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ちょっと「韓国映画クラシック・コレクション」つながりに割り込みますが、900万人を超えたか、とも云われる大ヒット、「国家代表」。

1997年6月、全羅北道のムジュ(茂朱)は、2002年の冬季五輪開催をソルトレイクシティと争っているが、ウィンター・スポーツの不人気や公式競技がないことで不利を伝えられる。そこで組織委員会は、対策の一つとして、スキー・ジャンプの公式チームを作ろうとする。まず子供スキー教室講師パンが代表コーチに選ばれ、彼は、アルペン・スキーの経験者からメンバーを選出する。7歳の時アメリカに養子に出され、実母を探しに来韓しているボブ(韓国名:ホンテ)は、MVPの経験もあるアルペン・スキーヤー。ホンチョルは、高校時代は不良で、今は、キャバレーのウェイター。ジェボクは、有名焼肉店の息子。貧しいチルグは、内職する祖母と少し天然の弟ポングの生活に頭が痛い。そんな連中だが、誰も、スキー・ジャンプを知らず、二の足を踏む。コーチは、ボブには、有名になって母に見つけて貰えばいい、他のメンバーには、金メダルと引き換えにアパートや軍役免除をちらつかせて、説得する。それでも揺れる連中の前に、コーチを「父さん」と呼ぶ美しい娘スヨンが登場し、連中はついに決心する。彼らは、スキー・ジャンプのABCから始めるが、五輪出場には、まずは、年末オーベルストドルフのワ-ルドカップで8チーム中6チームに入ることが絶対条件である…

監督は、700万人に迫った「カンナさん、大成功です」のキム・ヨンファ。ボブに、硬軟自由自在の若手No.1ハ・ジョンウ、パン・コーチに、「カンナさん」に続いて小悪党がお得意のソン・ドンイル、女好きの不良ホンチョルに、『コーヒープリンス 1号店』などで日本にも知られるキム・ドンウク、焼肉屋の息子ジェボクに、個性派若手脇役チェ・ジェファン、寡黙なチルグに、『ぶどう畑のあの男』とかの二枚目キム・ジソク、その弟ポングに、「殺人の追憶」「大統領の理髪師」の天才子役でもう18歳のイ・ジェウン、コーチの飲んだくれ娘に、「なつかしの庭」「ザ・ゲーム」のキュートなイ・ウンソン、焼肉屋の社長でジェボクの父親に、名優イ・ハヌィ、ボブの実母に、40代も半ばにしてますます美しいイ・ヘスク、チルグ兄弟の祖母に、度迫力キム・ジヨン。特別出演では、薬剤師に、昨年大麻で逮捕された名脇役オ・グァンノク、金貸しボスに、もはや貫祿すら感じるキム・スロ、そして、韓国五輪組織委員長に、ハ・ジョンウの実父で息子との映画での共演は初めての筈のキム・ヨンゴン。

まず、素直に、スポーツ映画として観るならば、完璧な五つ星だと思います。パターンとしては、素性の知れない者を集めて…という良くあるものなんですが、スキー・ジャンプという素材が新鮮なことと、コーチ、選手や周辺の人物の人物造型や人間関係が八面六臂の広がりを見せること、オーベルストドルフWC、長野五輪という二つの山場を上手く使っていること、などなどで、笑いと涙一杯のスポーツ感動巨編になっています。まず、スキー・ジャンプの扱い方が見事で、例えば、訓練シーンでは、基礎トレーニングについて、なるほど、こうやって練習するのか、と楽しく納得させられ、まだムジュ(茂朱)のジャンプ台が建築中なことから、工事現場での手作りスロープや廃墟となった遊園地のジェットコースターを利用した練習とかにはかなり笑わせられます。また、実写とCGを上手く組み合わせた、ワールドカップや五輪の再現シーンが凄い迫力に仕上がっているのも大きいでしょう。さらに、ボブの産みの母を巡る話を始め、不法入国中国人娘との許されない恋愛、三角関係、あわやの難病、借金、貧困、格差、といった韓流ドラマ風テーマを散りばめる人間ドラマは、さながら笑いと涙が百花繚乱の様相を呈しています。ただ、素直に観るのを難しくするのが、史実との距離感です。「私たちの生涯最高の瞬間」「キングコングを持ち上げる」と同様、実話に基づいているのですが、余りに、ドラマティックでエキセントリックな物語運びなので、一体、何処までが史実なんだろう、という思いに付きまとわれ、物語へ100%入り込むことを邪魔します。さらに、クライマックスが長野五輪ということもあって、実際は船木や原田が活躍しているのに、選手テロップに「イトイ・シゲサト」の名前が流れたりすると、さらに複雑な思いがよぎったりもします。

やはり、物語を面白くするためには、過度な脚色もあり得るでしょうし、自国の愛国精神に訴えるためには、他国の扱いが歪んだりすることもあるでしょうが、十分理解出来る、とは思いながらも、それが日本に関わるとなると、微妙な思いを引き起こすのも止むを得ません。そこが、傑作「私たちの生涯最高の瞬間」「キングコングを持ち上げる」に比べても、出来ははるかに上だと思えるのに、一歩引いてしまう感じを残す所だと思います。決して、映画の責任ではありませんが、五つ星に出来ないのは、その辺りにあると思います。ただ、五つ星以上の実力があることに、疑いはありません。