”YouTubeで観る韓国映画100選”はちょっとお休みして、あのイ・ジュヨンが久しぶりに見られる、しかもヒロインは何とファン・ビンビンなので…中国から韓国へ逃げ新しい生活を送る女性が、とある緑髪の女性と出会って過ごす二晩の危険な冒険、みたいな、確かに韓国版「テルマ&ルイーズ」と呼ぶのも分かる気はする中国製クライム・ファンタジー…ただいま上映中「緑の夜」

 

インチョン国際空港、保安ゲート。中国人保安検査官ジン・シャはゲートを通った搭乗客に金属探知機を当てている。すると緑髪の若い女の足元付近で探知機が反応する。ジン・シャは女に靴を脱ぐように言い、女は靴を脱ぐが、その時上司の次長が”靴の金属に反応しただけで通せ”と指示する。緑髪の女は憎まれ口をたたき、バッグを取り、靴を脱いだ裸足のままゲートを出てロビーへと戻っていく。仕事が終わり空港を出たジン・シャだが、あいにくバスが出た所だ。そこへさっきの緑髪の女が近づいてくる。裸足の彼女は、靴の貸しがある、とタクシーを勝手に捕まえ乗り込む。二人がつましいアパートに着くと、ジン・シャは古いスニーカーを与えるが、履く前に足を洗え、と命じ、緑髪の女は浴室に入るが、水が出ない、と言う。ジン・シャが管理人に文句を言いに行くと、ジン・シャの夫イ・スンフンに、退去するから電気と水を止めろ、と言われたと言う。開栓してもらい部屋に戻ると、緑髪の女の姿が見えない。ジン・シャが女の鞄を調べるとそこには大量の麻薬が詰め込まれている。そこへ緑髪の女が帰って来て、麻薬は中国に運ぶ筈のものだったと言う。韓国で暮らすためだけに結婚した夫と別れるには3500万₩の永住権が必要なジン・シャに、緑髪の女はある危うい提案をする。こうして、二人の危険な二晩が始まるのだ…

 

中国から韓国に逃げて懸命に暮らすジン・シャに、2018年脱税騒動後ハリウッド映画「355」などで復帰した中国が誇る美人女優ファン・ビンビン、緑髪の女に、「春の夢」「なまず」など不思議な存在感で魅了する若き演技派イ・ジュヨン(最近「毒戦」などでベタ褒めのイ・ジュヨンとは同姓同名)、ジン・シャのDV夫に、最近はホン・サンス作品など繊細な演技が光る中年二枚目演技派キム・ヨンホ。

 

これが二作目だという女流監督ハン・シュアイの中国作品ですが、韓国映画としては取り扱わないものの、イ・ジュヨン主演、全編韓国撮影なのでここで取り上げることにご容赦を…一言でいえば、好き嫌いが真っ二つに割れる作品だといえるでしょう。多くの評者、観客があの傑作「テルマ&ルイーズ」と対置してレビューしていますが、同じ爽快感、とするのと、全く及ばず、とする二派に分かれるようです。前者的にいえば、化粧気がなく殆ど笑顔を見せないのに美貌が全く隠せていないファン・ビンビンと緑髪で行動予測不能な天然娘イ・ジュヨンが麻薬を抱えてソウルで苦闘する様は相当にビジュアルだといえるでしょう。一方後者的にいえば、揺れる手持ちカメラ映像はちょっとインディーズっぽいですし、サスペンスとするには語り口がかなり文学的に過ぎる、といった感じだと思います。

 

要するに、曖昧な語り口を良しとしてサスペンスと観るか、麻薬や殺人という生々しい題材を良しとして夢幻物語として観るか、を観客に迫るといった類の作品だと感じます。いずれにしろ、社会の悪意に苦しむ女性二人の不可思議で熱い絆を描くという意味で、共感する観客は少なくないかもしれません。個人的には、ファン・ビンビンとイ・ジュヨンを見ることが出来て、他には何もいらない、といった感じでしょうか…