7年目の春 (前編) | 中央園芸のブログ

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.2017年の11月25日、宮城県気仙沼漁港。

震災後6年が経ち、僕は被災地を始めて訪れました。

 

 

2011年の3月16日に、僕の第一子が誕生したこともあり、被災地はいつも気になっていましたが、

なかなか縁がなく、今まで足を運ぶことはありませんでした。

 

そんな中、2017年の11月下旬、大地の再生講座という機会で、ようやく被災地を訪れる事になりました。

 

 

 

早朝、気仙沼を車で回りました。

海岸沿いには、津波対策として、真新しい防潮堤が次々と建設されています。

 

 

大きな防潮堤もあちこちに見られます。

被災地では復興事業として、かなり大規模に工事が行われているようです。

 

こちらは新しい高速道路、三陸沿岸道路の建設現場。

仙台から気仙沼を通り、青森の八戸まで続くといいます。

 

 

こちらは、震災で廃線となった気仙沼線。

 

 

 

気仙沼での大地の再生講座は、すでに何度か行っているようで、

今回は個人宅の環境改善工事を行いました。

 

母屋の裏、大きなビワの木が倒れました。

母屋によりかかるように倒れ、瓦や屋根の一部も破損したとのこと。

 

 

その横には、また大きなゆずの木があり、樹勢がとても弱ってきた、というお施主さん。

昔に比べ、このゆずの木はかなり衰弱したという。

なぜなのか?
樹齢の古い木だから、
肥料をあげてないから、
異常気象だから・・・
よく、そんな理由を耳にしますが、
原因は、土の中の空気と水が停滞しているから、と考えられます。
 
土の中が通気不良になると、植物にとって有害な有機ガスが発生、土壌が腐り(グライ化)、
樹木の根が衰弱し、樹勢が弱る、と推測されます。
よく観察すると、枝の上部に枯れ枝が多い。
 
樹木の根は、地上の木の姿をひっくり返したようなものだといわれます。
枝の上部に枯れ枝が多いという事は、根っこの下の方に問題がある。
おそらく土壌の表層ではなく、下層の方に原因があるのか。
やはり、土壌の下層が通気不良なのか。
 

 

付近を見ると、コンクリート目地で固めた石垣と、コンクリートのU字溝、コンクリートの土間がありました。

ここが原因だと思われます。

 

コンクリートという、空気と水を通さない性質上、今まで石垣の間から通気ができていたものを、コンクリートの目地で固める事により、空気と水を遮断し、停滞させてしまう。

U字溝や土間も、雨水を外に逃がすだけで、地面には浸透しません、地面との呼吸を妨げています。

 

ビワの木の倒木と、ゆずの木の樹勢が弱っている原因は、これらのコンクリートの構造物が原因だとほぼ断定できます。

通気不良となった土壌に、健全な樹木の成長は望めません。

 

でもこれは改善することができます。

大地の通気性、通水性を解消し、樹勢回復を図る工法が、「通気浸透水脈」の施工です。

 

 

 

 

ゆずの木の下にも、U字溝がでてきました。

おそらく、このU字溝により空気と水を遮断し、土壌の通気を悪くしています。

 

よく、土を入れ替えれば良いのでは?

と聞かれることがありますが、この環境自体を変えないことには、問題は解決しません。

というより、土を入れ替える必要はなく、環境さえ変われば、土壌は必ず再生します。

 

ということで、このU字溝の際に沿って横溝を掘り、所々に深み(点穴)を開けていきます。

 

建物の外周部分に沿って、溝を掘ります。通気不良の土壌は、とても固く、つるはしを使っての作業でした。

 

既存の浸透桝は、泥が詰まり機能していませんでしたが、これも点穴(縦穴)として利用します。

 

 

 

 

溝を掘った後は、透水管を埋設します。

 

 

 

母屋の裏山。

 

見るからに「暴れている」状態で、竹や笹が繫茂しています。
水脈が滞ると、樹木は衰弱していきますが、下草や竹は逆に暴れ、勢いを増し、藪(やぶ)化します。
でも、意味もなく竹や下草が伸びている訳ではありません。

通気不良で固くなってしまった土壌に、必死に根を伸ばし、通気を解消しようとしている植物の姿。
それがこのような藪化した状態。
「通気不良を解消してくれ~」
と、植物たちがサインを送ってくれています。

 

そんな周囲の裏山の竹林からも竹や篠竹を切り、透水管に組み込んでいきます。

 
 

その後は、半分くらい土を戻し、通気浸透水脈の完成となります。

じめじめしていた空間でしたが、地面に空気が通ると、空気感が変わります。

そこを歩いているだけで、心地良さを体感できます。

 

 

 

 

午後からは、風の草刈りをするということで、海岸の方へ移動しました。

 

 

時間は1時間ほど、限られた時間の中で、この地域の草を刈ります。

普通にやっていたら膨大な時間がかかりますが、このようなフィールドでは、どのように草を刈るのか?

 

 

 

例えば、このような草地。

 

まずは、ここに風を通していきます。

よく見ると、草の生え方が薄い部分があります。そこを見極めて、草を刈り、風を通します。

 

 

いわゆる、獣道(けものみち)をつくるイメージ。

草の少ない部分を刈っていくと、自然と道は蛇行していきます。

 

風を通すラインは直線ではなく、必ず蛇行させることが、自然の摂理。

なぜなら、風や水の動きは直線的ではなく、渦を巻いているから。

そして、蛇行させることで、風の勢いを加速させることなく、弱めてくれます。

 

 

 

周囲の草は、風で揺れるポイントで、草の頭をナイロンコードで刈る。いわゆる、なで刈り。

刈った草は、もちろんこのまま。

これで良い。

 

山林や広大な敷地での短時間での草刈りは、風を通す部分だけ刈り進む。

草地の地表面に風が通ることで、

地面の中の空気も連動して動き、大地の中の呼吸が始まり、再生されていく。

これを繰り返す事で、草の成長は不思議と安定していきます。

 

これが「風の草刈り」です。

 

そんな要領で、広い草原での草刈り、短時間での作業をこなしました。

 

 

 

草刈りも、だんだん海辺に近づいていきます。

元々は風光明媚なところだったのでしょうが、海岸沿いの木々が枯れていました。

赤松でしょうか。

 

 

 

僕も草刈りに夢中になっていましたが、ここは気仙沼、前浜地区。

津波の被害も大きかったところ。

 
この草地も、以前は家が建ち並んでいた場所だ、という事を後で聞きました・・・。
                                               後編に続く