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イム・グォンテク監督の大作、「太白(テベク)山脈」 。

1948年10月国防警備隊の一部がヨス(麗水)で反乱を起こした麗水・スンチョン(順天)反乱事件に始まり、大韓民国から共産パルチザンへ、再び大韓民国へ、朝鮮戦争の戦線南下により人民軍へ、そして連合軍、と四度支配者を変える運命を辿る、半島南端に近い全羅南道ホソン(宝城)とヨス(麗水)との間にある小さな町ポルギョ(筏橋)の5年間を描く、3時間近い大作。支配者が変わる都度、英雄が裏切り者に、裏切り者が英雄に変わり、夥しい血が流される現実は、正視に耐えない凄まじさを持っています。

両側から日和見主義と非難される冷静なインテリに、アン・ソンギ、共産パルチザンの頭領に、「風の丘を超えて」名優キム・ミョンゴン、その敵対する弟で俗物の青年団長に、キム・ガプス、共産パルチザンの若者に、「家門」シリーズ『天国の階段』シン・ヒョンジュン、彼の恋人の巫女に、「風の丘を超えて」名演のオ・ジョンヘ、パルチザンの妻でありながらキム・ガプスに犯され囲われる女に、「受取人不明」「青い門」パン・ウンジン、南の鎮圧隊長に、「カル」「なせば成る」アン・ソクファン、南の国会議員に、「アラハン」「王の男」ユン・ジュサン、パルチザンのスパイ本屋主人に、「永遠なる帝国」好演のチェ・ジョンウォン、共産主義の女教師に、「アンニョン、兄ちゃん」名演のオ・ジヘ。

共産主義とか資本主義とか平等とか自由とかの美名の下に行われる、密告、裏切、強姦、殺戮、強奪・・・その余りに日常的な目線で描かれる悲劇の持つインパクトは到底文字では書き切れないのですが、イム・グォンテク監督の凄い所は、親子、兄弟、夫婦、恋人、あるいは寂しさから情欲に溺れる未亡人といった様々な人々と彼らに襲いかかる悲劇を、あからさまに、そして、きわめて映画的に描いている所、つまり、不謹慎かもしれませんが、3時間近く全く飽きさせない所にあると思います。凄まじく重いテーマを描きながら、一方で、エンターテインメントである映画というものを忘れない監督の力量には、心底驚嘆します。

隣国の歴史を知るだけでなく、CG全盛の最近失われてきた映画が本来持っている底知れない力を再認識するためにも、是非見ておきたい一本です。