#MeToo運動を題材に、一人の新入社員の視点を通して実態を冷ややかに描きます。
『アシスタント』(2019年 / アメリカ映画)
監督・脚本:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー、マシュー・マクファデン、マッケンジー・リー
名門大学を卒業したジュリア・ガーナーお姉さん、映画プロデューサーになる夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名なエンターテイメント会社に就職しました。
業界の大物である会長の下で "ジュニア・アシスタント" として働き始めますが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。
誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る.... 早朝から深夜まで単調な事務作業とコピー取り、コップ洗いの雑用に追われ、わずかな合間を見つけてキッチンコーナーの隅っこでシリアルで食事をする毎日。
そして常態化しているハラスメント。
「君のポジションの求人広告を出せば1日に100人の応募が来る」
自分はいつでも換えの利く雑用係でしかないという事、それでも将来大きなチャンスを掴む為には会社にしがみついてキャリアを積むしかない事もわかっているジュリアでしたが、ある日、会長の許されない行為を知ってしまい、立ち上がる決意をします....
本来のアメリカ映画なら、ここでヒロインが怒涛の反撃!に転じるはずなのに、ジュリアは戦うヒロインにはなれず、救いがないのです、コレ。
フランス映画かと思うほどに。
ジュリア・ガーナーが演じる Jane Doe(ジェーン・ドゥ)という役名は「匿名」という意味です。
彼女は劇中で一度も名前を呼ばれる事がありません。
セリフも極端に少なく、他の社員とのマトモな人間らしい会話もない...
理不尽なんですが、この理不尽に沈黙するのはすなわち、自分も意識せず加害者側に立っているという事になります。
こういう環境の職場はおそらくあちこちにあると思います。
あった... と過去形ではなくて今もある。
そこには、#MeTooなんてどこの星の話?のような目に遭いながら働いている人がいます。
そして、
それを逆手に取って這い上がる逞しい人もいる。
そうすれば這い上がれてしまうから、やはりなくならない。