最も秀逸だったネルソンス指揮・ゲヴァントハウス管のメンデルスゾーン(11/21)


10/16のトーンハレ管の来日公演から始まった「秋の海外オーケストラ来日公演シリーズ」は11/28までの約1ヶ月半で8つの団体、16公演に行きました(内田光子さんのマーラー・チェンバーだけはインパクト薄いと予想していましたので、パスしました)。イスラエル戦争問題でイスラエル・フィル、スポンサー問題でドレスデン・シュターツ・カペレの2つの団体が来日中止になってしまい、とても残念でしたが、これだけの短期間で、高水準のオーケストラを集中的に聴けるのは世界でも珍しいと思います。

✳︎10月の戦争状況下でのイスラエル・フィルの演奏(無観客公演)はこちらの映像で、来日公演で予定されていた英雄交響曲が見れます。第2楽章の悲壮感はかなり深いです↓。


ユーロ高、運輸費などの高騰、スポンサー問題が解決すれば、今後も同じ規模の来日公演は期待できますが、現状のままですと、かなり厳しい状況だと思います。今回の来日公演のチケット最高値はベルリン・フィル(Bph)のS席45000円ですが、次回はこの金額では収まらないと思います。企画準備段階の2、3年前のユーロ円が120-130円台でしたので、今の160円近辺で換算すると、Bphは為替要因だけでも、S席60000円位に跳ね上がります。そのため、大型スポンサーがつくか、あるいは、日本人の給与水準が劇的に上昇しないと、将来的には欧米のオーケストラの来日がビジネス観点で難しいと思います。海外オペラの来日公演では、NBSが来年夏に英国ロイヤルオペラを招聘する予定ですが、それ以降の海外オペラは未定、と言うよりは難しいと聞いてます。今回のBph来日公演のS席45000円はユーロ換算すると、€280になりますが、現地ベルリンでも最上席は€100以上、大晦日のジルベスターコンサートだと€300以上するので、現地の高い宿泊代やベルリンまでの高い航空券代を考えると、日本公演のチケット価格は安い水準に感じました。


さて、本題の秋の海外オーケストラの総括ですが、当ブログでは各公演を5段階評価とさせて頂き、星5つの満点は「一生の記憶に残るレベルの超名演」と定義づけしており、その公演が何年の何月に行われたかを記憶しているレベルの公演ですので、あまり満点を出さない方針にしております。満点が年に10回を超えると年間ベスト10がつけられてなくなりますし、記憶力にも限界があるので、かなりの名演でないと星5つは付けていません。そんな中で、星5つとしたのは、ネルソンス指揮・ゲヴァントハウス(メンデルスゾーン)とペトレンコ指揮・ベルリン・フィル(Aプロ)のコンサートです。特に1番印象的だったのは、ネルソンス指揮のゲヴァントハウス管でした↓。

ゲヴァントハウス管がメンデルスゾーン本人の指揮で初演したスコットランド交響曲の伝統の音は風格があり、ネルソンスが多くの指示を出さなくても、素晴らしい音が出てきました。極め付けは、ネルソンスの6分間あまりの心温まるスピーチです。マイク無し・通訳無しでアドリブで指揮台から観客に話し、その後、予定になかった第2楽章のアンコールは秀逸でした。ネルソンスはサインする際に「Warmest Wishes」と必ず書いてくれますが、彼のとても温かい人柄を感じます。この公演後、某大使館でのレセプションをキャンセルし、観客へのサイン会に23時まで対応していた点も素晴らしいです。このコンビの再来日公演は強く希望します。


次に良かったのが、Bphの11/26のAプロ(ブラームス4番)でしたが、もう一つのBプロ(レーガーと英雄の生涯)のBphは正直、あまり感動しませんでしたし、Aプロの11/24も最高に良かったわけではありません。今回のBph来日公演はイマイチ全体的に感動度合いが少ない印象があります。これには、アジアツアー最後の疲れ、東京でのホテル朝食無し問題に加えて、11/26に行われたBe Philコンサートに向けたパート練習やリハーサルに一部の楽団メンバーが駆り出されていて、東京ではオフの日が無く、公演日も朝からBe Philの練習が入っており、これではさすがに疲れが出ると思います。11/18の姫路公演から11/26まで毎日仕事していた楽団員もいます。次回は、もう少し余裕のあるスケジュールを組まれた方が良いと思います。星5つが取れた日はBe Philのリハがない日でした。


Be Phil 練習スケジュール

<11月22日(水)>

午前・午後@都内各所/セクション練習など

<<BPOメンバーによる指導


夜間@サントリーホール ブルーローズ/

合奏

<<指導=(指揮)ラファエル・ヘーガーほか

BPOメンバー


<11月23日(木)>

夜間@サントリーホール ブルーローズ/

合奏 <<指導=(指揮)キリル・ペトレンコ+

(指揮) ラファエル・ヘーガーほかBPOメンバー


<11月24日(金)>

午前@サントリーホールブルーローズ/

合奏 <<指導=(指揮)ラファエル・ヘーガー

/樫本大進&ルートヴィヒ・クヴァントほか

BPOメンバー


<11月25日(土)>

午前@サントリーホール 大ホール/合奏

(指揮) ラファエル・ヘーガー/樫本大進&ルートヴィヒ・クヴァントほかBPOメンバー

夜間@サントリーホール 大ホール/合奏

(指揮)キリル・ペトレンコほかBPOメンバー


これに加えて、協賛社の特別公演がありました。

日時:2023年11月23日(木・祝)10:45~13:00

会場:サントリーホール ブルーローズ

出演:ベルリン・フィルのメンバーによるスペシャルセッション:樫本大進(第1ヴァイオリン)、町田琴和(第2ヴァイオリン)、パク・キョンミン(ヴィオラ)、ルートヴィヒ・クヴァント(チェロ)、ヴェンツェル・フックス(クラリネット)

曲目:モーツァルト「クラリネット五重奏曲イ長調K581」全楽章



ここまでは日本のN響や都響などの定期公演で指揮していない指揮者によるものです。他の公演は日本のオケの定期演奏会で常連の指揮者による公演になりますが、もう一つ、星5つに限りなく近かったのは、11/15のソヒエフ指揮・ウィーンフィル(wラン・ラン)の横浜公演です。ラン・ランのソロによるサン=サーンスのコンチェルトは実演ではベストで、早くCDを買いたいくらいです。ドヴォ8もソヒエフがうまくウィーン・フィルをコントロールして、カラヤン先生並みの名演でした。ソヒエフはウィーンとベルリンのメンバーからの評価が高いことを強調したいです。しかし、横浜みなとみらいホールの音響の悪さと、横浜の観客の咳の数が多く、筆者の隣と直後の人は、マスク無し・口抑え無しで、堂々とドヴォ8の時に咳をしており、とても困りました。翌日と翌々日は少し体調悪化で、N響定期に行けませんでした。このホールは咳エチケットレベルがサントリーホール等と比べてかなり酷いと思いましたので、冬の期間は横浜に行くのはやめました(^^)。


以上がこの秋の海外オケの来日公演のトップ3でしたが、パーヴォ指揮・トーンハレ管のベートーヴェンとブラームスの交響曲も星5つに近い名演で、トーンハレで再度、エネルギッシュなシンフォニーを聴きたいです。思い出にずっと残るのはこの位で、チェコ・フィルやコンセルトヘボウも素晴らしかったですが、上述のオケと相対評価すると普通のレベルになってしまいます。チェコ・フィルとNDRエルプフィルのアンコールで、ブラームスのハンガリー舞曲が演奏されましたが、ラデッキー行進曲のように観客から手拍子が起こるのは何故なのでしょうか。初めて見る光景でしたが、こんな習慣ありましたでしょうか。