第1位 多情多恨
多情多恨 (岩波文庫)/岩波書店
¥945
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尾崎紅葉『多情多恨』(岩波文庫)
奥さんを亡くして落ち込む鷲見柳之助を心配して、友人の葉山誠哉がしばらく家に来ないかと言ってくれました。とにかく極端な人間嫌いの鷲見は葉山の妻のお種を嫌いますが、次第にお種のよさに気が付いて……。友人一家と一つ屋根の下で暮らすという奇妙なシチュエーションをユーモラスに、そしてしっとりと描いた、ダメ男文学の白眉。
第2位 三四郎
三四郎 (新潮文庫)/新潮社
¥357
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夏目漱石『三四郎』(新潮文庫)
面白い物語というのはあらすじだけでも面白いものですが、あらすじを語るのが困難なのが『三四郎』。三四郎の学生生活を描いた小説ですが、なにを描こうとした物語なのか誰と誰との恋愛が描かれているのかを読み取るのは難しいです。それだけに読み返す度に発見がある、ストーリーの面白さではない、小説ならではの魅力がある作品。
第3位 壁
壁 (新潮文庫)/新潮社
¥515
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安部公房『壁』(新潮文庫)
ある朝目覚めると名前を失っていた〈ぼく〉。名刺が〈ぼく〉のふりをして歩き回り、突如現れた「とらぬ狸」に案内されて「バベルの塔」へ向かうこととなって……。夢の世界や幻想のような、「シュールレアリスム」の雰囲気が嫌いでなければ、これほど面白い小説はありません。読む者を仰天させ不思議な世界へと誘う、芥川賞受賞作。
第4位 眠れる美女
眠れる美女 (新潮文庫)/新潮社
¥452
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川端康成『眠れる美女』(新潮文庫)
シュールさと幻想性では川端康成も負けていません。睡眠薬で眠っている少女と老人との同衾を描く「眠れる美女」もぞくぞくさせられる面白さがありますが、何よりすごいのが「片腕」。書き出しからしてすごいですよ。「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」です。女性が右腕を肩からはずす冒頭から引き込まれる、シュールさが光る名短編。
第5位 愛と死
愛と死 (新潮文庫)/新潮社
¥420
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武者小路実篤『愛と死』(新潮文庫)
明治の徳富蘆花の『不如帰』や伊藤左千夫の『野菊の墓』、平成の片山恭一の『世界の中心で、愛をさけぶ』と並ぶ、昭和の名作が『愛と死』。小説家の〈僕〉は先輩作家の妹で、余興で宙がえりをするほどお転婆な夏子に惹かれるようになったのですが……。ボーイッシュな夏子はとても魅力的。まっすぐに愛し合う二人の姿が胸に残ります。
第6位 猫と庄造と二人のおんな
猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)/新潮社
¥420
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谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』(新潮文庫)
タイトルの順番も重要なんです。浮気相手の福子と所帯を持った庄造でしたが、かつての妻の品子が飼い猫のリリーを引き取りたいと言ってきました。邪魔な猫がいなくなってせいせいした福子でしたが、リリーを溺愛する庄造は、気もそぞろになって……。人間心理を巧みにとらえ、猫をめぐる複雑な人間模様をユーモラスに描き出した名作。
第7位 或る少女の死まで 他二篇
或る少女の死まで―他二篇 (岩波文庫)/岩波書店
¥693
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室生犀星『或る少女の死まで 他二篇』(岩波文庫)
小説を読んでいて、ストーリーの面白さとは別に文章の美しさに打ちのめされてしまうことがあります。詩人でもある室生犀星の文章は、そういうとても素敵な文章で、感覚的な描写の美しさには思わずため息が出てしまうほど。『或る少女の死まで』では、子供の頃、思春期、詩人になってからの三つの時代を描く短編が収録されています。
第8位 夕暮まで
夕暮まで (新潮文庫)/新潮社
¥420
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吉行淳之介『夕暮まで』(新潮文庫)
二十歳前後の女性杉子と親密な関係になった四十代妻子持ちの佐々。口での愛撫やオリーブオイルを使った疑似的性交には積極的な杉子は、結婚するまではヴァージンでいたいと言っていたのですが……。ポルノとの境界線にあるあやしげな物語ながら、上品でみずみずしい雰囲気の作品になっているのは、やはり、吉行淳之介の筆ならでは。
第9位 藤十郎の恋・恩讐の彼方に
藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)/新潮社
¥578
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菊池寛『藤十郎の恋・恩讐の彼方に』(新潮文庫)
「日本文学史上で最も面白い作家は?」という問いの”面白い”がエンタメとしての面白さをさすなら、間違いなくその答えは、菊池寛でしょう。特にこの『藤十郎の恋・恩讐の彼方に』は、興奮、感動、感涙ものの大傑作短編集。歴史を背景にした作品が多いので、その点は読みづらいかも知れませんが、間違いなく心打たれる一冊のはずです。
第10位 五重塔
五重塔 (岩波文庫)/岩波書店
¥420
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幸田露伴『五重塔』(岩波文庫)
腕はたしかなもののその人柄から「のっそり」と侮られている十兵衛。五重塔を建てる仕事をどうしても請け負いたいと思うのですが……。残念ながら、旧字体で書かれ会話文に鍵カッコすらない幸田露伴の文章は今では難しすぎて読むのはなかなか難しいでしょう。しかしそれでもおすすめせずにいられない、手に汗を握る大傑作です。
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