前回に続いて、1970年代半ばのプジョーのカタログをご紹介します。Part 2は、ミニヴェロと軽快車のカタログです。
表紙はミニヴェロに乗ったピンクのドレスの女性です。
最初のページは女性ファッション誌風の写真。
こういった小道具にふさわしいオシャレな雰囲気をプジョーのミニヴェロは持っていました。
そのミニヴェロがこちらのNS40です。
正直に言うと、当時、プジョーの自転車の中で私が一番『欲しい!』という衝動に駆られたのが、このミニヴェロです。
緩やかにカーブしながらダウンチューブからチェーンステー、シートステーまでU字型に繋がっているユニークなフォルムのフレームに、ヨーロッパらしいオレンジのカラーリングなど、とにかくオシャレな印象が鮮烈でした。
また、22インチのミニヴェロとはいえスポーティーな面も持ちあわせていて、4段フリーにサンプレのプレステージが装着されています。このプレステージの赤いエンブレムがまたこの車に似合っていました。さらに、シートチューブの後ろには短いインフレーターが装着されています。
こういった設計思想やセンスは、当時の日本の自転車には無かったもので、私は衝撃を受け、この車に一目惚れしてしまったのです。
先日、フリマで久々にこの車を目にしましたが、やはり欲しくなってしまいました。現代でもこの車が街に停まっていたら、まちがいなく二度見してしまうでしょう。それぐらいオシャレです。
さて、次のページは軽快車です。『vélos dame』というのは『女性用自転車』という意味で、女性がターゲットですね。
紹介されているのは3車種で、左のPNS22とNS22は、前ページのNS40のシングルギアバージョンです。PNS22の方は折りたたみ式でダウンチューブが二つ折りできるようになっています。現代のミニヴェロと同じ方式ですね。どちらもクイックレバーでサドルの高さが調整できるようになっています。
右下のPA25はミキストフレームの26インチ車で、フロントとリアのキャリアが付いている、いわゆるママチャリ的な車だと思いますが、ちゃんとインフレーターが付いてますね。サイクリングにも使えるということでしょうか。このあたりの思想がプジョーらしいところです。
最後は、プジョーの歴史やパーツのブランド、自転車の車種など本場の自転車文化をレクチャーするページで、『フランス=おしゃれ』『本場モノ』『一級品』といったプジョーのイメージ訴求をしています。
『パリの街角から、あなたの街角へ。プジョーで走ればそよ風の気分』『おじいさんの時代から、自転車といえば、プジョーでした。』『軽くて速い名車中の名車。その名はプジョー・ロードレーサー。』『プジョーを調べてみましょう。小さな部品まで世界の一級品です。』『このさい自転車のことをおぼえちゃいましょう。』といった女性誌風の見出しが並んでいますが、その中でツール・ド・フランスに言及しているのはさすがですね。
裏表紙にはフレームスケルトンが載っています。
ミニヴェロのフレームサイズは420mm、ミキストのフレームサイズは468mmとなっています。
2回に渡って70年代のプジョーのカタログをご紹介しましたが、プジョーの自転車が当時の一般的な若者にどこまで受け入れられたかは、正直なところ、わかりません。ただ、自転車少年だった私には心躍るものだったことは間違いなく、今見ても当時の気持ちが鮮明に蘇ってくる、そんなカタログです。