85.3.柑橘類に当たる英語

“citrus fruit(s)”と呼んでいる。語源的に関連がある語に“citron”という語もある。日本でノドリンクの商標の一つに「レモン・シトロン」というのがあったのを憶えている(今もあるかどうか知らない)。



85.4.punch

「なぐる」意味の「パンチ」と同じ綴りであるが、フルーツ・ジュースを数種ミックスした飲み物で、初めて米国に行った時、スナック・ショップで売っていて、私はその口当たりのよさにいっぺんにはまってしまったものである。ピンク色をした飲み物である。



[付]フルーツ・ポンチ

私は、太平洋戦争(1941~45)前の、今や古き東京の繁華街(銀座、日本橋、新宿、渋谷など)を知っている、少数の生き残りである。まだ幼稚園、小学生であったから、一人でそういう所をふらふら歩いていたわけではなく、父や母と一緒であったが、当時は都内のこういう盛り場には「フルーツ・パーラー」というものがあって、その代表は千疋屋(せんびきや)と高野であった。大体は果物屋(fruit shop)の奥にあった。

そこで食べたものの中に「フルーツ・ポンチ」というものがあって、上で述べたようにpunchは飲み物であるが、「フルーツ・ポンチ」は数種のカットした果物がグラスか皿に盛り付けてあった。米国に初めて行った時、「フルーツ・ポンチ」は和製カタカナ語で、英語ではfruit cocktailと言うのだと知ったのであった。
85.2.tangerine; satsumaとも呼ばれている


私がロンドン大学アジア言語文化学部の助教授で東京に滞在していた英国人面倒を見ていた頃、2人で街を歩いていた時、八百屋か果物屋でミカンが山積みにされていたのを見て、私は彼に英国ではミカンを売っているか、売っているなら英語で何と言うか訊いてみた。

すると、satsumaとかtangerineと呼んでいる、ということであった。日本が黒船来航によってだんだん開国して幕末を迎えたあたりの歴史的展開に非常に興味を持っていた私は、satsuma→「薩摩藩」→島津公とイギリスとの交流という連想が走って、すぐ合点がいったのである。

tangerineは、英米人が使っているのをその後何回も聞いている。

[付]京都府亀岡で英語塾をしておられ、NHKの『わくわく授業』にも登場した、カリスマ英語教師の竹岡広信氏の公開講演が、東京の予備校の早稲田アカデミーであるというので聴きに行った。これは受験生だけでなく、高1、2年生、また父兄も対象としたもので、受験英語的でなく英語そのものへの興味を持たせるには日本語と生きた英語を比較対照しながら学習を進めるのがよいといった内容で、私の早大/慶応大などでの雑学的栄ご厚誼と似たところがあり興味深かった。

竹岡氏のこの日の講演の中で、「ミカン」のことを英語でどう表わすか、ということがやはり取り上げられ、私が上で述べたように「satsumaと言うのです」と言われたのはよいのであるが、その直後に私が挙手をして、「tangerineとも言っていますね」と言ったところ、氏は言下に次のように否定されたのであった。

「いえ、違います。そのような単語はありません」

私はそこで、竹岡先生と言い争っても仕方がないので、それ以上は何も言わずに引き下がったのであった。ちょっとした、私には忘れることの出来ないエピソードであった。



85.1.「蜜柑=orange」ではアバウト過ぎる


日本のミカンの栽培史について私は詳しくはないが、もともと中国から入ってきたもので、それは温州(うんしゅう)ミカンと言われていたのではないか。中国ミカンは、たぶん400年以上昔、日本で言う大航海時代にアジアに来たポルトガル人神父や商人がマレーシアあたりで見たり味わったであろう。ヨーロッパに持ち帰ったかどうか、と言うのも、帰途の航海に数ヶ月くらいかかるので、冷蔵冷凍技術がまだ無かったであろうから、中国ミカンを持ち帰っても腐敗してしまったであろう。中国ミカンの絵などは渡ったのかもしれないが。

いずれにしろ、Mandarine orangeという語は、16世紀にマレー語、ポルトガル語経由で英語に入っている。