Gerd Schaller指揮

Philharmonie Festiva(フィルハーモニー・フェスティヴァ)

 

2015年録音(ライブ)

レーベル:Profil

 

演奏 (評価は5つ星が満点です)

 

音楽CDを買うことをかなり長い間中断していて、進行中だったシャラー&フィルハーモニー・フェスティヴァのブルックナー交響曲チクルスも未購入だった0番を最近やっと買いました。(既に00番もリリースされていて、シャラー校訂による9番やミサ第3番、詩篇、オルガン曲集を含む全18枚の全集としてもリリース済みです)

ややゆったりと始まる第1楽章ですが、その丁寧な音作りが印象的です。

楽曲を慈しむかのようなその丁寧さは、緩徐楽章である第2楽章は勿論、スケルツォである第3楽章、そしてフィナーレに至るまで変わらす、謳い上げるかのようなチェロの響きも印象的です。

スケルツォやフィナーレでの金管群の咆哮も立派なものですが、そこに荒々しさや乱雑さもありません。

ライブとしての演奏に綻びなどみじんも感じないその仕上がりは、0番の演奏としては特筆出来るものかも知れません。

欲を言えば、弦楽陣にもう少し深みのある響きが欲しいとも思いましたが、清澄でデリケートな音色は美しくも感じます。

未購入の00番、シャラー校訂の第9番、ミサ曲なども是非聴いてみたいと思います。

 

録音 (評価は5つ星が満点です)

 

ライブとしての疵が感じられない素晴らしい録音だと思います。

適度な温度感にしっかりした静寂感、聴衆のノイズもステージノイズも皆無です。

左右への広がりも自然な範囲で問題がないのですが、もう少し残響成分があったほうがより演奏は素晴らしく感じられたかも知れません。

窮屈な感じはしませんが、奥行き感ももう一つ深ければと欲張って思ったりもしますが、それでも十分に優れた録音だと思います。

 

余談ですが、途中までは『低位が定まらないな』と感じて聴いていたのですが、窓側のカーテンを閉めると音場が安定しました。

オーディオはやはり部屋の環境に敏感なものですね。

 

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Janine Jansen (vn)

Antonio Pappano指揮

 

Brahms - ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

Orchestra dell'Accademia Nazionale Di Santa Cecilia

(ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団)

2015年録音(Live)

 

Bartók - ヴァイオリン協奏曲 第 1番 BB48a Sz.36

London Symphony Orchestra(ロンドン交響楽団)

2014年録音

 

レーベル:Decca

 

演奏  (評価は5つ星が満点です)

 

ライブ録音のブラームスは『熱い演奏』と言って良いのでしょうか、その場に居合わせたならヤンセンの熱演に魅了されたのかも知れません。

しかし、自宅で録音芸術として聴くにしては、ヤンセン独特の力技的な、そしてライブにありがちな過度に感情任せに弓を弾くその音色が私には少し鼻につきます。

ヴァイオリン協奏曲とは言え、余りにもヤンセンが目立ち過ぎていて、その割には微細な表現には物足りなさを感じます。

これは録音にも問題がありそうですが、ガンガン弾きまくるヤンセンに対して、オケはかなり控えめに感じますし、オケの響きにも精細さは感じられません。決して悪い演奏とは思わないのですが、ちょっと古めかしい演奏スタイルに感じました。

特に第3楽章での力の入った弓使いは、「あぁ、やっぱりヤンセンだなぁ」と悪い意味で納得してしまいました。

 

一方バルトークの協奏曲は、オーケストラの力量が違うからか、或いはセッション録音だからか、ヤンセンも幾分かは冷静で精緻は演奏になっており、オケとの融和感覚もブラームスと比べると高いです。

ヤンセンの高い技術はバルトークでも疑う余地はなく素晴らしいものですが、それでも微細な表現に関しては物足りなさを否めません。

 

録音  (評価は5つ星が満点です)

 

ブラームスではライブ録音とは思えない程、聴衆ノイズ、ステージノイズは皆無と言って良い録音で演奏後の拍手も収録されていません。

そこはかとない暗騒音は感じられはするものの、知らずに聴けばライブとは気が付かないかも知れません。

ヤンセンのヴァイオリンへのフォーカスが非常に高く、その力感は余す事なく伝えてくれますが、オーケストラの響きには音の輪郭や精緻さが全く足りず、ティンパニや弦楽陣のピチカートにも音の粒立ちが感じられません。

存在感のあるヴァイオリンに対して、平面的で漫然としない響きのオーケストラ、特に協奏曲としての録音としては、これまた古めかしい印象です。

 

セッション録音で録音場所も異なるバルトークに関しては、その音響的な印象も少し良くなり、オーケストラの響きにもある程度の輪郭は感じられ、ヴァイオリンへのフォーカス感もブラームスに比べれば随分自然になっていると思います。

しかしながら音響的は愉悦感がある録音とは言い難く、奥行き感が少し足りないようにも感じます。

 

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Simone Dinnerstein (p)

 

2005年録音

レーベル:Telarc

 

演奏  (評価は5つ星が満点です)

 

碧のゴルトベルク変奏曲

ジャケットに映るシモーヌ・ディナースタインの瞳のような色彩感覚がそのピアノの響きに感じられます。

緩急の差、強弱の差が大きい演奏と思いますが、そのどちらにも良い意味での女性らしい繊細さと程よい冷静さがあります。

しかしまるでロマン派の作曲家の楽曲かのように感じられるディナースタインのしっとりとした表現は、彼女ならではの個性ある優しさを内包している響きに乗り、また一つ、ゴルトベルク変奏曲の素晴らしくも新しい発見を私にもたらしてくれました。

アリアに代表される緩やかな楽曲はかなり遅めのテンポですが、冗長な印象は皆無。早い変奏での指の廻りの素晴らしさには感嘆しますが、そんな場面でも単にテクニックだけが立派なわけではない叙情的な印象がしっかりある演奏です。

演奏時間は1時間18分とかなり長い部類になるのかも知れませんが、ディナースタインの美しくも心地よい碧い響きに身を任せていると、そんなに長い演奏とは感じません。

リリースは2007年とかなり古いのですが、私は偶然にもSpotifyでバッハのインベンションの演奏を色々と聴いている中で彼女の演奏をごく最近知りました。(インベンションも近い内に手元に届くと思います)

やはり世界には未だ触れていない素晴らしい演奏がたくさんあるんですね。

 

録音  (評価は5つ星が満点です)

 

豊かな残響成分が演奏に瑞々しさを与えながらも、ピアノの一音一音は極めて明瞭に響き、細かなニュアンスの変化も見事に伝えてくれる録音だと思います。

奥行き感はそう深くはないのですが、左右への広がりはピアノ独奏としてはごく自然に感じられ、バッハでは特に重要と思われる左右の手の動き、弾き分けも明瞭に聞き取れます。

暗騒音もほぼ感じられないので、目の前で弾いているかのような実在性はないのですが、録音にも現代感覚があると言えます。

実際にはピアノは1903年ハンブルグ・スタインウェイDなのですが、100年以上も前に製作されたとはとても思えない美しい「今風の」音色です。

しかしながら、変奏曲により強弱の差が激しく残響成分も多いので、再生するオーディオ機器の資質が問われるかも知れません。

強奏時に高域などがキツく響いたり、緩やかな場面で残響が支配的に聞こえたりするような再生装置であれば、ディナースタインの演奏も楽しめないかも知れません。

その意味で、私にとってオーディオ機器の資質を確認するチェック用のCDとしても新たな1枚が加わったと感じます。

 

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