1対2個別指導、中学受験には不向き | 中学受験講師ブンブンのブログ

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中学受験の塾講師とプロ家庭教師をしています。指導のあり方、入試情勢、教えて思うことなどについて、書いていきます。

1対2個別指導をする個別塾があります。

先生1人が生徒2人を、別々に教える指導です。

この「1対2個別指導」は、公立中学の補習には効果的ですが、中学受験には全く適しません。

中学受験指導には、1対1の指導が求められます。

今回は、1対2は中学受験には適さないという話です。

 

【1】公立中学の生徒には適している

公立中学に通う中学生には、1対2の指導は適しています。

小学5年6年の非受験の補習にも、適しています。

適している条件2つを満たしているからです。

その条件とは、

(1)学校の授業を聞いて、一応理解している。

(2)内容に沿った問題集が豊富にある。

学校で聞いた授業内容を一応は納得している生徒が大半です。

でも、一回聞いただけでは定着しませんし、ミスをしますので、練習が必要です。

公立中の定期テストでは、さほど難しい問題は出ませんので、普段の勉強は「いかにミスを減らすか」が中心になります。

ですから、成績中位生にとって、普段の勉強は、10問中6問解けて4問ミスの状態から、練習を繰り返して10問中9問正解を狙うスタイルが合理的です。

この場合は、1対2が最適と言えます。

多くの内容は頭に入っている状態ですから、最初の説明はほとんど必要ありません。

中2の連立方程式なら、文章題はともかく、計算は大多数の生徒が解けるのです。

どんどん問題を解かせて、分からない点、間違えた問題だけを教えれば良いのです。

公立中の教科書に沿った準拠教材は、英語なら出てくる単語も文法もピタリ合ったものが売られています。

1対1だと指導料が1.5倍くらいになりますので、1対2で十分だと思います。

 

【2】中学受験では1対2は無理

ところが、中学受験になると、1対2の指導は、かなり無理が出てきます。

(1)理解できていない生徒が大多数

中学受験でも、塾で習った後に個別塾で練習するスタイルが多いと思います。

ただし、理解できていない生徒が多数派になります。

多くの中学受験塾では、難関校を狙う人にも対応できるカリキュラムになっています。

ですから、塾の授業もかなり早い進度ですし、難しい問題も扱います。

多くの人にとって、理解できていない部分があり、消化不良になっているのが現状です。

ですから、抜けている部分を説明する必要があるのですが、1対2では説明する時間が足りなくなります。

(2)進度に合った繰り返し教材が少ない

全国で私立・国立の中学に通う生徒は8.3%程度です。

受験したけど結果的に公立中に通う生徒を含めても10%以下でしょう。

買う人が少ないため、中学受験用の問題集を作っている出版社は、かなり少ないのです。

更に、非受験用の算数の問題集なら、おうぎ形の面積の問題だけで10問並んでいて、繰り返し練習しやすかったりします。

でも、中学受験用だと単純に面積を出すパターンは4問程度で少なく、おうぎ形の面積から中心角を求める逆算など、様々なパターンが混ざります。

「つるかめ算」でも、単純なパターンが10問続く問題集はほとんどありません。単純なパターン5問解いたら、「弁償つるかめ」「割合つるかめ」に進む構成になっています。

こうなると、解く問題が少ないうえに、現在の力では解けないからカットする指示が必要になり、収拾つかなくなります。

 

【3】プロの1対1指導

1対1なら生徒が問題を解いている間は、先生はヒマにしている・・・と思う人もいるかもしれません。

でも、全く違います。

私が家庭教師として、入試前の12月頃に6年生を教える場合、1対1指導でも余分な時間はほとんどありません。

成績上位生なら、「とにかく過去問を大量に解け。過去問と塾で解いた問題で、分からない問題に付箋をつけておこう。」と指示します。2年前に早稲アカから東邦大東邦に入った生徒では、付箋がついた問題の解説だけで、毎回2時間超えました。

偏差値45から50超えを目指す生徒なら、分からない問題の説明は1時間かかりませんが、ミスした問題の類題をその場で手書きで作りますので、これに手間がかかるのです。手書き問題を解く時間に、次の問題を作るのです。

以上は私の例ですが、他のプロ家庭教師の先生も、ボーッと解くのを見ているのでなく、時間を有効に使うために様々なことをしていると思います。

 

【4】1対2で教えたとき

実は私も個別指導塾で、中学受験生に「1対2」の個別指導をしたことが何度かあります。

黒板の前で立って授業するより、圧倒的に疲れました。(時給は安いので割が合わないんです)

 

個別指導でも、授業で一通り「流水算」を説明した後に、「あと40分、流水算の問題を解きまくれ!」と配った問題を解かせるなら、1対8でも無理なく教えられます。

この条件だと「生徒は一通り説明を受けた」「解かせる問題は先生が予習済み」「先生が選んだ問題だから難問奇問は無し」となりますから、先生は問題読まなくてもパッと教えられます。生徒もそこそこ理解しているので、少し教えただけで納得できます。

 

ところが、個別塾の1対2で、それも理科中心に教えることになりました。(理科社会は説明が長くキツイ)

2時間のうち15分くらい生徒が私を待つ状態になりました。

とはいえ、できる対策は取ったのですよ。

宿題解説に時間を取るため、1人に「毎回分野を決めて暗記小テスト」「計算練習10問」をさせている間に、もう1人に宿題解説をしました。入試が近くなると解説が長くなるので、解答を渡して自分で丸付け(念のため私が再チェックしますが)しました。

易しい1行問題や計算問題に粘ってもらうために、見直ししてもらうことにしました。単に「見直ししなさい」と言っても見直ししたがりませんので、ざっと目を通して「10問中、3問ミス!ミスに気づいたら言ってくれ」と時間稼ぎしたものです。

本来は条件を変えて類題を作って解かせたいのですが、そんな余裕は全くありませんでした。

毎回疲れ果てたため、帰りの電車では、10分しか乗らないのに睡魔に襲われたものです。

 

このような理由で、1対2指導は、中学受験には適さないと考えます。