『21世紀の資本論』・その1 | くらえもんの気ままに独り言

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 前回告知させていただきましたとおり今回からトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本論』(をA.D.Thibeault氏が要約したもの)の要約および感想を書かせていただきます。


 今回はPart1の前半部分についてまとめてみました。Part1は導入部分でありまして、基本的な確認事項などがまとめてあります。ちなみに700ページに及ぶ大作を40ページにまとめたということで、本書の構成とはだいぶ違うようです。本書を読みたい方は年末には日本語版が刊行される予定なので、しばらくお待ちください。


 それでは、いってみましょう。


1.富(wealth)と資本(capital)


 富を得る経路は2通りあって、1つは相続で、もう1つは所得ということです。(ちなみに窃盗etc.はここでは考えないことにされています。)


 さらに所得にも2通りあって、1つは労働による所得で、もう1つは資本による所得ということです。ちなみに後者は利子とか配当とかの労働によらない所得というわけですね。


 そして、富は消費に回されるか、あるいは資本への投資へ回るかのどちらかになるということです。貯金なんかも資本への投資に分類されます。利子もらえますし。

 そして、資本への投資が行われたら、投資対象によって様々な利率のリターンが発生します。


 消費に回った富は消えるので、資本こそが真の意味で富であると考えられた。という記載がありましたが、実際には消費に使った富は誰かの富になるので消えたりはしません(^ε^)。


 資本は資本主義社会に不可欠であり、経済成長のエンジンとして活躍しますが、これが少数の人たちの手に偏って蓄積していくと格差が拡大してきて問題となってくるというわけです。しかも、それは自然に起こってくるのです。


 ここまでは、本当に基本的な事項なので感想とかはあまりないですね(;^_^A


2.資本(capital)/所得(income)比


 筆者は資本の重要度やその水準を表す指標として資本/所得の比を挙げています。この場合の所得はGDP(フロー)を指し、資本は存在する資本の合計額(ストック)を指しているようです。そして、この資本/所得比βで表しています。


 例)β=6(600%) →その国の資本金の総額がGDPの6倍という意味


 ちなみに2010年における先進国でのβは5~6くらいのようです。


 βが一定となるにはGDP成長率と資本の利益率が同じでなくてはならず、資本の利益率の方が高くなるとβは大きくなり、資本の利益率の方が低くなるとβは小さくなるというわけです。


 つまり、資本の重要度およびその水準を見るにはGDP成長率と資本の利益率を比較する必要があというわけですね。


 確かに国ごとに経済規模は違いますので、資本/所得比(β)でもって資本の重要度・水準を見るというのは理にかなっている気がします。そしてβの変化を見ることで、資本の重要度が増していっているのか、減っていっているのかも分かるというわけですね(これは感想というか確認ですね(;^_^A)。


3.経済成長率


 というわけで、まずは経済成長率の方を確認します。


 経済成長は技術進歩に依存するというわけで、農耕社会だった古代~17世紀までは年間成長率は0.1~0.2%を超えることはなかっらしいです。


 では、資本主義社会となったらどうか?


 もちろん農耕社会時代よりも成長率は高いのですが、長期で見ると先進諸国でも1.6~2.0%というところに収まるようです。戦後や災害後の復興時や発展途上国が近代化しようとするときは瞬間的に成長率がアップすることはあるようですが、どの国も長期で見ると意外にも割と低めに落ち着くようですね。でも、ここ20年の日本はその範囲から外れて、もっと低いんですが・・・。


 せっかくなのでグラフを引用してみましょう。


産業革命以降の一人当たり成長率

http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F2.3.pdf


 ご覧の通り、戦後のヨーロッパでは一時的に成長率が大きくなっていますが、だいたい1.5~2.0%くらいに収まっています。


 ちなみに筆者は(予想は難しいと前置きして)、今後の成長率は楽観的に見ても平均1%台前半くらいでいくのではないかと、これまでのトレンドを見て推測しています。


 おそらく技術革新の有無で結果は違うのでしょうが、技術への投資よりも金ころがしが主流になってきている現代ではなかなか技術革新は起こりにくいというのもありますし、私もこのままのトレンドだと低成長路線でいくのではないかと感じたりしています。


4.資本の利益率


 では、もう一方の要素である資本の利益率のトレンドはどうなっているのでしょうか?


 リスクの大きさによって利益率の高い商品から低い商品まで様々ありますが、平均すると一貫して4~5%の利益率があるようです。思ったより高いですね。銀行預金なんてたかが知れているというのに・・・。


英国における資本の利益率 1770~2010年

http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F6.3.pdf
仏国における資本の利益率 1770~2010年

http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F6.4.pdf


 本当にあまりぶれずに4~5%の間に収まっていますねぇ。

 なぜ、4~5%の間にずっと収まるのかというと、利子を払ってでもお金を借りたい人と、利子を稼ぐためにお金を貸したい人がいるわけですが、借りる側の苛立ち(impatience)と貸す側の忍耐(patience)の折り合うところが金利になるのです。そして、このバランスは人間の心理学的にずっと変わらないということで、だいたい同じ利益率で推移するということのようです。


 というわけで、経済成長率が1~2%であるのに対し、資本の利益率が4~5%ということは、β(資本の重要度)は、この流れだと自然とどんどん大きくなってしまう傾向にあるということは必然というわけですね。いやぁ、こうやって、データを見ていくと、分かりやすいですね(^ε^)。


 それでは、次回、Part1の後半では資本/所得比および格差についてのまとめになります。


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