【寄生獣】 | シネフィル倶楽部

シネフィル倶楽部

洋邦ジャンル問わず最新作から過去の名作まで色んな作品ついて、ライトな感想や様々な解釈・評論を掲載orつらつらと私「どい」こと井戸陽介の感想を書く場にしたいと思います!観ようと思ってる作品、観たい過去の作品を探す時とかの参考書みたいに活用してもらえればと♪

NEWオススメ作品(※ネタバレあり)

 

本作、すっっっごく良質な邦画です

 

興行・批評の両面でもっといってもよかった作品…!!!

 

ジュブナイル調の活劇モノやSFアクション、昭和ノスタルジーなどあれど、山崎貴監督の「本当」ってこういうのなんだろうなーと。

 

そう思わせるハイクオリティな作品

 

深遠なテーマを孕んだ原作を、山崎貴&古沢良太の黄金コンビがその魅力を余すところなく再構築し、現代で映像化する上での付加価値をつけて世に送り出してきてくれました。

 

劇場公開時より、繰り返し円盤で鑑賞する中でさらに評価が高まった作品です。

 

『寄生獣』

(2014)

 

『寄生獣 完結編』

(2015)

 

前編となる『寄生獣』は109分とは思えない濃度さ

 

そして後編となる『寄生獣 完結編』は前編で広げた先入観を覆してくるクライマックスの連続

 

 

この映画、田宮涼子と泉新一を媒介に、ある種の「越境」を描いた作品だなと感じます。

 

前後編を通して、徐々に泉新一が寄生生物に、田宮涼子が人間に近づくのが興味深いんですが、境を超えて別の立ち位置から元いた場所を見ることで、エゴも美徳も見えてくる───そんな狙いが、この映画の構図や展開から見えてきます。

 

 

例えば後編半ばの山場、市役所のシーンと動物園での田宮涼子の最期のシーンもそうですね。

 

あの二つの場面をそれぞれ入れ子構造にしたのがすごいアイデアですね。

 

北村一輝演じる市長の演説とその末期の真実、田宮涼子の驚くべき行動、それを並行して描くことで、この映画が何を浮き彫りにしたかったのか、この映画全体の構図を明確に打ち出しています。

 

あれがひとつのクライマックスだと思うんですが、何度観ても圧巻です。

 

 

それにしても深津絵里、すごいっす。。。。

 

最後の表情や喋り方が圧倒的に自然体=人として観て’’自然’’と感じる表情になっていることがすごい。

 

それまで不自然を自然に演じてきた分、最後の"普通感"がすごく印象に残ります。

 

 

──────────────

■タイトルについて

──────────────

劇中でミギーが言う「ありとあらゆるモノを食べる人間に対し、人間一種のみを食べる慎ましさ」───たしかになぁ、そう思った自分がいます。

 

原作改変のポイントのひとつとして、寄生生物が空・宇宙から来たのではなく深海から来た設定になっていること。

 

これは良い改変ですね。

 

地球の奥底から来た存在により人間という存在を照射されることで、映画の最後に語られるメッセージに厚みが出ていました

 

↑これが、こう↓

 

そもそもこの『寄生獣』というタイトル自体がある種、テーマを考えさせる壮大なフックになってます。

 

このタイトルと予告を観たら、ミギーや田宮涼子、Aや島田のような寄生生物のことが『寄生獣』だと思いますよね。

 

 

でも実は、見方によっては殺人より恐ろしいゴミの垂れ流しによる地球殺し(自分たちが生きる場そのものの破壊)をする人間こそが『寄生獣』であるというメッセージがタイトルに込められています。

 

その言葉を北村一輝演じる広川が放つんですが、実は寄生生物達を先導し、人間社会への侵食を推し進めていたその広川が生身の普通の人間だったという見事なオチ

 

 

人間が寄生獣である側面と、他者を思いやれるという美徳の面

 

寄生生物を登場させることでそのいずれも描き、その矛盾を浮き彫りにします

 

そして描き出した果て、最後に「人間はそれでも生きていきたい」というセリフで物語を締める。

 

突き詰めていけばそれでしかない、この究極の「エゴ」を言葉にすることで、この映画の「」や「説得力」が非常に高まってます。

 

 

──────────────

■映像クオリティや世界観の再現について

──────────────

やはりすごいのが、これだけのSF要素や描写・ビジュアル満載の作品を邦画で違和感なく魅せる白組並びに山崎隆監督の手腕ね

 

白組が関わってるんだからこのレベル当たり前、そう思わせることの凄さね。

 

 

公開当時からこの映画がもっと評価されるべき!と思いオススメ記事を書こう書こうと思ってここまで来てしまいましたが、『ゴジラ-1.0』公開をきっかけに本気で書き始めました。

 

結局記事出しがゴジラ公開後になっちゃった上に、アカデミー賞視覚効果賞ノミネートなんて偉業を果たしちゃったもんだから、↑の「VFXすごい!」なんて今さら何言ってんだの世界になってしまいましたw

 

今後、白組や山崎監督はゴジラ前・ゴジラ後で語られるのではないかと思います。

 

 

(改めて『ゴジラ-1.0』、アカデミー賞視覚効果賞ノミネートおめでとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!泣)

 

 

──────────────

■音楽について

──────────────

本作の音楽を手掛けたのは、山崎監督とはもう何作目になるでしょうか、黄金タッグの佐藤直紀さん

このブログにも何度も紹介させていただいています。

 

今作の作風はというと、ストイック直紀となっております。

 

全体的にメロディアスで派手なスコアではなく、インスト感のある感じる音楽になっています。

 

それがねー格好いいんですよー。

 

 

ものすごく映像や映画そのものを尊重してる感じがしてます。

 

全くもって映画の邪魔してない。

それどころか必要なところに必要なぶんだけ充てている。山崎×佐藤タッグのこれまでの作品の中でも、完璧な音楽演出だと個人的に感じています。

 

 

前編ラストの対決シーンに、あの女性コーラスの神聖な雰囲気の音楽をあててるあたりも良いですよねぇ。

 

勝手なジンクスですが、山崎貴×佐藤直紀の黄金タッグの作品でメロディレスなストイックめのメインテーマが採用される際は一般ウケして批評と興行収入ともに良い傾向にあるような気がします。

 

ゴジラ-1.0

アルキメデスの大戦

永遠の0

・海賊と呼ばれた男

 

また次の作品も楽しみにしてます!

 

「楽しみだ・・あ・・・ぁぁぁ・・あぁ」

 

──────────────

■魅力的なキャスト

──────────────

ミギー役のキャスティング、よく思いつきましたよね!

 

賢さ可愛さちょっとズレた感じや不気味さ、全部兼ね備えた人、阿部サダヲ以外いないのでは?と思わせるハマりっぷり!

 

 

作品自体なかなか哲学的ですしグロいシーンもある中で、実際にミギーが動いて新一と親交を深めていく会話などは、日本にも古くからある半獣(半妖)半人のフォーマット(例えばど根性ガエルのピョン吉など)で馴染みがあり、それがコミカルさをもたらしてます。

 

新一とミギーのファーストコンタクトから合流の過程が前編の大事な魅力や核となっています。

 

 

一方の染谷くん

 

キャリアの長さを感じさせる圧巻の演技

 

彼がこの前後編の壮大な物語の中で一番変化する人物です。

 

人から寄生生物へ、寄生生物から人へ、行って帰ってくる演技をシームレスに演じています。

 

髪型の演出は取り入れつつ、表情や纏う空気で変化を表現しており、すごいなぁと思うばかり。

 

 

あとハマりすぎなのがもう一人。

 

東出昌大、合いすぎでしょw

奇妙というか、違和感のあるというか、感情の起伏を感じにくいのっぺりした喋り方故なのか、この

 

アンドロイド役とかやらせてもうまそう。

 

 

そして橋本愛

 

彼女の出演作は数あれど、この映画の橋本愛が一番好きかもなぁ。

 

一番観客に寄り添ってくれるキャラクターというのもあり、彼女が出てくるとホッとするというか、めっちゃ可愛く見える

 

 

商業作にしてはそれやりに攻めたベッドシーンがあるんですが、そこの演技が説得力あって良かったです。

 

完結編の中盤からはこれでもかと"人間"を浮き彫りにしていきます。

 

他者を思いやり赤子を育てる思いやり、奪われることでの憎しみetc.

 

 

その中に、危機に瀕した時の生存本能から来る性欲の向上というものもある気がします。

 

人間や動物は生存の危機に晒されると種の保存という本能ゆえ「性欲」が反応すると言われてます。

(余談ですが、東日本大震災からしばらく、営業している風俗店がバブル状態だったらしいという記事を読んだことがあります)

 

まぁ、そこでは種の保存には繋がらないよねという皮肉は置いておいて、地球・人間・人間以外それぞれの種の生存本能に端を発した作品として、余す所なく人間を描けてるような気がしました。

 

(↑の寄生生物を演じてるのが実は桜井ユキ)

 

いやー、それにしても冒頭で書いた通り深津絵里がすごい…!

彼女だけでもすごいのに、浅野忠信もオーラ全開で出てくるし、ピエール瀧も人間味のしない役がぴったりでぴったりで。

 

 

新井浩文もこういう役ハマりますし、とにかく本作のキャスティングディレクターが天才かもしれません。

 

 

──────────────

■欲張りで余計な一言

──────────────

ツッコむとすれば本作のラスト、浦上とのシーンなんですが、あまりキャラクターや背景が描かれてない分唐突に感じました。

 

というのと、二人とも助かった後にカメラは引いていき屋上全体が映るのですが、浦上の姿がないのは何故なんでしょう。。。

 

ここまで単純で大胆なミスはなさそうに思えるので、何か「意図」を見出したい気持ちになってるのですが、未だに分からず。

 

浦上vs新一&聡美の対峙によって人間の両面を示す形で本作は幕を閉じます。

 

このラストに持っていきたいためのファクターとして浦上が存在しているという理解で良いのだと思うのですが、個人的にはあと少し何かが欲しかったなぁと。

 

欲張りですみません(笑)

 

「欲張りなやつは、喰い殺せ」

 

──────────────

■あとがき

──────────────

最後に欲張りな事を書いてしまいましたが、とにかくこの作品を推したい

 

テーマも非常にシリアス且つ重大なものを扱っており、展開や描写・表現もだいぶハードで大人向けの作品ですが、アクションやドラマ含め非常に上質な娯楽作でもあります。

 

※画像

 

あー、もっかい映画館の大きいスクリーンで観たい!

 

──────────────

■『寄生獣』あらすじ

──────────────

【寄生獣】

人間を捕食する謎の寄生生物“パラサイト”が出現。

 

高校生の泉新一にもパラサイトが近づくが寄生に失敗し、やむなく新一の右腕に寄生する。

 

パラサイトに“ミギー”と名づけ、奇妙な共生生活を送り始めた新一は、人対パラサイトの戦いに身を投じていく。

 

 

【寄生獣 完結編】

右手に寄生生物ミギーを宿す高校生・泉新一は、要注意人物として人間からもパラサイトからもマークされていた。

 

いまや、新一の住む東福山市は、市長・広川を中心に組織化されたパラサイト達が、一大ネットワークを作り上げていた。

 

一方、人間側も、寄生生物殲滅を目的とした対パラサイト特殊部隊を結成。

 

アジトと化した東福山市庁舎に奇襲を仕掛けようとしていた。

 

激化する戦い・・・。

 

人間の子を産み、人間との共存を模索するパラサイト田宮良子は、新一とミギーの存在に可能性を見出したが、肝心の新一は、母親を殺された事件がきっかけで寄生生物への憎悪を募らせていた。

 

そんな彼らの前に、最強パラサイト・後藤が、その姿を現した。

 

生き残るのは人間かパラサイトか。

 

そして「寄生獣」とはいったい何なのか。

 

新一とミギー、最後の戦いがついに始まる。

 

 

(映画『寄生獣』公式サイトより)

 

──────────────

■予告編

──────────────