主に算数を1対1で教える中学受験のプロ家庭教師にとって、最も必要な能力は、「分かりやすい説明ができること」ではないと私は考えます。
偏差値40前後だと「指導内容を絞り込む」ことが重要、
偏差値45前後だと「適切な類題を作る」ことが重要、と書いてきました。
今回は偏差値60の生徒が、算数・理科・社会を習う場合です。
偏差値60の中学受験生にプロ家庭教師が教える場合、
「難問を即答する」のが最も重要だと考えます。
成績上位の生徒が質問してくるのは、当然難問になります。
難しい複雑な問題を質問してくるわけですから、一瞬のうちに答をだすのは容易ではありません。
線分図を書いて、図にまとめます。
最後の答は、長い計算をした後に出ます。
でも質問された時に、「ここに補助線を引くと考えやすい」「これは実は《つるかめ算》で解ける」と、解き方をパッと示せるかが大切です。
さらに「これは5年ほど前の麻布の問題だな」などと伝えられれば、尊敬されます。
難問を質問して、先生が3分以上考えて見通しが立たなければ、生徒はイライラしてきます。
時間を有効に活用するためにも、長時間待たせてはいけません。
(プロ家庭教師は時給が高いので、10分待たせたら結構な金額になります)
更に別の理由もあります。
「難問を即答するのが大切」なのは、「家庭教師が塾の先生より格下扱いされないため」でもあります。
偏差値60の中学受験生は、塾でも指導経験が豊富な力がある先生から授業を受けています。
普段から実力ある塾の先生から習っていますので、並の家庭教師だと格下に見られてしまいます。
塾の先生は、立場上「難問でもあきらめるな!」と言ったりしますが、問題を解くのが遅い生徒は「いかに難問を捨てるか」が重要なことがあります。
こんな時に、個々の生徒の置かれている状況をより考えているプロ家庭教師は、こう思います。
『塾の先生の指示より、生徒の状況に合わせた私(家庭教師)の指示が、より適切だ』
ところが、塾の先生と家庭教師の指示が矛盾すると、生徒は塾の先生がより指導力があると信じていることが多く、なかなか家庭教師の言うことを信用してくれません。
こんな場合は、家庭教師の実力が塾の先生以上でスゴイ!と、感じてもらうしかありません。
家庭教師の肩書が「東大卒」とか「指導歴20年」というだけでは、説得力は初めの数回だけです。
やはり、難問をサッと見ただけで、解き方の解説を始められるのが、実力があって塾の先生以上だと実感してもらうことにつながります。
「偏差値60以上は難問を即答する力が重要」と書きましたが、大手塾で算数を10年教えていれば、適任の先生が多いと思います。
もともと学力がある先生が、塾で1つの教科を10年バリバリ教えていれば、よほど変な問題でない限り、パッと見ただけで解き方の方針が浮かぶものです。
ですから、大手塾でバリバリ教える先生が、プロ家庭教師になった場合、成績上位の生徒は、今までの指導スタイルでも満足度が高い指導ができると思います。
特に、麻布・渋谷幕張などの出題傾向に特徴がある難関校は、塾で教えた生徒がのべ10人以上受験していれば、「偏差値は届いてないけど、手ごたえは良いから麻布に届く可能性は十分ある」などとアドバイスできて心強いでしょう。
ですから、偏差値60以上で難関校を狙う御家庭が家庭教師を選ぶ際は、プロ家庭教師が適しています。
時給が高いので、週1回2時間だけでも問題ないと思います。
ですが、逆に偏差値が低い生徒を教える場合は、要注意です。
塾の指導スタイルと、成績低迷している生徒への対処は、大きく違います。
「必要な類題を作る」「解く問題を厳選する」といった必要なことがありますが、塾と同じような指導しかしない柔軟性のない先生もいます。
偏差値がまだまだ低い生徒を教える際は、先生が塾と同じような指導スタイルでしたら、「ミスした問題の類題を作ってください」「今は扱わなくてよい難問を指示してください」などとお願いするのが良いと思います。