ネトフリで配信開始、あのIUが見られるとあって…”ホームレス・ワールドカップ”という舞台でのハートウォーミングな人間模様を描いて傑作…「ドリーム」

 

韓国プロサッカーチーム”レッド・チャンピンズ”では海外リーグ移籍が決まっているスター選手パク・ホンチャンの活躍が目立つが、彼にライバル心をたぎらせているのがユン・ホンデだ。チャンスボールでは味方のホンチャンとボールを争い、味方をガードしている、と揶揄される始末だ。さらに悪いことには、記者会見で、詐欺事件で指名手配されている母親についてしつこく聞いてくる記者に”目潰し”を食らわしてしまう。チームは暴力事件のペナルティとして”ホームレス・ワールドカップ”国家代表チームの監督を命じる。母親の事件で金に困っているホンデに選択の余地はない。ブダペストで開催される今年の大会まで2か月しかなく、さらに、視聴率のためには作り笑いくらい安いもんだ、という野心家イ・ソミンという女性プロデューサーが密着取材するという。そしていよいよチームに監督として参加するが、集まったメンバーはサッカーとは程遠い曲者ばかりで、しかも、ソミンが感動的な台本を作ってあれこれホンデに指示する始末だ。ホンデの未来はどこにある…?

 

にわか監督ユン・ホンデに、『梨泰院クラス』「ミッドナイト・ランナー」辺りで大ブレークのパク・ソジュン、野心丸出し放送局PDイ・ソミンに、「ベイビー・ブローカー」でその存在感に仰天した世界の歌姫IU、【選手】栄華に溺れた元悪徳実業家キム・ファンドンに、名脇役キム・ジョンス、保証人になったことから身を持ち崩したチョン・ヒョボンに、大好きなコ・チャンソク、ホンデに敵意を向けるソン・ボムスに、悪役でも教授とか検事の印象が強いチョン・スンギル、悲劇の施設育ちキム・インソンに、「シークレット・ミッション」「技術者たち」辺りから絶好調柔らかい二枚目イ・ヒョヌ、元ヤクザのキーパー、チョン・ムンスに、「ノンストップ」など笑えるヤン・ヒョンミン。【その他】ホンデの指名手配母に、余り注目したことはありませんが個性派脇役ペク・チウォン、ヒョンボンの娘ウネに、無名ですが巧いファン・ドユン。友情出演では、スター選手パク・ホンチャンに、イ・ビョンホン監督「二十歳」の縁からでしょう今絶好調のカン・ハヌル、母親の男友達に、最近大活躍チョン・ソッコ。

 

「キングコングを持ち上げる」(女子重量挙げ)「ホームランが聞こえた夏」(聴覚障害者野球)「国家代表」(スキージャンプ)「プロミス 氷上の女神たち」(女子アイスホッケー)など韓国でマイナーなスポーツに光を当てる映画には秀作が多いと考えますが、その中でも突出した逸品に仕上がっていると思います。”ホームレス・ワールドカップ”(後述)という題材の選び方が秀逸ですし、不満たらたら金欠監督、腹黒野心家美人PD、様々に切ない事情を抱える選手たち、という人物造形が見事ですし、圧巻の脚本でしょう。個人的には史実とドラマの落差が気になる方ですが、本作では基本的にフィクションとして作り上げているのが清々しいですし、一方で、映画の終盤を盛り上げる試合については”選手のポジション、スコア、チームは全て2010年の試合を再現している(”フォーブス”掲載イ・ビョンホン監督インタビューより)”というのが泣かせてくれます。役者もどんぴしゃで、IUの高慢野心家PDが意外にもドハマリですし、大人キム・ジョンス、うじうじコ・チャンソク、もやもやイ・ヒョヌなどなどその魅力は光りまくっているといえるでしょう。個人的には、ホンデの無責任風母親を演じたペク・チウォン、ヒョボンの気丈な娘を演じたファン・ドユンの存在感が特に好印象だったりします。

 

何故に筋肉脳味噌映画「犯罪都市3」の10分の1、110万人余りしか集められなかったのか極めて不可思議ではありますが、文句なしの五つ星です。

 

この映画で初めて知った”ホームレス・ワールドカップ”ですが、”Homeless World Cup Foundation”が主催するホームレス支援大会で例年各国持ち回りで開催されています。ピッチは標準の20分の1と狭く選手は4人というこじんまりしたサッカーで、韓国は2010年リオデジャネイロ大会で初参加(本作のモデル)、大敗するも”Best New Commer(最優秀新チーム)賞"を得たそうです。日本でも有名なホームレス支援雑誌”The Big Issue(Korea)"が後援していて作品にも登場します。

 

楽曲について。映画のクライマックス美しく激しい試合とエンディングを優しく盛り上げるバラードは、恐らくこの映画のためのオリジナル、男女3人組<新人類(신인류)>「格別な応援歌(남다른 응원가)」、名曲です。