カレは、私を尊重し、私にどうしたいか、常に訊ねる。
しかしそれは、“枝葉”に限ってのことであって、大きな“根幹”のところは、カレのやり方を通している、そういう風に思える。
そういう人なのだと理解し、それを受け入れてからとてもラクになったけど、最初はかなり戸惑った。
例えば、デートの設定はカレのペースで決まり、phone sexも、カレのタイミングである。(私は自分から電話をかけない。何でかわからないけど)
それが最初は不満と不安の元だった。
―電話してほしい。
phone sexの時だけではなく、おはようとかおやすみとかで、一分だけでも顔を見せるとか、用もなく電話してほしい。
―もっとLINEしてほしい。
今日はおはようと、お疲れ、それしかしてない。
私のことを全て知りたいっていったのに、挨拶しかしてない日がある。
そんな風に、もっと、もっと…
と思っていた私の求めるペースと
カレのペースは一致していなかった。
それは、小さな不満が蓄積して大きな不安へと成長するのに充分だった。
なぜ電話が少ないの?
どうしてラインしてくれないの?
私って恋人なの?
オンラインのセフレなの?
そういうことを、思っていても、すぐに相手に言わないようにしていたけど、
それでもカレには随分、“なぜ?”と、“もっと” をぶつけてしまったと思う。
カレは
『キミは、僕の一日を知っているよね?長い仕事と、家の往復。そして少ない休み。
同僚とさえ、この二年、仕事のあとの付き合いを断っている。
誰とも会わないようにしている。
病気になるわけにはいかないから。
僕の生活を知っているし、僕の気持ちを伝えているのに、なにがそんなに不安なの?』
そう言われても、最初のうちは、納得できなかった。
しかし、最近では、実際に会うことが、コロナや距離で難しい現状で、カレは週に一度のphone sexを「デート」と認識しているのではないだろうか、と考えるようになった。
きっと、コロナも距離もなければ、私たちは実際には毎週末、会えていたのではないだろうか、と。
本当のところはわからない。
カレも私も、近くに引っ越す予定はないので、この先もわからないままである。
でも、そう思うようにした。
週に一度のphone sexは、私たちにとって、デートのようなもの。
「一ヶ月に一度しか会えないのって、淋しすぎる」とネガティブに思うより
「週イチ、オンラインでデートしている」と思って満たされて幸せな気分でいる方が
きっと私たちの関係にもいいに違いない。
『僕には自分のやり方がある。
他の人と同じでならなければいけないことはない。』
こう言っていたと教えてくれたのも、チエ。
「一見レディーファーストに見せかけといて、実は頑固な亭主関白のオッサンだよ!」
って言ってたなぁ、チエ。