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チャン・ドンジクつながりで、キム・ギドク監督に戻って、「青い門(悪い女)」。

これも、『冬ソナ』チンスクが・・・っていかがわしい動機で見たことがありましたが、心を入れ替えて見直した一本。その時の印象で、ここでも「ドロドロした」という形容を使ったことがありますが、とんでもない、生の営みへの柔らかい視線の感じられる名作でした。

青い門のある鳥籠(セジャン)という名の宿の離れで客を取る23歳娼婦に、イ・ジウン、同い年で宿の娘の女子大生に、『冬ソナ』チンスクのイ・ヘウン、父親に、名優「王の男」チャン・ハンソン、母親に、「受取人不明」パン・ミンジョン母イ・イノク、弟に、最近「ハン・ギルス」「カリスマ脱出記」と主演の続くアン・ジェモ、イケメン・ダイバーに「アウトライブ ~飛天舞~」「狂詩曲」チャン・ドンジク、イ・ジウンと入れ代わりに金魚を連れて去っていく娼婦に、「受取人不明」ヤン・ドングン母「オーロラ姫」監督パン・ウンジン。

貧しい海辺の町を背景に、亀、エゴン・シーレの少女裸像、金魚、ウォークマン、飛び込み台といったイメージを巧みに操りつつ、売春、堕胎、暴力、盗聴といった人間の所業を一見粗暴に描きながら、それでいて、人間の生の営みへの尊厳にあふれたこの作品は、ある意味「春夏秋冬そして春」よりも美しい映画かもしれない、ってな気がします。

娼婦を巡って欲情、軽蔑、嫉妬、憐憫といった感情の渦に翻弄されていく家族一人一人は勿論、イ・ヘウンの体を許して貰えない恋人や、強面ながら小心なヒモ男とかに至るまで実に丁寧にそれでいて自然に造形されていること気づき、改めてこの監督の力量に驚かされたりもします。

「悪い男」では明らかに監督の「悪意」を感じますが、ラストの家族一人一人のアップや金魚のイメージを見ながら、少し甘いんちゃうと思えるくらいの「善意」を感じたりも出来る、キム・ギドクの傑作の一本だと思います。それとも、金魚が海で泳ぐくらいだから、観客もまた、娼婦の魔性に囚われてしまっただけなのでしょうか。