№16
日付:2022/5/13
タイトル:シン・ウルトラマン
監督:樋口真嗣
劇場名:シネプレックス平塚 screen7
パンフレット:あり(\990)
評価:6点

 

「シン」の意味は世代によっても異なってくるのでしょうが、庵野さんより1学年下の私にとって大事なのは「真」かどうか。そして「真」とは、“原点”であるかどうか。

かつて東京都現代美術館で拝見した、生みの親である成田亨氏の「SFX(特殊撮影)の可能性」という文章の中に、以下の記述がありました。

「後年、それ以後の怪獣、宇宙人のデザインでいいのが現れないのはどうしてだろうとよく聞かれます。私は『それはデザイナーがデザインするからだ』と答えます。」

画家や彫刻家が本質に迫ろうとするのに対し、デザイナーは自己探求よりも他者の目が気になり、他者に好かれるものを求め、結果ウルトラマンに角を生やしたりするのだと当時の作り手を厳しく批判し、嘆いていらした。

「昔はよかった」と過去を振り返るのはオジサンの悪い癖ですが、こと本シリーズにおいては紛う方なき真実。

 

TVシリーズのエピソード、登場する怪獣と異星人を巧みに再配置し、この時代に蘇らせた手法は「シン・ゴジラ」同様。着ぐるみとSFXとを併用しながら、細部にわたりオリジナルへの敬意に溢れた世界観を実現している。特にウルトラマンのフォルムは、当時のオリジナル以上に古谷敏さん的でもある。ローアングルとハンドカメラを多用したカメラワークや、日常風景×SF的非日常感覚の同居がもたらす奇妙なリアリズム。「ウルトラセブン」を最後に消滅したこの質感を、庵野さんは現代に蘇らせた。これぞ「シン」の「真」たる所以。

ただ今回は112分という上映時間内での駆け足感も否めず、NETFLIX等でお金もかけながらシリーズ物として制作した方がもっと充実した作品に仕上がったんじゃないかと思えた。

 

残念な点を挙げるとすれば、異星人同士の戦いとラスボスに挑むシーン。怪獣が暴れ回るだけのゴジラ映画にはなかった、ヒト型の格闘演出が庵野さんは苦手らしい。これは「キューティハニー」においても感じられた課題であり、本作が傑作の域に達しない理由が其処にある。この点は「シン・仮面ライダー」における不安要素でもあります。

 

本作において、円谷プロダクションは一協賛企業としてしかクレジットされていない。そんな本作の出来を円谷英二氏と成田亨氏が観たらどんな感想を抱いたのだろう。円谷氏は煙草を燻らせながら「やるな」とばかりにニヤリとし、成田氏は言葉にならない感涙に咽ているのではと、勝手に想像しています。

 

 

ベータカプセル欲しかったなぁおねがい

 

 

 

 

パンフレットには「ネタバレ注意」の帯付き

製作、企画、脚本(単独)、編集、コンセプトデザイン(単独)、撮影、画コンテ、タイトルロゴデザイン、モーションアクションアクター、そして総監修(単独)。

本編に関して庵野さんが担った役割がこれだけある。真のオーナーである事は誰の目にも明らかですが、本パンフレットにおいて庵野さんのコメントは一切なし。

 

チラシ①表

チラシ①裏

チラシ②表(裏は①と一緒)

チラシ③表

チラシ③裏