイヤーでしたが、ウィーン交響楽団の首席が演奏するティンパニは、視覚的にも楽しめる躍動感のある演奏で、正確無比、表現にも過不足のない素晴らしいものでした。

こうして書き連ねると、ゲストメンバーの素晴らしさが印象的だったようにも思えますが、その実、そんな素晴らしいゲストたちに引けを取らない演奏をPACのメンバーはしていたと思います。
そしてそんな百戦錬磨のゲストたちをも巻き込んで、真剣で丁寧な演奏を繰り広げさせるPACオケならではの雰囲気は今シーズンも健在で、今後の定期演奏会がとても楽しみです。

アンコールにはチャイコフスキーの弦楽セレナーデ第1楽章を演奏してくれました。
春の祭典の編成での弦楽5部ですので、これまた重厚な響きが素晴らしかったです。

聴衆マナーはまずまずでしたが、やはり演奏中に飴玉のビニール包の音を響かせるおばさんも健在でしたね...。
 
 

015年 6月21日(日)
開場14:15 開演15:00
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
Hubert Soudant指揮

Weber - 歌劇『オベロン』序曲 J.306
Weber - クラリネット協奏曲 第 1番 ヘ短調 作品73 J.114
Michael Collins (cl)
Schumann - 交響曲 第 2番 ハ長調 作品61(マーラー編)

2014-15シーズンの最後の定期演奏会は、私にとっては初めて聴く指揮者、ユベール・スダーン氏を迎えてのコンサートでしたが、シーズン最後のプログラムとしては少し地味な印象ですね。
スダーン=東京交響楽団とのイメージがあったりしましたが、実際には2014年8月まで音楽監督を務めていて、今は違うんですね。

今回の演奏でもPACの弦楽陣の繊細で美しい響きは確かに感じられ、これは2014-15シーズンを通じて安定したものであったと感じます。
響きに深さや厚みは足りないのかも知れませんが、あの繊細さ、美しさは中々得られない響きではないかと思います。
それに対して今シーズンは管楽陣にその音色の魅力や力量の不足を否めない場面が少なくなく、唯一期待出来ていたトロンボーンの主席であった滝田さんは、前回の定演にも姿が見えず、既に東京フィルの副主席として転出されていたんですね。

イギリスの至宝とさえいわれているマイケル・コリンズを迎えての協奏曲、流石の技術と量感、音色を感じさせる演奏でした。
卓越していると言ってよいその演奏はとてもレベルが高いものでしたが、オーケストラとの融和はあまり高いとは感じられず、別に名人芸を披露していると言うような印象ではなかったのですが、完全にオーケストラが力負けしている雰囲気はありました。
アンコールにはペールマンのクラリネットと弦楽のためのアダージョを演奏してくれ、実質クラリネット五重奏の編成での演奏でしたが、とても素晴らしい演奏だったと思います。

メインのシューマンはマーラー編によるものでしたが、私は余り聴きこんでいないので、オリジナルとマーラー編の違いがピンとは来ないのですが、シューマンはオーケストレーションがあまり上手くはないが為に、マーラーが編曲を施したと何かで読んだ記憶はあります。
とても丁寧な演奏には、スダーン氏の楽曲に対する、或いは演奏するオーケストラに対する優しさが感じられるようなものがありました。
ここでもPACの弦楽陣の美しさははっきりと感じられましたが、やはりそれに比較しての管楽陣に悪く言えば拙さが勿体ないと感じられましたが、その真剣さは疑いようがありませんでした。
暫く他の在阪オケを聴いていはいないのですが、この真剣さは他の在阪オケにはないもので、とても素晴らしい特色ですし、結果的な演奏の出来も在阪トップではないかといつも思います。

アンコールにはヨゼフ・シュトラウスの編曲によるシューマンのトロイメライを演奏してくれました。

今期の定演も終わりましたが、来期も定期館員になる事としました。
今後のPACオケの演奏も楽しみたいと思います。