№45
日付:2023/12/24
タイトル:ほかげ
監督・脚本:塚本晋也
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン2
パンフレット:あり(\1,000)
評価:5

 

過去自分が劇場で観た作品の中から印象に残る戦争映画を選ぶと、真っ先に挙がるのが「暁の7人」。胸が締め付けられるような作品だった。

作品の出来には何の共感もしないけれど、銃弾の飛び交うリアルさに慄いたのが「プライベート・ライアン」。喉元掻っ切る肉弾戦のシーンもその生々しさに固まった。

クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」は、これを交戦国である米国側が描いたという事に驚きを禁じ得なかった。イーストウッド監督作品の中でも上位にくる1本。

 

いずれもエンタテインメントな作品ばかりで自分が嫌になる。例えば「火垂るの墓」や「はだしのゲン」のような作品は、その真っ当さやメッセージの正しさは伝わってきても作品そのものに惹かれはしない。

 

戦後の焼け野原に残された女(趣里)、戦場の理不尽を持ち帰った男(森山未來)、戦争孤児(塚尾桜雅)の3人。

救いようのない、男の過去と女の行末を描きつつ、その無間地獄を受け入れる2人とのふれあいから少年が選ぶこの先の未来。

製作・監督・脚本・編集と可能な限り自作をコントロールする1960年生まれの塚本晋也監督はほぼ同年代。戦争を知らない世代が正攻法で、終戦直後に蠢く市井の民を描いた作品。そのまま舞台化出来そうな狭い空間で繰り広げられる物語は、何処かで見聞きしたような戦争の悲惨なエピソードをトレースしているようで新鮮味には欠けていた。3人が各々対峙する三者三様の最後の一線に対して、塚本監督の視線が最後まで優しかったのが救いです。

 

 

 

 

パンフレット

・解説
・物語
・監督ステイトメント
・監督プロフィール
・出演者プロフィール
・スタッフ・プロフィール
・祈りの映画、その厳しいやさしさ 川口敦子(映画評論家)
・闇の奥、あるいは生への執着 立田敦子(映画ジャーナリスト)
・戦争の終わらなさ 武田砂鉄(ライター)
・塚本晋也 制作日誌
・クレジット