№26
日付:2024/6/23
タイトル:小早川家の秋
監督・共同脚本:小津安二郎
劇場名:TOHOシネマズ小田原 PREMIER
パンフレット:なし ※キネマ旬報社刊「午前十時の映画祭14」(\1,400)あり
評価:8.5

 

1961年に公開された、小津監督の最後から2番目の作品(ちなみに先日観た「宗方姉妹」は「むなかた」ではなく「むねかた」でしたが、本作も「こばやかわ」ではなく「こはやがわ」)。

今でいう“事業継続”が難しくなった造り酒屋を営む一家の物語。中村鴈治郎演じる酒屋の主人の放蕩振りと、それに手を焼く長女夫婦。そこに亡き長男の嫁の再婚話に次女の縁談といったいつもの恋バナを盛り込んだ人間模様を描いた本作。


小津作品で唯一の東宝作品。東宝側の意気込みを受けての事なのか、常連の原さんや笠さんや杉村さんに加えて、やたらと登場人物が多い(当時の“東宝オールスターズ”みたいな感じ?)。wikiによると、撮影スタッフも全て東宝が用意したとの事ですが、そんな環境の違いを感じさせる事なく、それでいていつもの松竹作品とは異なるキャストが新鮮味も醸し出している。今となっては貴重な1本。

 

当然の事ながらこの時期の所謂“小津調”は完成の域にあり、姉妹の立ったり座ったりのシンクロ率の高さに見惚れてしまいます(笑)。

暗く悲しい葬送曲で終えるそのラストは、2週間前に観た「宗方姉妹」とあまりにも対照的。人の死に対する無常観、死生観がストレートに描写されていて、晩年の作品という点も踏まえるとやるせなかった。

 

傷一つない綺麗な映像に、4Kデジタルリマスター版の恩恵をしみじみ感じます。基本保守的な監督さんですが、カラー化だけはもっと早くチャレンジしてくれていたらと改めて思ってしまいました。

 

 

パンフレット代りに購入した「午前十時の映画祭14」のプログラムには、秋子(原節子)と紀子(司葉子)が対照的な決断を下すかのように記していますが、決してそんなことは無い。二人とも自我を通す女性を凛と演じていらっしゃる。