昨日発売の「音楽の友」2月号にて、「コンサート・ベストテン」が発表されましたが、40人の音楽評論家・記者による投票結果を見ると、それぞれ通ってる公演が違うので投票結果にばらつきがあり、筆者のベストテンの共通しているのは、4公演でしたので、まずまずの結果だと思います↓。



「音楽の友」の昨年のランキングはあまりにも酷い集計の仕方でしたので、↓の当ブログで指摘させて頂きましたが、今年のランキングは集計方法に改善が見られていて、その点は良かったと思います。

さて、「音楽の友」のベストテンの1位は、筆者が先週予想した通り、東響の『エレクトラ』でした。東響が初めて1位なったと言われていますが、昨年のランキングでは、上記のブログに書いたように、1位のラトル指揮・ロンドン響が4公演で、2位の東響『サロメ』が2公演しかない上に、得点差が1点でしたので、実質は昨年も東響が1位なので、2年連続で東響によるオペラの演奏会形式が1位になったと言えます。これは公演数が多いほど他のコンサートなどの被りが少なくなり、音楽評論家が鑑賞できる機会が多いことにより、得点が加算される可能性が高くなります。昨年は、ラトル指揮のロンドン響は3プロを4公演でやっていて、それを一つの公演としてカウントしていましたが、今年の「音楽の友」はベルリン・フィルのAプロとBプロを別カウントしているので、少し集計方法に改善されています。ですが、ベルリン・フィルは東京と川崎でAプロとBプロを3回ずつやっているのに対して、東響の『エレクトラ』は東京・川崎で2公演しかないので、東響が1位に入るのは本当に健闘したのだと思います。引き続き、当ブログでは東響推し(加えて、N響・都響)でいきたいと思います。2位はベルリン・フィルのAプロ、5位が同じくベルリン・フィルのBプロは順当でしょう。5位の都響・コパチンスカヤも予想通り、上位に入り、都響は国内オケのコンサート・カテゴリーでの実質1位ですが、今回のベストテンでN響が一つも入っていないのが気になりました。これはN響が評論家を招待していないからですが、このランキングの上位にするために評論家に大量招待する主催者の方が公平性の点でやや問題と思います。N響の春祭の「マイスタージンガー」もランクインせず、春祭のムーティ指揮「仮面舞踏会」がランクインしてるのは不思議です。明らかに歌手のレベルとオケの演奏はN響の「マイスタージンガー」の方が数段上だったと思いますが、日本では最近のムーティさんを過大評価されていると思います。また、「音楽の友」編集部の雑な編集にツッコミを入れたい点が、3位のミュンフン指揮「オテロ」は「演奏会形式」と書いてありますが、主催者の東フィル側は「オペラ演奏会形式」と表記しているのに対して、春祭の「仮面舞踏会」は「演奏会形式」となっていて、表現が異なります。この違いは、東フィルの「オペラ演奏会形式」は歌手が役に合わせた衣装で、楽譜無しで演技しながら歌い、小道具などの簡易な舞台セットがあるのに対し、春祭の「演奏会形式」では歌手は通常の舞台衣装で楽譜を見ながら歌う点が大きな違いで、ここの言葉の表記と概念の違いをきちんと書いてもらいたいです。東響は「演奏会形式」としていますが、こちらも演技しながら楽譜無しで歌っているので、東フィルと春祭の中間的な存在になります。 

東京フィル「オテロ」のオペラ演奏会形式


春祭「仮面舞踏会」の演奏会形式


7位にウォン指揮・日フィルが入ってますが、最近、評論家のコメントではすこぶる評判の良いウォンですが、日フィルは滅多に行かないのではありますが、今年はウォンの公演に一度は出かけたいと思います。

海外オケの来日公演ではベルリン・フィルの他に、8位にルイージ指揮・コンセルトヘボウ、12位にソヒエフ指揮・ウィーンフィルがランクインしていますが、ソヒエフはもっと上位でも良いと思いますし、ネルソンス指揮・ゲヴァントハウスやパーヴォ指揮・トーンハレ管もランクインして欲しかったですが、音楽評論家がこれらの公演にはあまりいなかったので仕方ないでしょう。

オペラでは予想通り、大したプロダクションではない新国立劇場オペラの『シモン・ボッカネグラ』が4位でしたが、主役のフランターリは声がひっくりかえっている場面が多く、大野さんの指揮はヴェルディらしい凄みのある音楽ではありませんでした。これは1/21(今週日曜深夜)にNHKBSの放送で確認できると思います。この公演を1位としている方が2名いらっしゃいますが、評価のポイントは少しズレてるのではないでしょうか。新国立劇場のシモンへのPRはかなり力を入れてました。

また、昨年まで日本の音楽評論家たちが絶賛していたマケラがランクインしていない点は、やっと本質を理解された方が多くなってきたと、勝手に良かったと思います(今回のベストテンは上位16公演まであるので、その中にも入ってません)。しかし、マケラ指揮・オスロフィルを1位とする方が2名いますが、この方たちはリスキリングされることをおすすめしたいです(^^)。amazonの読者レビューでは、マケラが選外なので、レビューを星一つにしてお怒りの方がいます。


また、昨年の「音楽の友」の映像↓でお2人の音楽評論家が「マケラ指揮・オスロフィルを1番注目している」と発言していましたが、そのご本人たちはマケラ指揮・オスロフィルをベストテン入りさせてませんでした。


各評論家ごとのランキング表を見ると、その方の好み・感性などが色々と分かりますが、例えば、高関さんの「トスカ」(演奏会形式)をベストテンにしている評論家がいますが、どう考えてもローマ歌劇場の「トスカ」の方が数段上なので、このベストテンはお遊び程度と思うしかないです。

最後に、今回のランキングは昨年の12月の公演を対象としておらず、きちんとした年間ランキングになっていないので、昨年も指摘しましたが、3月号でベストテンを発表した方が良いと思いますし、評論家の投票がかなりマニアックな公演が多いので、かつての読者アンケート投票の方が良いのではないでしょうか。N響が毎年発表しているファンによるランキングはこの「音楽の友」のランキングより説得力があります。