僕の生まれ故郷である、埼玉県寄居町。
東武東上線、JR八高線、秩父鉄道の3路線が乗り入れる寄居駅南口付近の様子。(2020年の9月撮影)
かつては栄えた古き良き駅前通りも、今は人通りは少なく、店舗にはシャッターが閉まります。
こちらの駅前通り、数年後には「中央通り線」という2車線の新しい道路になる予定。
真っすぐな道路に、駅前の広いロータリー。
現在、寄居町は道路予定地にある古い建物がどんどん壊され、新しい街路整備(中心市街地活性化事業)の真っ只中。
再開発や街づくりに正解はないけれど、「前の方が良かった」、「街の魅力がなくなった」なんて声はよく聞く話し。
そんな街づくりの中で、「緑化」が重要な役割を担うということは、誰でも認めるべきところであろう。
今、全国的にみても新しい道路をつくった時には、北米原産の「アメリカハナミズキ」の街路樹がとても多い。
赤、白、ピンクの可愛らしい花がとてもきれいな木だが、街路樹にたくさん植えられる大きな理由としては、成長が穏やかで、剪定する手間も少なく、とにかく「管理が楽」だから・・・
寄居町でも同様な理由からか、街路樹はアメリカハナミズキの予定になっています。
僕は、20代後半から30代にかけては、公共の植栽管理の仕事をメインにやっていましたので、今まで数百本、数千本の街路樹に関わってきました。
その後、東京国立市のソメイヨシノの街路樹の伐採問題の事例に関わり、理想の街路樹の形を追い求めてきました。
街路樹は何を植えたら良いのか?
同業者の間でもそんな議論はよくありました。
サクラ?イチョウ?ハナミズキ?
国立の件や、街路樹サミットを経てからは、僕は街路樹への考え方が変わり、
そもそも、街路樹が同じ樹種で、大きさや高さも同じ、という固定概念から抜け出す必要があると思います。
今、僕の考える理想的な街路樹とは、
在来樹種を中心として、高さや樹種は様々、高木から中木、低木まで森のような木々がセットになったような街路樹です。
道路の付属物と位置付けられ、デコレーション的に植えられる街路樹を、「森の中継地点」としての機能を果たして欲しい、、と思っています。
写真提供:寄居町
寄居町は、奥秩父の山間部に端を発する荒川が中心を流れ、ここから広い関東平野が始まります。
市街地の北側にはハイキング客の多い標高330mの鐘撞堂山があり、南には荒川。
地形的にみても、鐘撞堂山に降った雨は荒川へと流れます。
ただし、目に見える川の水というのはほんの一部分であり、土の下には人間の血管のような水脈・気脈が張り巡らされ、大地は静かに呼吸しているのです。
その水脈・気脈(呼吸)を繋ぐ役割を果たしているのが樹木の根であり、山と川の間に市街地を有する寄居町では、南北に貫く街路樹や街中の大きな木々が重要な役割を果たすと考えています。
2019年6月の寄居町100人会議で、「日本一の街路樹づくり」を宣言!してしまい(笑)
そこから、行政や地元の方々との街路樹検討会議で僕は専門家として呼ばれるようになりました。
そして地元商店街の方々と連携し、中央通り線の街路樹を、
「在来樹種の寄せ植えの街路樹」にしたいと提案してきました。
僕の知る限り、今までの日本の街路樹の歴史を見てもこれは前例がなく、日本初となるのでしょう。
しかしながら、全国的に前例のないものを提案するのも至難の業。
スタッフを絵を描いたり、
植栽イメージをつくり、事細かく説明してきましたが、
1m×1m足らずの狭いスペースに本当にこんなにたくさん植栽できるのか?と皆さん半信半疑。
最後はやはり現物を見れないか?
というところに行きつきました。
前例がないので、事例もありません、
どうしようか、、、
どこかにモデルとして植えちゃおうか?
ミニチュア版をつくろうか?・・・
そんな事を考えていたら、
中央通り線予定地の空き地を使い、期間限定で小さな広場をオープンする、という話が持ち上がりました。
その名も「GOOD PARK」。
寄居町内外の造園、園芸事業者、エクステリア業者がデザイナーと連携し、民間主導による広場づくりの実証実験プロジェクト。僕は植栽担当として関わる事になりました。
期間は10月半ばから2月末までの4ヶ月間。
人通りの少ない寄居町の中心市街地に、小さな広場ができることで、町にどのような変化が起こるのか。
人の流れがどのように変わるのか。 この場所がどのように利用されるのか。
この場所の周囲で商売が成り立つのか。 民間主導(官民連携)による整備・運営がうまくいくのか。
そんな主旨の元に準備が始まったプロジェクトでしたが、
アスファルト舗装の上での植栽ということで、メッシュコンテナに木々を植えこんで植栽をする事になりました。
WOODSMART伊藤さんによる、イメージパース
このメッシュコンテナ、サイズが1m×1.2mや80cm×1mほどで、中央通り線の街路樹の植栽スペースとほぼ同サイズ!!
だったらここに提案する理想の街路樹をつくってみよう!ということになりました。
早速、会社内で植栽のシュミレーションを始めました。
1m程度の植栽スペースに、本当に何本も木が植えられるのか?
5mくらいある高木樹木から1m程度の低木まで数本を寄せ植えしていきました。
根鉢の大きすぎるものはコンテナに入りません。
根鉢をギリギリまで削り、できるだけたくさんの木々を植えてみたい!
高木から中高木(亜高木)、中木、低木、下草、、、
森の階層的な植生をメッシュコンテナの中で表現していきます。
という事で、工期も迫り、いよいよ現地での設置作業。
秋の忙しい時期でしたが、今まで前例のない寄せ植えの街路樹づくりにチャレンジ!
そして、試行錯誤の末、2020年10月16日、全ての植栽コンテナが完成し、設置。
GOODPARKはオープンしました。
植栽コンテナの数は、12箇所。工事現場だったところに、森が出現しました!
木製のパレットや、カウンターテーブルが各所に置かれ、くつろげるスペースに。
そして理想の街路樹として思い描いていた、「在来樹種の寄せ植え」の植栽もついにお披露目しました。
コナラを主木に、アオダモ、ヒサカキ(常緑樹)、モミジ、ナツハゼ、アセビ・・・
高木から中高木、中木、低木、下草まで、在来樹種を中心に、多種多様な植物を1つのコンテナに植えました。
下草は、ヤブランやフッキソウ、苔、花物など、、その他たくさん、、
木々の足元も彩りは豊かに!
植栽地内に起伏地形をつくり、仕上げは、小さな玉石を使い、荒川の河原の景色のミニュチュアを再現!
別の植栽プランターも紹介します。
こちらは、アカシデ、陽光サクラ、ヤマコウバシ、アオキ、トサミズキ、ヤマブキ・・・
赤松、サワフタギ、ドウダンツツジ、アズマシャクナゲ、トベラ・・・
シラカシ、ガマズミ、ジューンベリー、ヤブラン・・・
様々な樹種の組み合わせを数パターン制作しました。
また、GOODPARKはコロナ禍であっても屋外ということもあり、たくさんのイベントが開催されました。
GOODPARKでヨガ。
別角度から、、、
何ともいえない光景(笑)
第30回の28会もGOODPARKで開催。(今回の植栽について力説する押田)
また、昨年同様、市街地にある落ち葉を集め、
GOODPARKへ運び込み、
商工会 柴崎会長にも落ち葉を持参していただきました。
落ち葉感謝祭!として、落ち葉プールで遊びました。
最終的にこの落ち葉は、町内の有機農家の井伊農場へ運び堆肥化させ、そこでできた野菜が市街地の飲食店に戻り循環する、というイメージです。
クリスマスシーズンでは、
花音の森 堀さんによる、クリスマスリース、スワッグづくり、、
花思草 瀬沼さんによる小枝ランタンと、クリスマスオーナメントづくりのワークショップ、、
また、地元の切り絵作家、室岡さんの作品を飾っていただいたり、 (写真提供:寄居町)
夜は明かりをつけて、、 (写真提供:寄居町)
ご近所さんに電源を貸していただき、ライトアップしました~ 幻想的~! (写真提供:寄居町)
それから、コロナ禍で苦戦している地元の飲食店も、GOODPARKに参戦!
【青空のもと、お肉で乾杯 牛ときどき豚】と題してイベントを企画、
居酒屋か~むさん、
市川ホルモンさん。
青空の下でのホルモン、最高でした!
寄居町豚食文化会議の深谷ネギの肉巻き、、 これも美味かった!
そして年末は、
寄居のBEAR COFFEEさん、モトソバヤdeカフェ鐘撞堂さん、
深谷のロータスカフェさんによる、3店舗によるコーヒーイベントを開催。
3店舗の飲み比べ、
同日に僕も所属する、寄居町花植木出荷部会青年部による、
お正月用の植木鉢物の販売(ミニ門松も!)も行いました。
こちらは僕が実演した、大サイズのお正月寄せ植え盆栽。
ということで、このGOODPARKができたおかげで、様々な人が集まり、
いろんな可能性を感じ、
僕自身も楽しい思い出がたくさんできました。
年が明けて、2021年。再び緊急事態宣言が発令、
1月、2月はほぼイベントができず、、、
いよい終了期限の2月末が近づいてきました。
寄居駅前(南口)も、工事が進んでいました。
中央通り線予定地も、ほとんどの建物が取り壊されました。
GOODPARK、真冬の様子。
落葉樹が葉を落とし、常緑樹も寒さからか、傷みのある木々も見られました。
そして2月20日過ぎ、いよいよ撤去作業が始まりました。
コンテナごと吊り上げ、積み込み。
寄せ植えは1本1本ばらし、
枝をひもでしばり、
好評だった、ブランコも解体です。
撤収は1日であっという間に完了!
植栽がなくなると、今までの空間が噓のよう、
元の工事現場に戻りました。
GOOD PARKができた事によって、様々な気付きがありました。
寄居駅近隣に子供たちが遊べるスペースがなかったことや、ハイキングや行楽客の電車の待ち時間にGOODPARKが利用されたり、飲食店が数店舗集まる事でワクワクが広がる事・・・
ここでさまざまな場面が展開され、検証が行われました。
また、提案した寄せ植えの街路樹はたくさんの方に見て頂き、とても好評でした。
「この後はどうなるの?」
「全部壊しちゃうの?」
「また、こんな空間が欲しい!」
そんな声をたくさんいただく中、
GOODPARKのメンバーも定期的にミーティングを行い、現状の問題点や今後の構想を練ってきました。
今年の初め、GOODPARKのメンバーが消防署跡地の空き地に集まりました。
ここなら町有地の空き地という事で、次の候補地として使用可能だということ。
GOODPARKからも、徒歩5分ほどのところです。
新しい街路である中央通り線と交差する寄居町の市街地通りに隣接しています。
駅前通りと同様に、寄居町の商店街を横切るメイン通りもずいぶん空き店舗が増えました。
買い物は郊外のロードサイド店や大型スーパーに押され、数年後には近隣の深谷市には日本最大級のアウトレットモールも出店予定。
街の小さな商店街の意味は何なのか?
コロナ禍も収束が見えない中、この市街地で商売は成り立つのか?
第二弾のGOOD PARKは、次のステージへ向けて、新たなチャレンジをしたいと考えております。
大変恐縮ですが、そんなチャレンジに賛同される方は、是非ともクラウドファンディングへのご協力をお願いいたします!
コロナ禍で人通りのなくなった市街地に、人が笑顔で集えるまちの拠点をつくりたい! - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)
WOODSMART伊藤さんによる、イメージパース
期間は2021年4月から2022年3月末までの1年間。
以前よりも若干狭いスペースですが、飲食やイベントスペースとしても利用しやすいような工夫を凝らし、
前回よりもさらに進化した緑化スペースを創造します。
また、街路樹のモデルとなる在来樹種の寄せ植えは2か所、カウンターテーブルの植栽が2か所、メインの植栽ゾーンは、雑木林を思わせる、大きな木立群を予定しています!
今回の植栽コンテナは落ち葉や腐葉土、竹炭、稲わらなどの自然素材を使用し、土壌環境に徹底的にこだわり、循環型の息づく植栽スペースを新たに制作します!
今回のGOODPARKのメンバーです。
写真左から、WOODSMART(空間デザイン)伊藤司貴、株式会社小田屋(タウンマネージャー)上田嘉通、群峰アクシア株式会社(エクステリア商社)森田誠吾、 株式会社中央園芸(造園)押田大助、清水園芸(園芸)清水秀一、ジェイムズ株式会社(エクステリア)森田淳一。
このメンバーに行政が連携していきます。
僕たちは、自己満足や私利私欲のためにこの第二弾をやるつもりはありません。
それぞれの業界で活躍するメンバーが、今まで培ってきた技術や知識を活かし、どうすれば空き地を暫定的に利用しながら街を活性化できるのか、1年間模索していきます。
是非とも第二弾のGOODPARKに足を運んでいただき、皆さんのご意見や知恵を貸してください!
クラウドファンディングのご協力もお願いします!
そして、ここで新たな成功事例をつくり、コロナ禍の中苦戦している全国の飲食店や商店街、街づくりの問題に活路を見出す事が我々の希望です!