す医学部受験には地域枠入試という独特のシステムがあるのはご存じですか?
「地域枠入試」とは、医師不足や診療科の偏在が問題となっている地域
将来、地元の医療を支えてくれる受験生のために行われる
医学部特有の入学試験です。
地域医療への貢献などと銘打って、主に医師の足りない地方で
医師不足の解消のために行われています。
うちの子どもたちは3人とも、地域枠は全く検討しませんでした
第一志望のA大は地域枠入試がありませんし
実情を知っているととても勧められない
地域枠入試の合格者には自治体から奨学金が給付されます
これは貸与で、返還義務があります
9年間(給付額によっても違いますが)
行政が指示する医療機関で働けば、返還義務がなくなります
そうでなければ、通常10%以上の利息がかかります。
奨学金の額は自治体ごと違いますが、授業料+生活費10万以上
国公立大学の場合、6年間の授業料が350万円程度なので
卒業までに1000万を軽く超える借金を背負わされます。
順天堂など私立の医学部の授業料を支給する自治体もあり、その場合はさらに高額です
指定する医療機関というのは各県によってさまざまで
研修医のうちは県庁所在地の医療センターや県立病院などいわゆる中核病院で勤務できますが
その後はかなり田舎のへんぴな病院に派遣されることもあります
派遣先は地域入試の種類や各県の制度によりさまざまなので一概には言えません
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211124/11/chyonpaku/4f/8d/p/o0400036615036352129.png?caw=800)
ちなみに長男が卒業したB医大は地域枠に2種類あります
田舎のどさまわりパターン(語弊があるのを承知の上で)のは
いわゆる学校推薦で地元出身者限定
試験は共通テスト+面接+総合テストと
難易度は低め
もう一つは県内の主要な一流病院や大学病院で研修ができるので
一般枠より人気が高く、難易度も同等というもの
各大学や自治体によって内容が千差万別
なのですが
これはかなり問題のある制度ではないかと思います
地域枠入試について詳しく知りたい方はコチラ![ダウン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif)
医学部の地域枠受験 | 医学部偏差値比較ランキング※医学部の正しい選び方 (xn--ekry3qey0c.jp)
わたしの知人(シングルマザー)の娘さんですが
某国立医科大学の地域枠で入学、奨学金を受け取り
親からの援助を受けず自力で大学を卒業しました
その娘さんが卒業後2年目に妊娠し、出産
当然その県指定の病院で勤務を続けなくてはなりません
ただ、夫も、子育てであてにできるお母さんも首都圏在住
夫と同居して研修できる病院を探しましたが
地域枠の縛りがあるので近くの病院では研修を受け入れてもらえない
たとえ奨学金を一括で返せたとしても
受け入れてくれる研修病院がないのです
医者は免許があるだけではだめで
初期研修で2年
その後専門医を取るのに最低で5年
専門研修ができないということは
臨床医としての将来にとって大変なダメージ
(もちろんいろんな働き方がありますが)
専門医を取るまで5年間、一人で赤ん坊を育てろと言うことでしょうか
それとも、地域枠なのに妊娠出産してしまった彼女に非があるのでしょうか?
厚労省は地域枠を外れて、地元以外の病院で働こうとする医師を雇用しないように
病院に通知を出しているそうです
これを破ってマッチングで地域枠の研修医を受け入れた病院は、補助金の減額や研修医の採用人数の減員という処置が待っていますので、病院側も採用をためらいます
いわゆるブラックリストに載ってしまうのです
お金を一括返済して、義務から逃れる人が一定数いたのは事実で
制度が形骸化しないよう
圧力を強めようとしてるのでしょう
今は特に専門医制度になので
厚労省の息のかかった基幹病院での研修ができないと
専門医を取るのは非常に難しい
こんな身売りのような制度で
若者の将来を縛るのはおかしいのではないか
もちろん、地方の医師不足は深刻です
何としても医師を確保したい自治体の切迫感は理解できる
ただそれはもっと医療者全体(私も含めてですが)
もしくは国として考えていくべきことで
医師を志す若者だけに負担させるのは理不尽です
地域枠は確かに、高校からの推薦があったり
一般枠より少し入りやすかったりします
もちろん受験生は制度の説明を受け、宣誓書にサインもします
でも人生にはいろいろなことがある
先ほどのお嬢さんのように、妊娠や出産
さらには病気になったり事故にあうこともあります
入学時は地域医療がやりたいと思っていても
6年間のうちに興味や関心が変わるのはよくあること
地域枠には地方勤務どころか救急や産婦人科など
専門分野すら固定されてしまうものもある
(感染症専門医の地域枠という制度もできました)
これを18歳の高校生に判断させ責任を負わせるのは、あまりに酷です
医学部がいくら医師養成学校だからといって
他の学部ではあり得ない制度です
卒業してすぐの9年間というのは
医師にとって大変貴重です
その間、受けたい研修が受けられない
自分の専門を深められない
その後の医師人生を大きく変えてしまいます
さらにはライフプランとの両立という問題もあります
もちろん、産休や育休中の勤務は免除されますが
義務年限が後ろに伸びるだけです
だって約束でしょと言われるかもしれませんが
医師のキャリアのことなど何も知らない受験生に
その働き方やさらには専門医制度を
きちんと理解し、賢明な判断をしろというほうが無理な話です
実は昔から、医療界には同じような制度がありました
看護学生に奨学金や学費を出し、卒後に決まった年限病院に勤務させる
いわゆる「お礼奉公」
これで経済的に恵まれない家庭のお子さんでも、看護師になることができました
自治医大などもこれに類する大学です
もともとその地方の出身の学生さんが
どうしても医師になりたいが
学力がやや不安、浪人できないなどの理由で
事情をよく理解したうえで利用するのはいいですが
単に入りやすい、奨学金がもらえるなどの理由で
選んでしまうのはリスクが多すぎる
シングルマザーなど経済的に厳しい家庭であっても
国公立大学には授業料免除の制度がありますし
支援機構の奨学金を、たとえ有利子で満額借りたとしても
医師になれば余裕をもって返済できます
わざわざ、こんな理不尽な縛りのある、奨学金に頼ることはありません
地域枠で自分の将来をせばめてもいいのか
よく考えてほしいです
約束してしまったから、奨学金をもらってしまったからと
不満や不安があっても
当事者の医学生や医師はなかなか声を上げにくいようです
それ以上に問題なのが医療界と厚労省ですね
よく事情を知らない、どうしても医学部に入りたい受験生を、少しだけ入試のハードルを下げて誘い、奨学金を貸し付けて将来を縛るのです
以前の医局制度も相当に非人道的で
医局の都合で地方に飛ばされたり
ひどい労働条件で働いたりしましたが・・・
令和の時代になってもまったく変わっていない
あまりに封建的で旧態依然としています
制度自体を全否定するつもりはありませんが
もう少し個人の事情も考慮した
血の通った制度にしていかないと、支持は得られない
若い世代の方も同じような意見を持っています
ご参考までに
医学部の地域枠入試を受けるべきか?|あがぺー|note
受験生必見!医学部受験の地域枠の闇 (meditblog.com)